私がいるのは細い柱のてっぺん。足1つ分の足場しかない。

 そこに真っ直ぐと立っている。

 下を見る。

 霧のように白い。何も見えない。

 いや、見えた。

 私が立っている柱の横には明るい茶色のレンガ造りの家があった。その窓からこちらを覗き込んでいる子供がいる。黒くて見えない。人じゃないのかもしれない。

「危ないよ」

 黒い子供は私に注意した。

 そういうのは誰だってわかっている。ここにいるのは危ない。鳥じゃないんだから。


 私は背筋を伸ばしたまま落ちる。前倒しで。

 浮遊感を感じるかと思ったが、全然感じなかった。

 私は恐怖心も爽快感もなかった。

 私は落ちてる間、目を開けていた。来るはずであろう地面の肌を見極めるために。

 思っていた通り、白を抜けると地面が……っ。

 反転。暗転。音。反転。反転。


 仰向けになっていた。

 見ると、細い柱の上部分が見えた。

 私の手は血だらけだ。当たり前だ。あんな高いところから落ちたんだから。

 黒い子供はまだ窓から覗いている。

 何か言っているのだろうか。全然聞こえない。心配でもしているのだろうか。

 だけどそんなのは杞憂だよ。


「--ほら、死なないじゃん」

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