第38話:女神と会話
「ああ、楽しかったぁ~。ゴロゴロころがるのも楽しいものですね、ショーコさん」
「ふむ、女神殿。我も初めて気がついたが、手足が不自由で動けないのも、なかなか趣があるな。這いつくばる自分の姿も、なんとも言えぬ憐憫が感じられよい」
「いい趣味していますね……」
「さて。俺たちはこれからあっちの世界に行くわけだけど、リアンさんは本当に俺たちとくるのか?」
「『リアン』でいいですわ。はい。お供させてください。私は虎次郎の転生として魔獣王を斃す役目がありますし。ね、虎次郎?」
「おおよ! こちとら筋だけはキッチリ通すつもりじゃ!」
「……ただ、私はその前に、やはりナイティヤ様の話をもう一度、聞いて置くべきだと思うのです」
「それは同感だな。まずは、彼女に会いに行こう。でも、セレクトカーソルの件はどうする?」
「そちらもお願いしたいのです。姉を死に追いやった魔獣使いを斃すために!」
「えっ……お姉さんを?」
「地べたを這いつくばっていると、自分が生きている価値もない蛆虫のように感じたぞ。これは得難い経験だ」
「蛆虫って……ショーコさん……」
「ああ、我のことはショーコで構わぬ」
「では、わたくしのことはルビスで。一緒に冒険する仲間ですからね」
「了解した、ルビス。それはともかく、我は縄抜けの練習も兼ねていたが、あの光の拘束は逃げられるものではないな」
「ああ、きつかったですね。まあ、女神パワーを使って本気を出せば逃げられましたけどね!」
「女神パワー!? なんとカッコイイ!」
「お姉さんは、魔獣使いにやられたのか?」
「たぶん……。私を逃がすために姉が囮になってくれたのですが、私はその後に追いつめられて次元の狭間に……あの状況で助かることは……」
「そうか……辛いことを聞いてごめん」
「い……いいえ……。そ、そういうわけで、私は仇を取りたいのですが、力不足を身に染みて感じております。ですから、図々しいお願いだと思いますが、協力していただけませんでしょうか? 仇討ちをさせてくださいませ! その代わり、その他のことはあなたの指示に従いますわ」
「そこまで……。よし、わかった。協力しよう!」
「あ、ありがとうございます!」
「そのなんともかっこよさそうな、女神パワーとはどんなものなのだ!?」
「女神パワーを使えば、なんと!」
「なんと!?」
「ここから、かつ丼を注文できます!」
「――すごい!」
「あの糠漬けも女神パワーです!」
「おお! まさに神業! では、あの梅酒も?」
「女神パワーです。女神パワーがあれば、宝くじも当たりますし、モテモテにもなれますし、長生きもできます」
「オーマイゴッドネス!」
「じゃあ、僕はそろそろ帰ることにするよ」
「リュウ様。ここまで送っていただきありがとうございました」
「いや、大したことじゃないよ。リアンさん、貴方の願いがかなうことを祈っているからね」
「はい……」
「リュウさん、俺からもお礼を。いろいろと巻き込んでしまいすいません。お世話になりました」
「乗りかかった船さ。……あ、そうだ。これを君にあげておくよ」
「このカードは? ……ん? VIPサービス券?」
「僕が行ける場所なら、異世界で1杯だけかつ丼を注文できる呼び符だ。もし、どうしてもお腹が空いたら呼ぶといい」
「えっ!? こ、これ……高いものなんじゃ……」
「なんていうか、これも縁だと感じているんだ。……僕がまだ半人前のままで魔王と戦った時、なかなか勝てなくてね。多くの人に助けてもらった。時には別の異世界魔王に電話で相談に乗ってもらったりしてね」
「電話相談に応じてくれる魔王がいるんですか……」
「あはは。まあね。だから、お互い様で今度は僕が異世界の英雄になる君を助けよう。と言っても、大した手助けはルール上できないけど、このぐらいなら許されるだろう」
「リュウさん……本当にありがとうございます!」
「そう言えば、少し腹が減ったのぉ」
「ああ、わたくしも減ってませんが減りましたね。そうだ。白菜の漬け物でも食べます?」
「ご飯が欲しくなるのぉ。女神パワーでなんとかならぬのか?」
「もう、ショーコたんは仕方ないなぁ。よーし、お姉ちゃん、またかつ丼頼んじゃうぞ!」
「おお! でも、女神パワーを使わずとも、出前のリュウ殿はそこにいるではないか」
「あ、そうでしたね。なら――」
「――リュウさん、かつ丼追加で!」
「「「――いい加減にしろ!!」」」
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