第3話 _堕ちる_


 翌朝。いつも道理に、学校に行ったのだが、何故か校門の前にあいつが居た。そして何かぶつぶつ呟いている…なんか、怖い。

 まぁいいかと、前を通り抜けようとそのまま進んでいくと、俺の存在に気づいて、走ってこっちに来た。後ろに誰か居るのかと、後ろを振り向くが誰も居ない。何か叫びながら、こちらに来ている…。

「先に帰るなよーーーー!!!!この薄情者がぁ!!!!」

 ようやく聞こえたが、うるさすぎて耳を塞ぐ。

「昨日待っててって言ったよね!!!?なんで帰ったの!!?」

 面倒くさかったからと言うと、余計に面倒くさいことになると思ったので、俺は敢えてこう言う。

「いや、昨日は、晩飯の当番だったんだ。」と。

 そうすれば、単純なこいつは、すぐに、

「そうだったんだ、それは知らなかったよ!無理言ってごめんね?」

 ほら、すぐに信じる。

 まぁ、そこから話が進展していくこともなく二人共無言で教室に入った。

 俺は、この時何も話していない空間も、あいつと居れることにも、少しの嬉しさが存在することに気づいた。

 でも、あいつは夏休みの長期休みをきっかけに、学校に来なくなった。

 そこからまたいつものような日々が進み、一年が終わった。

 二年になって、クラスはまたしてもA組、まぁ、二クラスしかないから、二択なんだよね。確かあいつも同じクラスだったはずだ。

 しかし、あいつは学年が上がってからも学校には来なかった。何かあったのだろうかと、少し心配はするが、特に行動には起こさなかった。 でも、この時にあいつに何があったかを知っていれば、あんことにはならなかったはずなのだ。

 でも、結局のところ、それを知ったところで、何もできなかっただろうが知らないよりかもは、知っておきたかった___。

 気づいた時には、病院に居た。

 病室のベッドには、あいつが力なく横たわっていた。俺は、先ほど医者に説明してもらったことを、思い出していた。

・・・

「この子は、先ほど事故に遭い、搬送されてきたのだけど、頭の損傷が激しく完全に治すことはできないだろう、目覚めるとは思うがね、まず、記憶はほとんどないだろう___。」

・・・

 あぁ、絶望だ。また数少ない大切な人が消えていく。頼む…お願いだよ、もう連れて行かないでくれよ。大切な人…そうかあいつはもう、俺の中で大切な存在になっていたんだな。大切な人達を連れていくなら、俺も一緒に連れて行ってくれればいいのになぁ。

 後から聞いた話では、あいつは、去年から、いじめられていたらしい。あいつは一人でそれに耐えていたんだ。俺にも相談しないで、母親にもしていなかったらしい。それでも先生に相談していたらしいが、個別にいじめていた奴らに指導をして余計にいじめは、ヒートアップしたそうだ。まさに八方ふさがり。”悔しい”どうしてあいつが、なんて思ったが、原因には心当たりがあった。”俺”だ。俺が、あいつと関わらなければあいつはいじめられずに済んだのではないか?

 結局、悪いのはすべて俺なのだ…。

 ベッドに力なく横たわるあいつの顔は、顔色が悪く、まるで死んでいるようにも見えた。悲しいなぁ。これほど悲しくなるのは、母以外居ないと思っていた。もう嫌だ、大切な人を無くすのは、もう嫌だ、この悲しみを感じるのが、もう、何も感じたくない。そう思うと、涙が止まらなくなった。この涙すらも出なくなってしまえばいいと、この感情すらもなくなればいいと思った。

 助けて、助けてよ、あの日のように、僕を、絶望から…誰か…救い出してよ_______。


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