Episode6 最初の手がかり
『どうした……? 何か分かったか?』
海斗は急に黙ってしまった遊を不思議に思った。
「このトーナメントでの優勝者もいれてAブロックで勝ったやつの名前ばかりだ……。しかも、トーナメントの一番左の列のところ限定で……」
『ど、どういうことだ?』
「説明が難しいな……。ま、とりあえず分かったのはこのトーナメントで勝ち上がった人物が標的にされていてAブロックの特定の位置で勝った人物ばかりなんだ」
『なるほど……。で、その特定の位置っていうのは?』
「言葉で説明するのが難しいからそっちに送る。どうやったら送れる?」
そう言ってパソコンからすぐ送れるように準備した。
『えーっと、画像にカーソル合わせて右クリックだ。そこから共有を押す。それで俺が使ってる端末……『087』に送ってくれ』
「了解」
言われた通りに遊は動き無事送ることができた。
『遊さ』
「何?」
『機械音痴?』
「……悪いか……」
遊は否定をしなかった。この時代にはパソコンは小学生の時に必修科目として授業を受けパソコン内にあるソフトを使って自己紹介などを行う程度まで教えられている。
「俺、小学生の時あんまり覚えてねえんだよ。あまり分からん」
『今、何歳だっけ?』
「一七」
『ま、五年も経っていれば忘れるわな。お、やっとファイル開けられたな』
すると、海斗は黙り込んだ。送ったPDFをしっかり見ているのだろう。字が細かいから辛そうだけど。
『本当だな。しかも左サイドによってるな。遊の名前もあるな』
そして、また黙り込んだ。
「どうだ? 今日も襲撃ありそうか?」
『ありそうだな。今まで毎日やってるからな』
「なら、防衛となるけど。誰が来そうだ?」
そう言って名前を見ていった。遊の下に当たるベスト二五六を見ようと思ったが名前がなかった。
『この表は最終トーナメントばかりだな。Aブロックだけ絞ったものはないか? おそらくそれ見ないと分からんぞ』
「だよな。だけど、サイトのどこにもそれがないんだよ」
『そうか……。なら、情報収集か……。久々にするなぁ……』
と海斗が呟いた瞬間、遊の携帯端末が鳴った。モニターを見ると古崎からだ。
「海斗、すまん。部署のやつから電話かかって来た」
『了解。しっかり落としてこいよー』
「なんで、落とすんだよ」
遊が冷静にツッコミを返した後、ヘッドホンを外し席を立って情報室の外へ出た。そして、端末を見るとすでに着信が切れていた。
「はぁ……」
遊はため息をついて古崎の携帯に電話をかけようと思った瞬間、こちらにかかってきた。
「もしもしー」
『何そのやる気のない声!』
「え? かけようと思ってかかって来た時ってだるく感じるだろ? 今それ」
『なんなのよ……』
さっきの海斗にツッコミを入れていた遊はどこやら。
古崎凛。彼女は遊が治維会で所属している《昭島部署》の部署長だ。歳は同じで学校も同じだ。普段、長い黒髪をポニーテールでくくっている。
「で、用件は?」
『用件は? じゃない! 昨日の夜なんで電話して来たの?』
「あー。それか。それなら今から本部の情報室に来てくれない? そのことについて色々調べているからさ」
『え、ちょっと何なの! ねe』
遊は着信を切った。なぜか古崎にのみ気怠い態度ができるのだ。いつからそうなっていたのだろうか。
「はあ……。って何でいるんだ」
遊の目の前には情報室の中にいるはずの海斗がいた。
「え? 夫婦喧嘩を覗きに」
「何で夫婦喧嘩っていう設定になる。戻るぞ」
遊は冷ややかな目をして言って、海斗を促しもといた席に戻った。椅子に座り込んでまた情報収集を再開した。
「なあ、海斗。今回、やられた人ってみんな忌み子拐われたのか?」
『ああ。報告通りだとな……。全員、遊が言っていた一筆書きのパズルゲームをしたらしい。その後、自分のパートナーが『覚醒』して追われたんだと』
