第29話:女神と呼び名

「えーっと、それで捨て石屋様」


「ちょっ! ダーリンまでやめてくださいよ!」


「ああ、ただの嫌がらせ」


「ひどっ!」


 女神の頬が面白いように膨らむ。

 ああ、からかうのが面白いなコイツと思いながら、本題を口にする。


「ステイシヤという名前は、ぶっちゃけヤバくないのか?」


 俺は異世界で行われているという、魔獣使いたちによる「勇者狩り」の件を思いだした。

 女神とバレたらまずいので目や髪の色を変えるのだから、名前も変更するべきだろう。


「ああ、そうですよね。……なら、ダーリン。わたくしにかわいい名前をつけてくださいよ」


「かわいい名前? 仮りの名前ということか?」


 女神がコクコクと細かく嬉しそうにうなずく。

 見れば、その紅玉のような瞳が期待でキラキラとしている。


 ここは一発、期待に応えてすばらしい名前をつけてやらなければならない。


「ふむ。女神の特徴というと、そのきれいな赤い目……」


「き、きれいだなんて、そんな♥」


「赤い目……あかいめ…………そうだ! 『あかなめ』とかどうだ!?」


「それ、妖怪!」


「赤マント」


「また妖怪!?」


「赤鬼」


「妖怪のせいなのね、そうなのね!?」


「赤だし」


「味噌!?」


「白だし」


「それも味噌! ってかすでに赤でもないし!」


「マ○コメ」


「それメーカー名! ってか味噌から離れて!」


「ちっ。文句が多い奴め」


「味噌攻めしておいて舌打ち!?」


「なら、銀髪だから……シルバー……シルバーシート」


「なんで、そこで余計なものつけるの!?」


「シート」


「とっちゃいけない方とった!」


「なら、シルバーを短くして……『しる』」


「発音が『汁』!?」


「短すぎるので、味噌汁」


「長くするならシルバーのままでいいし! ってか、なんで味噌に戻ってんの!?」


「なら、赤い目がルビーみたいだから……」


「ああ、それいいですね! そのラインで!」


「るびお」


「ださっ! ってか、なんで男名!?」


「るびすけ」


「だから男名!」


「るびこ」


「捻らなさすぎ!」


「ルビー……捻る……ルービー……ルービックキューブ!」


「確かに捻れるけど!」


「じゃあ、キューブ」


「また、とっちゃいけない方とった!」


「ああ、もう面倒だな。ルビーとステイシヤの頭をとって、ルビスでいいか」


「最初からそれにしてよ!」


 すんなりと女神の呼び名が決まった。

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