第47話 大きくなる
女王が伏せたのを確信し、俺はフレイルを振り回してフナムシへの攻撃に備える。
だが女王の様子がおかしく、フナムシの移動を先読みして俺が放った岩球は、
突然彼女が飛び付いて来たせいで狙いを外してしまう。
何事かと口を開こうとした時、俺の息子に溶ける様な刺激が走った。
ふ、笛、ラジオ……!?
あかん、体に力が入らへん……。
「んむ、んむ……ぷはぁっ」
女王は3秒程俺の息子に吸い付き、ポンッと跳ねる様に頭を離した。
それと同時に俺は下半身の支えを失って、
糸が切れた様にガクッと崩れ落ちてしまう。
ついでにアンジェネリックフレイルの棒も落としてしまった。
女王の口の中やの体温や自身の血流増進で暖まっていたのも相まって、
相対的に冷たい外気が俺の息子を驚かした。
決して寒くはない筈だが、唾液で濡れているせいかヒンヤリする。
ラスティアンと戦闘中だってのに何してくれんだよ。
真の敵は味方ってか、はは……。
「何じゃシツ、全く出ておらんようじゃぞ。
ただしょっぱかっただけではないか」
「何言って……女王。
今戦闘中……」
「そちらこそ何を言う。
シツの方からわらわを誘って来たのではないか!
責任転嫁するでない」
「……は?」
サッパリ訳が分からない。
俺は糞真面目にフナムシと対峙してただけだぞ。
何で女王が怒ってんの?
「まあ、誘いに乗ったわらわも白ではないか。
シツ、さっさとラスティアンを倒せ。
続きはその後じゃ!」
「女王、あの……」
やっとこさ立てる様になって来た。
事前にラッキースケベで勃ってたせいか、かなりの快楽ダメージだったな。
俺、一応童貞卒業済みなのにね。
「シツ。
早う下着を上げんか。
そのまま戦うつもりではあるまいな?」
自分で下ろしといて良く言うよ。
……てか、上げられないんだってば。
「女王。
布切れとか、何か拭く物持ってませんか?」
このままの状態でショーツを履いたら女王の唾液やら何やらで汚れてしまう。
これだって何万もしたアンアンコスの一部なんだぞ。
「布切れ?
ちと違うが、この皮袋くらいじゃな」
女王は自身の腰から皮袋を取り外し、それを手に乗せて俺に差し出した。
こんなので拭けるか!と言いたい所だが、背に腹は変えられないので受け取る。
幸い袋状だから、拭き取るんじゃなくこうして……っと。
「避妊具にするのか!?」
「誰のせいだよっ!」
女王のおとぼけにもうんざりな俺は、身分差も忘れ脊髄反射で彼女を罵った。
何はともあれ、これでショーツを汚さずに済む。
俺は皮袋の上にショーツを履き、フレイルの棒を拾い上げてしっかりと握った。
股間がやたらモッコリしてて見栄えが悪いが、女王以外に誰も見てないし少しの辛抱だ。
「女王伏せて!」
「しつこいぞ、それくらい分かっておる!」
俺は女王の返事を聞き、フレイルを振り回し始めた。
自分でもしつこいのは思うけどさ、
万が一にもフレンドリーファイアなんてしちまったら悲しいじゃん?
「女王!フナムシがどこに居るか分かります!?」
「……フナムシ?」
あ、こっちの世界ではフナムシじゃないんだ。
ハプニング続きで集中力が切れたのか、つい日本語で喋ってしまった。
メツェンさんと居る時にイセエビの名前を挙げた時も、彼女は確か首を傾げてたな。
この世界でフナムシに固有名詞は無いのか?
「あの小さいラスティアンの事ですよ!」
「わらわにも分からぬ!」
「そうだ女王!
前みたいに吹雪で草原を凍らせて、ラスティアンの動きを封じたら!?」
俺の提案に、女王は数瞬遅れて「無理じゃ」と却下の返答をした。
「何で!」
「わらわの攻撃魔法は爆炎がメインカラーなのじゃ。
シツには初耳であろうが、
メインカラーでない攻撃魔法を放つと術者に大きな負荷がかかってしまう。
爆炎や転移はまだしも、吹雪を放てる程わらわは回復しておらぬ」
「ちっ……」
毛ガニのハサミを凍らせた後に倒れたのもそのせいか。
なら仕方無い、俺1人で何とかするしか……。
「出よったぞ!」
女王が叫んだ。
俺も彼女の視線の先を追って、その場でのしのしと方向転換をする。
フレイルを振り回しながらだとこうせざるを得ない。
「……居た!」
腰掛け代わりにしたら丁度良さそうな、膝上程度のやや小ぶりな岩。
その岩の陰から、フナムシの触角が突き出ている。
尻隠して頭隠さず……だな。
フナムシが動いた瞬間、俺は先読みしてフレイルを放った。
「あっ!?」
外れだ!
俺がフレイルを投げたのと真反対の方向に、フナムシが素早く駆け抜けていった。
あれは触角じゃなくて尻尾だったのか!?
「何をしておる!」
「今のは仕方無いでしょう!
あいつ今フェイントしたんですよ!?」
俺は飛んで行ったフレイルを引っ張って回収しつつ、女王を軽く睨んだ。
「……何じゃその目は。
あの様な雑魚ラスティアンにも手こずっておる癖に、
イサファガの女王であるわらわに楯突く気か?」
「誰にだって得意と不得意があるでしょう。
実際デカいのや大群だって、俺は倒してるじゃないですか!
女王だって吹雪が苦手なんでしょう!?」
「……それならあれも倒してみせよ。
戦果著しいそなたなら造作もなかろうに」
女王は僅かに歯を見せ、フナムシが逃げて行った方をアゴで乱暴に指し示す。
彼女の神経を逆撫でする余計な口を、俺は利いてしまったかも知れないが、
その高圧的な態度の返しにはこちらもムッと来た。
……ついでに、女王の口を見てさっきの笛を思い出してしまい、
ちょっとだけムラっと来た。
いかんいかん、俺にはメツェンさんが居ると言うのに。
「……分かりましたよ、やって見せますよ!」
俺はフナムシを倒せない事への苛立ちを、あるいは女王への劣情を振り払うかの様に、
力一杯フレイルをぶん回した。
ヤケクソになった所で意味は薄い?フナムシが出て来るまでにバテてしまう?
そんな事お構い無しに、ただただぶん回した。
「おい、シツ……大きくなっておるぞ」
まだ下ネタを繰り返す気かよ、このエロ女王は。
大体、皮袋被ってるから分かんねえだろ。
俺は無視してぶん回す。
「おいシツ……」
「ああー!うるせぇっ!」
俺はフナムシを見付けた訳でもないのに、適当な岩へ怒り任せにフレイルを振り下ろした。
……あれっ、なんか岩球がやたらデカいんですけどっ!?
さっき女王が言ってた『大きくなっておるぞ』って、まさか……っ!
『ドォォォォオオオオン』
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