第1章 第4話 魔物との遭遇、そして出会い
時間は、アレンが森を出たところまで遡る。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯やっと村が見えた⋯⋯。くそ、こんなに疲れるのならこの依頼受けないで他の雑用の依頼受けた方が良かったじゃねぇか⋯⋯⋯⋯」
アレンは、とても消耗仕切った様子でそう吐き捨てた。それもそのはず、最近ろくに食事もせず、猫を捕まえるために、5時間以上も歩き回ったのだから。
「さっさと家に帰って飯食って寝よ⋯⋯」
そうしてアレンが村に歩き始めた時、つい先程抜け出した久遠の森からガサガサと音がした。
振り返ってみると、生い茂っている草をかき分けながらある生物3匹が出てきた。魔物、ゴブリンだ。
「⋯⋯⋯⋯なぁ、俺疲れてるんだわ。だから、見逃してくれませんかね?」
アレンがそう言うも、聞いてくれるはずがなく、言葉が通じたかどうかも怪しい。
3匹のゴブリンは「グルァ!」と叫びながらアレンに襲いかかってきた。
「ったく、疲れてるって⋯⋯⋯⋯言ってんだろが!」
アレンは襲いかかってきたゴブリンの1匹をめがけ手をかざし、
「《燃えよ炎・焼き尽くせ》!」
そう呪文を唱えた。
すると、ゴブリンの体が突然燃え上がり、「グギャァーッ!」とゴブリンが悲鳴をあげたと思うと、そこにはゴブリンの焼死体が出来上がっていた。
「まだまだ!《風塵乱舞》!」
そして、2匹目のゴブリンを風で切り刻み、ゴブリンは残り1匹となった。
いきなり仲間を2人もやられたゴブリンは、少し襲いかかるのを躊躇し、
「その躊躇が命取りだぜ。《闇よ・呑み込め》ッ!」
その隙に放ったアレンの魔術が、ゴブリンを深い闇に⋯⋯⋯⋯!
呑みこまなかった。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
アレンとゴブリンの間に沈黙が走る。
「⋯⋯あぁ!空腹と疲労で魔術が発動できなかった〜!しょうがねぇな〜ゴブリン、お前だけは見逃してやる!だからさっさと森に帰ってください!」
アレンが土下座をしてゴブリンに謝る。
そして、気のせいかゴブリンが笑った気がした。
ゴブリンが少しずつ近づいてくる。
「⋯⋯⋯⋯あのぉ?か、帰らないんですか?」
そして、今度こそゴブリンは笑った。
「グラアアアアッ!」
「ぎゃあああああああああああっ!」
そうしてアレンはゴブリンに追いかけられ、猫の首輪を手でつかみながら村へと逃げ込んだ。
いきなり魔物を連れた男が村へと入ってくれば、村は当然パニックになる。
村の人達は悲鳴をあげながら逃げ惑う。
中には、「なんであいつゴブリンを引き連れたまま村に入ってきたんだ!」と怒りながら逃げている人もいた。
「すいません!すいません!謝りますから誰か助けてー!」
と、叫びながらゴブリンから逃げていると、
「⋯⋯の⋯⋯、⋯⋯けて!」
前からアレンに向かって誰か叫んだ。
よく聞こえなかったが、何やら女の子がこちらに手をかざしている。そして、その手がいきなり光だし⋯⋯、
「え、ちょっと待ってそれ──ッ!」
「《雷電よ・貫け》ッ!」
アレンはとっさに体を横に倒す。すると、先程までアレンが走っていた所に一筋の光が走る。
そして、アレンは体を横に倒した勢いで地面を滑った。
顔をあげ後ろを振り返ってみると、後ろを追いかけてきていたゴブリンの体に大きな穴があいており、絶命していた。
「あの、大丈夫ですか?」
声がすぐ近くで聞こえそちらを向くと、そこには先程雷魔術を使った女の子、シャルテが屈んで心配そうにしている。
俺は口をパクパクさせ、
「⋯⋯あの、大丈夫です「大丈夫な訳ねぇだろぉがーッ!?」か⋯⋯?」
助けてくれたシャルテに向かって怒鳴り散らした。
「お前ふざけてんのか!もう少しで俺もゴブリンみたいになるところだったわ!俺がとっさに体倒したから良かったものの、あとちょっとでも倒すの遅れたら死んでたぞ!?せめて、魔術打つ前に言えよ!」
「なっ──ッ!助けてあげたのになんでそんなに怒鳴られなきゃいけないのよ!だいたい、魔術打つ前にちゃんと言ったわよ!そこの人、避けてって!大声でね!」
「バカかてめぇ!?聞こえなきゃ意味ねぇーんだよ!?それに、助けてあげたって、お前のせいで死にかけたんだけど!」
「あのまま魔術打たなかってもいずれゴブリンに追いつかれて殺されてたでしょ!そもそも、あなたが村にゴブリンなんか入れなかったらこんな事には──」
どさっ
「⋯⋯え?」
いきなり、アレンが倒れた。シャルテはいきなりの事すぎて現状を理解できないでいた。
その場で、1番早く状況を理解したのはテルルだった。
「シャルテ、多分さっきの雷魔術が少しだけ当たったんだよ!急いで治療しないと!」
「⋯⋯あ、そ、そうよ!早く治癒魔術を──」
そうして慌てて治療魔術を施す2人だが、アレンは倒れる寸前──
(⋯⋯やべ、空腹と疲労が溜まってたのに魔術使ってめっちゃ走ったから体に限界がきちまった⋯⋯。目覚めたら目の前に飯でも置いてあったらいいのに⋯⋯)
と、思っていたのだった。
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