覚醒というのは忌み子の能力開放時の名称だ。その時に目が赤く光るのだ。だが、今回は普段とは違うということは話の流れ的にわかるであろう。
「なら、話を聞くというのは?」
『いや、無理だった。話を聞きたくないらしい』
「探そうだとか思ってないのか……?」
『知らん。パートナーである忌み子をどう思うのかはその人次第だからな。お前みたいなお人好しやただの道具としてしか思ってないやつも色々いる。それだけじゃねえか?』
「誰がお人好しだ」
『自覚ないんだー。自覚あるのかと思ったー』
「何だよ。その棒読み」
すると、情報室の扉が開いた。古崎だ。こちらに気づいた途端、ものすごい勢いで走って来た。
「日暮、用件は?」
「早いな。そういうのに関して」
「そりゃそうでしょ! あれだけ隠しておくくせしてその態度何? 気にならない方がおかしんじゃない⁈」
「あっそ。じゃあ、話すぞ」
そして、遊は海斗に話したものとほぼ同じ内容を話した。ここで新たに手に入った情報を織り交ぜて話した。
「なるほど……」
古崎はうんうんと頷いた。
「上層部への報告は?」
「報告も何ももう動いてる」
「じゃあ、何で調べてるの?」
遊はうーんと唸って少しの間考えて言った。
「独自捜査と言った方がいいかな」
「ふーん」
古崎は興味なさげに言った。遊は小さなため息を吐いた。
「で、零ちゃんを取り戻すために調べてるのね」
「ま、そういうことになるな。それで海斗」
『はいはい。何でしょう』
遊は海斗へと話をふった。海斗は待ってましたとばかりに反応が良かった。だが、小さくだったが笑い声が聞こえてきた。
「何笑ってんだ」
『え? 夫婦が揃ったなって思ってさ』
「あのな。古崎の方はお前のこと知らないんだぞ。黙ってろ」
「?」
ヘッドホンの中に声が聞こえているため外には全く聞こえていない。だから、古崎だけが不思議そうに首を傾げた。
「で、古崎。この前のトーナメントのAブロックの表を持ってないか? 会議とか出てる時にそういうの配られなかったか?」
「ないわよ。会議と言っても今後の捜査方針だけ。トーナメントに関して何も情報は持ってないわ」
「そっか……」
遊は落胆して言った。
『どうする? 遊。これからどうするよ?』
「そうだな。情報の仕入れどころがなくなったからどうもできないな……」
少し考えた。そして、何か閃いたかのように目を見開いた。
「なあ。海斗」
『何だ?』
「会長はトーナメントのデータを持ってるか?」
ここで指す会長はこの治維会代表兼遊の通っている学校の生徒会長である朝比奈沙良のことだ。
『わからん。持ってるんじゃねえか?』
「なら、頼んでおいてくれないか?」
『あー。なるほど一理あるな。了解。頼んでみるわ』
「じゃあ、俺戻るわ」
『ほーい。ある程度情報は集まったからな。何かあったら連絡するわ』
「海斗は残ってくのか?」
『ああ。一応裏で動いているからな。捜査を担当してる奴らをほぼ同等の位置に立たないとな』
「了解。ありがとな今日は。これからもよろしく」
『じゃあ、ゆっくりしろよ』
「はいはい」
そして、遊はパソコンの電源を落とし椅子から立ち上がった。
「古崎。っていうわけなんで帰りますね」
ほぼ話をスルーしていた古崎に声をかえ情報室を後にした。と思っただけだった。
「何よ……。呼び出しておいてそれだけ……?」
「え……? 古崎さん、何でしょう……?」
「ねえ……。もう捜査は終わりなの?」
「え? そうだけど……。さっきの文脈からわからなかった?」
この言葉で古崎のこめかみに青筋が走った。
「わからなかったじゃ……。ないでしょうが!!!!!」
遊は古崎の鉄拳制裁でぶっ飛んだ。
と何かあったが遊は家に戻り誰もいなくなった家で一日をゆっくり過ごしていた。
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