どんな声でも顔でもあなたがいとおしくて

 ああ、黒姫くろひめと戦う時って、ホントにゾクゾクして、青子あおこは本当に幸せ。

 今だって、トグルアクション式拳銃ファントム・ブルーを持つ手が悦びで震えてるくらいなのに。対峙する黒姫は、青子の事を射抜かんばかりの形相で睨み付けている。

 そんな顔すら愛しく思えて、思わず息を飲んだ。

「久しぶりね! こうして貴方と向き合えるのは! 夢花が無くなってしまったのは残念だけど、こうして貴方に会えた! 青子、胸がいっぱいなの!」

 言葉なんかじゃ伝わり切らない青子の愛は、魔銃の銃弾で教えてあげる。黒姫がかく乱の為にバラまく桜の花びらの間を縫って、弾丸を黒姫の肌スレスレに撃っていくの。優しく愛撫するみたいに。

「戯れ言を……!」

 黒姫は苦虫をかみつぶしたような顔でそう言った。

 ああ、青子に言葉をくれたのね、黒姫! たった一言でも声を青子にぶつけてくれたのが嬉しくて、気持ちがさらに高ぶってくるのが分かる。

「ねえ覚えてる? 初めて出会った時のことを。青子、ずっと忘れてない。真っ白な白昼夢で、独りぼっちだった青子を見つけてくれたのは黒姫、貴方だから!」

「黙れ」

 黒姫の短刀サクラバナが青子に向かって何度も振るわれる。一瞬でも気を抜いたら、きっと青子はズタズタにされちゃうんだろうな。白刃の切っ先が触れるか触れないか、踊るようなステップを踏んでかわしながら、そんなことを考えていた。

 銃弾にえぐられる黒姫の髪や服が見えた瞬間、体の芯が燃えるほど興奮を感じた。

「ううん黙らない。だって青子、貴方のこと、大好きだもの!」

 そう、青子は黒姫の事が大好き。

 人間の夢を守る夢守人ゆめもりびとの黒姫と、人間の夢を貪る夢魔の青子は、本当は敵同士の間柄。

 ずっと昔、白昼夢でお互いの素性を知らずに友情を深めたその後、人間の男が青子と黒姫の間を引き裂いてしまった。男にかどわかされた黒姫は、青子の事を嫌ってしまったの。

 でも、青子は黒姫と話したい。黒姫の身体に触れたい、黒姫に会いたい。だから、人間の悪夢に夢花ゆめはなを咲かせて、陰獣を生み出すの。そうすれば、黒姫は青子を見てくれる。たとえ、それが刃を向けられる関係だとしても。

 愛してる、黒姫。青子はここにいるよ、分かって。


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同人誌即売会『Text-Revolutions5』のイベント内有志企画『第二回キャラクターカタログ企画』寄稿作品 

本編の一場面を青子視点で。

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