3 月

私が好きになる人はみんな、大人しくて1人でいるような子が好きだった。華奢で運動が苦手そうな子。群れるのが嫌いな子。でも嫌われないような、彼らはそんな子を目で追っている。

知ってるよ。私はあなたたちが好きな子のようにはなれないの。

誰にも言ってはいけない、この気持ちを出してはいけない、抑えられない気持ちはほかの場所へ。

月が明るすぎて外を歩けなかった日は、星も見えなかった。誰でもいいから私の隣を歩いてほしかった。

月明かりで影ができてしまう夜、私は手を繋いで隠れるようにして海沿いを歩いた。自分の本当の気持ちはとっくにわかっていたけれど、認めるわけにはいかなかった。手を繋ぐ時、手が触れるその瞬間に、彼のことを強く思い出す。隣にはいない彼のことを。

睡眠が足りてないのか息がしづらい。体が火照って苦しいのに眠りたくない、眠れない。包んでくれたらきっとすぐ眠れるのに。月明かりが邪魔をする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る