第7話_ありがとう。_

 今日は、一月一日、元日だ。

 去年は、色んなことがあった、振り返っている間に涙が出そうになることが多かったが、何とか堪えた。

 そうして、一年が終わり新たな年を迎えたわけだが、今年の春から中学三年になる、つまり受験生だ。

 本当にいろんなことがあって、大変な一年ではあったが、案外悪くない一年だった。

 何より、裕奈の家族に出会えたことが、。まぁ、出会いこそあれだったが…。

 本当に河野一家の、”家族”になれたことに、感謝してもしきれない。

 血がつながっていなくても、自分のことを心から心配して、怒ってくれる、褒めてくれる。それだけで十分だと、僕は思う。

「裕奈…ありがとうな。」

 冬休みが終わり、学校へ向かう道の途中で、ふと冬貴が呟いた。

「え?」

 裕奈には届いては居なかったが、冬貴は、満足そうに、笑顔で、

「何でもない」

 と言った。

「も~何よー」

と少し頬を膨らませて冬貴に詰め寄るが、冬貴は、笑顔のままで何も言わなかった。

 季節は、もうすぐ春に入る。温かい日差しが差し込み始め、桜のつぼみも膨らみ始めた。そんな暖かな季節。

 昨年まで、特別クラスで授業を受けていた、裕奈だが、三年に上がるとともに、教室で授業を受けることになった。

 クラスは同じで席も隣だった。

「また隣だねー。」

 席に着きながら、裕奈が話しかけてくる。

「そうだなー。」

 と適当に返しながら、鞄から小説を取り出す。

「あ、その小説私も持ってるんだよ!」

 と、初めて会った日にも言われたれたことと同じことを言われ、

「知ってるよ。」

 と少し、笑いながら、裕奈の方を向いた。

「何で知ってるの?」

「そりゃ、僕が記憶喪失前の君にも言われたからな。」

「マジすか…私って、全然変わんないんだね…。」

 と少し、しゅんとしているそんなに悪いことでもないとは思うがこいつの思考回路は僕と違いすぎるのでこういう時何を考えているのかいまいちわからん。

「まっ!いいか、私は私だしね!」

 ポジティブな奴だ。まぁ、こいつがポジティブなおかげで、僕は今ここに居るわけで…本当に、裕奈には救われてばかりな気がする。

 本当に、家族ってのはとても大切で、とても愛おしく感じる。そんな家族へと僕を引き入れてくれた裕奈には、感謝してもしきれない。

「本当にありがとうな。裕奈。」

 隣の席に座る裕奈に微笑を浮かべ言う。

「…???うん!!」

 裕奈はこちらを向き、満面の笑顔で答えた。

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家族って。 尾道 洋 @hannaritouhu

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