日誌二日目 門番さんの朝

[4:59] 秋山、起床

まだ暗がりの少しだけ明るくなった空がカーテンからチラリと見える

「……っくぅ……」

ピピピッと目覚ましがなるよりも一足先に起きれば、鳴ると同時に切り。

こじんまりとした部屋は灰色と黒、紺色で統一された家具…そしてそこに似つかわしくない小さなウサギの人形がポツンとベッドの枕元に置かれており

「おはよう…」

軽くそのウサギの頭をポンポンと撫でれば 立ち上がり

門番としての濃い緑を基調とした所々に青の線に入った制服に着替え

朝食を手早く済ませ部屋を出る。

部屋を出て隣の部屋の前で足を止めれば ドアを少し乱暴にゴンゴンッと鳴らして。

「藤田! そろそろ起きろ!!」



[5:30]藤田、起床

ドアをドンドン!と叩く音で藤田はうっすらと目を開ける、リリリと目覚ましは鳴り響き

ぼやけた視線には空き缶と食べかけの弁当がある机を見つめていて

「ったま いてぇ…」

ベッドではなく床に突っ伏せて寝ていたためか頭を抱えながら起き上がる

隣人…先輩の声と叩く音に返事すらしないまま昨日の残りの弁当をそそくさと食べ

毎日いやと言うほど見ている門番の衣服に着替え 髪型をセットしてから

「はいはーい、起きてます 起きてますよー ヒィッ…」

「おはよう…」

ガチャリとドアを開ければ 朝だからなのか それとも20分も返事を返さなかった為か

いつも以上に目つきの悪い秋山がドアを叩いていた拳を藤田の顔面ギリギリで止めて

「心臓に悪いっスよ…」

「後一分遅れていたら 俺はドアを蹴破ってでもお前を連れて行ったな…5時52分…

ほら、行くぞ」


[6:00]ゲートステーション、到着

ステーションはとても広く それこそ数百人が入れるほどの大きさだ、

入り口から伸びるように受付があるが、

まだ従業員は着ておらず、二人の足音だけが響く

ステーションの奥に足を運べば

学校の体育館ほどの少しばかり広く大きめな建築物であるクラックのある室内

その横の管理、休憩兼用の部屋にはいれば明かりを付ける

「藤田、クラックの通信は?」

「あぁ、OKOK オーケーっス」

誰もいない…正確には二人だけの室内に書類をまとめる音とカチカチと電子機器を弄る音が響き、秋山は通信機を手に取りスイッチを押した

「こちらE6番ゲート 準備完了です」

『こちらHE6番ゲ…ふぁぁぁ…ト…準備完了…』

「…お疲れのようで……藤田、接続頼む」

「了解っス」


藤田がクラック同士の転送接続を行っている間に秋山はロッカーから銃を取り出す

01 02と銃床に数字が割り振られたライフル型の銃

1つ1つに電撃を伴う針が付いた 非致死性のテーザーライフルだ

「藤田、ここに置いとくぞ」

「うー、いっす…あざっス…」

ゴトリと机に銃床に02と書かれたライフルを置かれれば通信機器を弄る藤田は生返事を返して

「おはようございます」「おはよー」「おはようございまーす」

扉の向こう側から数人ほどの挨拶の声がしてくれば 秋山は腕時計を見つめて

「6時半…調整も終わっただろ そろそろ配置に付くぞ」

「堅苦っしいなぁ先輩は…もう少し時間にゆとりを持つべきですよ」

途中からは弄っているフリだったのだろう パッと機械から手を離せば

椅子の裏側にふくらはぎを付ける形で地面から離せば 近くのテーブルに手を付け

クルクルと椅子を回転させて駄々をこねて。

「ゆとりをもっちゃいけない仕事なんだよ…ほら、いくぞ」

「まだ時間もありまってぇ! っだ! 先輩っ! いっだだだ!!」

いつもこうだ…と小さく呟いた秋山は藤田の腕を掴んでの銃の紐も掴めば

机や椅子に藤田の頭をワザとぶつける様に移動しながら休憩室を出てゆく

既に人では受付の従業員も慌しく移動しており。

一人が足を止めれば クスリと笑みを浮かべ

「あら、おはよう……ほんと、貴方達はいつもどおりね」

ムクリと藤田が立ちあがれば尻に付いた埃を払い頭を片手で抑えて


「おはようございます」

「おはよ…ございます…」

秋山はいつもどおりの日常だと口元が緩み小さく笑顔をした

藤田は残りの弁当が腹に響いたと眉を潜めていた

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今日も門番は平和 J.J @JunkieJunker

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