Episode24 光
私が七瀬家長女として生まれたのは約十六年前。夫婦の愛がとても強い家に生まれた。幼かった頃は親に甘やかしてもらいすくすくと育って行きました。
七瀬家は元々、日本の裏方として支えていた家の一つで代々それが受け継がれてきました。もちろん、父親がその当時そうでした。ついていた役職は警視庁長官。警察官として日本の裏方として支えていました。
母親は違う家から嫁としてきたため結婚する前、特に深い関わりがありませんでした。ですが、母親の地元の方で警察官だったと言っていました。
私が二歳の頃、ある異変が起こりました。家に何者かが侵入し、家の内部を破壊して行きました。もちろん、両親はその当時犯人を捕まえられず流されてしまいました。
そして、五歳になった年。私はものに強く当たると勢いで壊してしまうことがわかりました。それも全てを壊すように。私はビックリし過ぎてオタオタしました。その間にも他の場所を壊してしまいました。
その後、親に報告しました。もちろん、私を叱りました。ですが、叱り終えた後、親はものすごく驚いた表情で私に言いました。
「それは忌み子かもしれない……」
「忌み子……?」
「ああ、人間じゃないんだ」
「え?」
当時の私は全くわかりませんでした。ですが、その日から両親から避けられるようになりました。冷たくされました。次の年で小学生になるはずでしたがなることがませんでした。その代わりに家庭教師を雇い、その人に教えてもらいました。そのまま小学生を卒業するまでの年齢になりましたがその時には家庭教師も私を避けてしまい、もう来なくなりました。
中学生の年齢になった時、久々に私の声をかけました。ですが、その口から出たのは施設に入りなさいと言われました。そう。
日本治安維持委員会が運営している忌み子保護施設に。
「⁉︎ ってことは……」
隣で寝ていた先輩、遊は私に尋ねた。
「はい。私はその当時に忌み子だと断定されました」
私は淡々と答えた。そして、遊は目を曇らせた。その目はあの時見た目と同じだった。
「続けますよ……?」
「ああ……」
そして、とうとう私は施設に預けられました。最初の方は穏やかで楽しかったです。ですが、すぐに現実を見ました。私が楽しそうにしているのを近くで見ていた人たちはみんなこう言うんです。
楽しそうでいいね。羨ましいよ。
すぐには全くわかりませんでした。でも、すぐにわかりました。強制労働。暴力。そんなのが絶えなくなって来ました。私もそれを受けられて今も傷跡が残っています。
そこにいて楽しいと思いませんでした。でも、それは皆同じです。だから、少しでも和んでもらおうと話をしたりしていました。その間に能力の使い方がはっきりとわかり操作できるようになっていました。そして、何年か経った後、初めてその施設で警備している人じゃない人が来ました。それも二人も。
「俺と会長か」
「はい」
遊は言った。それに私も応答した。
二人は何者かわからなかったのでその場にいた人たちは皆、警戒しました。また、別の人が暴力を振るいに来たんだと。でも、先輩はこう言いました。
「なあ、これが本当に保護してるって言えるのか?」
その言葉で私は施設を管理している人じゃないとわかりました。
「そのはずだけど……。私もここに来たのは初めてだから全くわからなかったけど、これは最悪ね」
二人はその施設のことを否定するような話をしていました。
「すまん、また明日も来ていいか? 会長の話、まだ鵜呑みには出来ない」
「いいよ。私が勝手にしていることだから」
そう言って二人は帰ってしまった。その後、あたりは騒然としました。あんな人がここの警備をやってほしいなと思っていました。それもほとんどの子たちが。
そして、次の日。また、先輩たちが来ました。
「相変わらずだな……。ここは……」
「何か手を打たないとね」
「でも、そんなのでなんとかなると思ってんの? もっと大きな手を打たないとな……」
