第6話 _冬_


十二月下旬。学校は、とっくに冬休みに入っている。中学二年の冬休み。冬貴は、元々外では遊ばない人間なのに、半年ほど家から出ていないため、肌の色が異常なほど白い。

 そんな、冬貴を見兼ねた裕奈が、外に遊びに行こうと誘うが、なかなか外に出ようとはしない。

「ねぇ、外行こうよ!」

「ヤダ。」

 この会話は、朝の七時から続いて、現在午後一時まで続いている。ずっとこの繰り返しである。

すると裕奈の母裕子が、

「じゃぁ、二人で買い物に行って来て。メモは、もう袋の中に居れているから、二人で行って来てね。よろしく!」

 そう言って、裕奈と冬貴に、エコバックを手渡し、キッチンに戻っていってしまった。

「「………。」」

 二人は、唖然と固まっていたが、次第に状況を理解して、頼まれたのなら仕方ないと、二人で顔を見合わせて動き出した。

 外は寒く、雪が降りそうな分厚い雲が空を覆い少し薄暗い。そんな寒い中スーパーへの行き道を二人して、無言で歩く。

 冬貴は、寒がりでヒートテックの上に、Yシャツにセーター、その上に、分厚いコートを羽織りマフラーに手袋と重装備だ。

 一方裕奈は、比較的薄着でTシャツの上にジャンパーを着てマフラーを巻いているだけだ。

「お前、よくそんな恰好で外出れるな…」

「逆に、冬貴は着込みすぎでしょ!?熱くないの!?」

「別に…。」

 冬貴は、どっちもどっちか…。なんて考えながら歩いているとスーパーが見えてきた。

・・・

 中に入ると、外とは違い暖房が効いていてとても暖かい。

「あったけぇ・・・」

 思わず冬貴の口から声が漏れる。

 裕奈が、エコバックの中から、小さなメモを取り出す。そこには、

メモ

・豆腐

・白菜

・春菊

と書かれていた。

「これ、お鍋だね。」

「うん。…てか、」

二人で、「「自分で買えよ!」」と突っ込んだ。

「でも、お鍋なのにどうしてこんな、メインを忘れるかな…」

 裕奈は、溜息を吐きながら、呟いた。

「ドジだな。お前と一緒だな。」

・・・

「よし、ちゃんと買ったね…!帰ろうか。」

「そうだな。」

 買い物袋は、ちゃっかり、冬貴が持っている。スーパーから出ると、

「あ、」

 ふと裕奈が、上を見上げ声を発した。その声に反応した冬貴が、裕奈を見やる。

「どうした。」

「雪だー!!」

 冬貴が上を見上げる。すると冬貴の鼻先に、白く冷たいものが…

「つめたっ!!」

 顔を高速で横に振る。

 冬貴は、今年も寒い冬になりそうだなんて思いながら、帰り路を歩いた___。

***

 二人が家に帰る時間には、外は暗くなり始めていた。

「「ただいまー」」

 リビングに入ると、暖房が効いていて暖かい、冬貴は上に着ていた分厚いコートを脱ぎ、買い物袋を裕子に手渡す。

 食卓には、すでにお鍋の用意がされていた。昆布で出汁をとっているようで、土鍋の中にはお湯と昆布が入っていた。

 暫くすると出汁が出てきたのか、昆布のいい香りが部屋を満たした。

 裕子がキッチンから、食材を大皿に盛って持ってきた。

「さぁ!食べようか!」

 そう言い、土鍋の中に食材を入れていく。

そして、三人が食卓に着き手を合わせ、

「「「いただきます。」」」


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