Episode14 依頼の内容

 そして、遊は生徒会室においてある生徒会長席の正面に立たされていた。生徒会長席には沙良が座っていた。


「で、何の用だ。なんで俺を呼び出さなきゃいけなかったんだよ」


 遊はだるそうに言った。


「大体、生徒会の含め学校の奴らから疎まれている俺を呼び出す必要なんてないだろ?」


 と周りを見渡してみると生徒会に所属している人たちからの痛い視線を遊は向けられていた。


「まあまあ、いいよね?」


 沙良は慰めるように言った。


「良くない。用件は? 何もないなら帰るぞ」


 遊は急かすように言った。


「じゃあ、お話をしようか」

「会長、それは引くよ。俺だけじゃなくて周りの人たちに……」


 普段と口調の違う沙良に生徒会に所属している人たちは少し冷や汗をかいていた。


「そう? じゃあ、いつも通りで。と言ってもここで話せるような内容じゃないんだけどね」

「は?」

「ちょっとまたついて来てくれる?」


 沙良は立ち上がり遊を呼んだ。遊はため息をついてから沙良の後へと続いた。

 そして、たどり着いたのは生徒会室の横に設けられている部屋であった。


「生徒会室の横にこんな部屋があるなんてなぁ……」


 広さは六畳ほど。そこまで広くなく誰か客人を呼んだ時に使っていそうなお洒落な空間であった。


「でしょ? ここはほとんど入らないからいいと思ってるんだけど」


 遊は部屋に置かれていた椅子に座るとその向かいの椅子に沙良が座った。


「で、内容とは?」


 遊は話題を切り出すように言った。


「そうそう。約一週間前の事件で日暮くんたちの部署が人手が足りないって言うのを聞いたんだけど、そのあとはどう?」


 遊はそのことを聞くと呆れてた様子で頬杖をついて言った。


「別に。あのあと特に大きな事件すら起きてないからなんとか立ち回れそうだ」

「そっか。彼があんなことをしてどうも思ってはいないんだね」

「ま、そう言うことだ。一応、あのあと正式に単独で捜査を行えるようになったからあいつが抜けた分を俺がカバーするみたいなもんだ」

「なるほど。でも、人手はやっぱりあってもいいってことかな」


 沙良が真剣な目つきで遊に問いかけた。


「ま、そう言うことになるのかな。柿田がどう思って俺に協力を依頼していたのかわからないがあったほうがいいことになるのかな」

「じゃあ、その人材探し手伝おうか」


 沙良は身を乗り出して言った。すると、遊はそれを制止するように手を出した。


「いや、そう言う人に出会うまではいい。やる気がないやつじゃ俺みたいな感じで始まってしまうからな」

「悪かったね」

「あ、そう。俺は特に気にしていないが」


 遊はふーと息を吐き出した後、言った。


「で、用件はなんだ。話を逸らしても無駄だぞ」

「はいはい」


 すると、沙良は資料らしきプリントを遊に渡した。


「なんだこれ」


 遊はその内容を見ていく。中身はたくさんの要望らしきものがあった。それも人付き合いのようなものがたくさんあった。


「日暮くんのコミュ障直しのために用意したものだ」


 沙良は笑顔で言った。


「じゃあ、俺帰るんで」


 と遊は立ち上がり部屋の外へと向かおうとした。沙良は腕を掴んでそれを止めた。


「そんなわけないでしょ? 冗談。ジョークよ」

「その割にはタチ悪いな」

「それは黙っておいて」


 遊は椅子に座りなおした。


「で、本当な何の資料なんだ?」

「これは人間関係だとか手伝って欲しい内容が生徒会に届いたの。そのリストよ」


 遊は改めて資料に目を通す。何となく察しはついていたがこんなにあるとは一切思っていなかった。


「これを生徒会で捌いているのか? すげえな」

「何言ってるの? 日暮くんがやるやつだけど」

「は?」


 遊は目を丸くした。


「だから、日暮くんにこれを処理してもらうの」

「却下。じゃあ、帰ります」


 遊はまた部屋の外へと向かった。また沙良は手をとって引き戻した。


「俺、そんなことにやる気は一切合切ないんですけど。大体、こういうのって人の手伝いをするみたいな部活があるみたいなやつじゃないのか。何かの小説でよく見る感じのやつだけど?」

「そうなんだよ。だから、その処理する内容は日暮くん自身が選ぶの」

「じゃあ、全部やんない。終わり」


 遊は即答だった。


「っていうと思ったよ。というわけで助っ人を呼んでます。入って!」


 沙良がそういうと部屋の扉が開いた。年齢は一つ下ぐらいだろうか、身長は百六十弱ほどで髪は零のようにショートカットで茶色に近い色をしていた。


「彼女は七瀬千紘。生徒会の書記で一年生だ」

「初めまして、七瀬千紘です。よろしくお願いします」


 大人しそうで清楚な印象を遊は受けた。学年でもモテていそうな人柄であった。


「日暮遊だ。よろしく」

「というわけで日暮くんの助っ人として彼女と一緒に動いてもらうからよろしくねー。じゃあ!」


 そのまま部屋を出て行ってしまった。


「あいつ、本当自由だよな。頼れるときには頼れるのに……」


 遊はポツリと呟いた。そして、七瀬はさっき沙良が座っていた席に座った。


「じゃあ、どれからしますか?」


 七瀬がプリントをこちらへと見せてきた。


「どれってなあ」


 遊の本心はだるいなぁ。帰りたいなぁ。しかなく全くやる気がなかった。だが、やる気を持ってきているように見えたその後輩に心配をかけれないと思いチラッと見てみた。


「どれが一番良いんだ?」


 だが、やる気は一方的に下がるばかり。もう七瀬が決めたもので良いやと投げ出してしまった。

 それに感づいたのか七瀬が言った。


「あ、やる気ないんでしたら会長に行ってきましょうか。私もやる気ないんで」


 本気トーンで。

 遊の頭の中は処理が追いつかなくなってしまった。

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