そのまま二人は施設内を回ったそうです。そして、私たちが眠りについた頃。騒がしくなりました。檻を破る音、鍵が回る音。その時は本当に騒然としました。眠っていた人たちは全員が起きていた。そして、声が聞こえて来ました。
「お前ら! 助けに来たぞおおおお!!!!」
先輩の声でした。そこから指示が飛んでいました。
「お前ら二人は十人くらい連れてB区画へ! そっちの二人も十人くらい連れてD区画へ! 残りは俺について来い! 数が一番多い方へ行くぞ!」
そして、走り出す音や扉を開ける音、檻を破る音、先輩などの指示もその場に響いていました。
「力のあるやつ檻を破ってやってくれ!」
そう言うと打撃特性を持っている忌み子達が檻を破り始めた。
「残りは脱出だ!」
そして、檻から出た忌み子達は出口へと向かって行った。
「いたぞ! あいつだ!」
後ろから警備員が追いかけていた。
「黙ってろ! クソがぁ!!!!」
先輩は警備員を殴り飛ばし時間を稼いでいました。そこに一緒にいたのは零ちゃんでした。だから、先輩はパートナーに選んだんだろうなと思いました。
「なんで、そこに七瀬の私情を挟むんだよ」
「いいじゃないですか」
「ま、事実だけどさ」
「ほら、そうじゃないですか!」
「何で怒るんだよ! 早く続きだ続き」
そして、私たちは全員、外へ出ることができました。ですが、治維会の部隊が来ていました。一番に前に経っていた男は言いました。
「誰がこれを企てた……」
誰も答えません。その時、二千人近くいた忌み子達は何も言いません。
「誰だって言ってんだろ!!!!」
「俺だ」
そして、先輩が来ていました。その体には傷を負っていました。
「知らんやつだな……。なぜ、ここに入っている」
「てめえらの代表に教えてもらってな」
「そうか……。では、なぜこんなことをした……」
「なぜって、一択だろ」
そして、間を置いて言いました。
「虐待施設からの解放」
「貴様……。バカにしてるのか……?」
「そりゃそうさ……。保護するって言ってる割には檻の中に監禁してる時点で黒だろ」
「そうか……。そんなことになっていたのか……。治維会の名が廃れるな……」
「お前、治維会の偉いさんか?」
「いいや、このことの隊長というだけだ。それが何か」
「なんでもねえ。だが、この議題だけは提出しろ」
「なんだ」
「忌み子の収容方法。どこかでのびのびと生きさせてあげろ。監禁されて喜ぶ奴がいるか? それに憲法も破ってるしよ。それじゃ」
「帰らせるわけにはいかんぞ。ここの現状をどうするんだ。貴様にはまだ付き合ってもらうぞ」
「ああ、そうか。それじゃあ、お好きにどうぞ。だが」
「?」
「忌み子の解放が最優先だ。ある一定期間だけ街で生きさせてやってくれ。その後、収容場所、広々とした場所を用意しろ。それが条件だ」
「わかった。代表に伝えておく」
そして、収まりました。私たちは時期が来たと同時に消滅都市として指定されていた山梨県甲州市に収容されそこで暮らすこととなりました。
私はすぐに甲州市を出てこちらへと来ました。そして、会長を探しました。数日探した後、ようやく会長に会うことができたので言いました。
「私もあなたと同じ高校に通わせてください」
会長はすぐに承諾してくれました。そして、すぐに忌み子のことも言いました。それも軽く受け入れてくれました。
ですが、私はまた別の質問をしました。
「あの時、助けてくれた男の人は……?」
「ああ、日暮くんのことね。それなら、大丈夫。正式に治維会に所属したよ。それに処分は無し。元気にしてるよ」
私は心底嬉しかったです。だって。
私の光になった人だったから。
あの時、助けてもらえなかったら。あの時、外へ出ていなかったら。今がないんですから。だから、そんな人に憧れてついて行くことにしました。
そんな内情を察したのか私が入学した直後は生徒会に入らせていただきました。その中でどうにか先輩に会えるように頑張りました。そして、会ったのがあの時です。
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