第4話 _思い_
どうして、父さんは来てくれないの…どうして、どうして…。
お願いだよ、誰か…僕を……助けて…。
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僕は気づけば、家に居た、さっきまで何をしていたのかいまいち覚えていない。今日は、何をしていたのだろう…病院に行って……そこから、覚えていない…。何のために、病院に行ったのかも…。
家には、いつもの様に母さんが居て、キッチンでご飯を作っている光景がそこにはあった。
「母さん、今日病院に行った?」
そう聞くと、母は少し目を見開き驚いたような反応をした。僕には、母が何故そんな反応をするのか分からなかった。どうしてそんな悲しそうな顔をするのかも。
「母さん…?」
そう声を掛けると、母は、徐々に、嗚咽を漏らし、涙を溢し始めた。どうしたら良いのか分からなくて、僕はただただ泣いている母を見つめた。
「…ごめん、僕今日は、ご飯いらないや…。」
僕はそう言って、リビングから、自分の部屋へ戻った。
「何かいけないことを言ったかな…?」
僕は、まだ早いけれど寝ることにした。そう思い、布団に寝転がると、すぐに眠気が来たので、その眠気に逆らうことなく、瞼を閉じた_。
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翌朝は、いつもより、早くに目が覚めた。母はまだ寝ているようで、僕は特にすることもなく、どうしたものかと考えていたが荷物を持って家を出た。行先は、あの公園だ。
いつの季節でも、朝方は少し寒く家を出て、ほんの少し身震いをした。そしてすぐに足を公園に向けて、歩き出した_。
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学校に行くにはまだ早い時間なので、しばらく時間を潰すために公園の中のドーム型の遊具の中で暖をとるが、一向に暖かくなる気配はない。
最終的に、どうしようもないので、カバンから、ボロボロの小説を取り出した。
ふと、僕は、その小説を見つめ、どうしてこの小説を、こんなに大切にしているのか、”分からなくなった”。しばらく、その小説を眺めていた。
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気づけば、学校に行く時間を過ぎていた。完璧に遅刻だ。どうしよう…。
…もういいかな……。
学校休んでしまおう、そう思い再び小説に目を落とし読み始めた。
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______日暮れの公園から、誰かのすすり泣く声が響いている。
その声は、ドーム型の遊具から響いていた_______。
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遊具の中では、冬貴が小説を手に、声を殺して泣いていた。ただ、ただ、悲しかったのだ、何がと問われれば、それは…少しでも、現実を受け入れられず、その現実から目を背けていた自分が居たことに対してだった。
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日が暮れ、しばらくしたころに、冬貴は意を決したように小説をカバンに直し立ち上がった。そして、ある場所へと歩き出した。
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しばらく歩いて辿り着いた場所は、”病院”だった。そして、とある病室の前で立ち止まり、一度大きな深呼吸をして、取っ手にかけた手は、少し震えているが、しっかりと、その取っ手握り、横へとスライドさせ扉を開けた。
その先には、一人の少女がベッドに腰かけて、小説を読んでいた。すると、冬貴に気付きこちらを向いた。
「誰?」
やはりその少女は、冬貴のことは、覚えていないようだった。
冬貴は少し寂しそうな顔をしたが、しっかりと、その少女の瞳を見つめ、自己紹介を始めた。
「初めまして…えっと僕は君のクラスメイトの、桐陽冬貴です。これから、よろしくね。」
敢えて、友達ということは、伏せた__。
「うん、よろしくね!私の名前は、河野裕奈!」
初めて彼女の名前を聞いた。
「君は、私の友達なのかな?」
「え…なんで…?」
不意に彼女の質問に、驚きを隠せなかった。
「実わね、私の同級生って誰も来てなかったんだ…来たのは、先生か君くらいだし…私ね、知ってるんだよ、君、私が事故にあった日に、急いで駆け付けてくれたこと…。ありがとうね。」
そう言って、裕奈は、笑った。
「僕は……僕は…友達と呼ばれる様な人間じゃないよ…そんな資格なんてない…」
気づけば、冬貴は瞳から大粒の涙を流していた。すると、裕奈は…
「友達に資格なんていらないよ!…うーん…なんて言えばいいのかなぁ……」
あーでもないこーでもないと、裕奈は腕を組んで悩みだした。そんな君を見て
「…!君らしいね、そういうバカっぽいところ……でも、ありがとうね。」
俺がそういうと、裕奈は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに笑顔へと変わり、「どういたしまして!」と言った。そして、お互いの顔を見て、二人で笑い出した。
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すると、病室の扉が開き、そこから、看護師さんが、もう少し静かにするようにと、注意された、それに、二人して「はーーい」と返事をして、看護師さんを呆れさせた。それがまた面白くて、二人でまた声を抑えながら笑った。
笑いが収まり始めた頃に、面会時間の終了時間が近づいて来ていたので、「また来るよ。」と言って冬貴は部屋を出た。
そして、冬貴はまっすぐ家へと帰った。そして、いつもの様に、母と美味しいご飯を食べ自分の部屋へと戻っていった。
珍しくご機嫌な冬貴を見た母は、何事かとずっと考えていた。
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翌朝、いつもどうりの朝を迎え、元の生活が戻ってきた。やはり、裕奈の存在は大きい。学校に行っても、笑顔な冬貴を見たクラスメイトは、恐ろしくなりいつもより彼から距離をとっていた。
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放課後。
終わりのチャイムが鳴った瞬間に、急いで、学校から出て、病院へと向かった。そして、息を整え、病室の扉を開いた。
「お、来たね!」
「お、おう。」
冬貴の顔は、ほんのり赤い。これは、走ってきたからなのか、それとも…?
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