第7話 大地震

女王の城は外観も大概だが、中は何と地面が剥き出しになっている。

昔テレビで見た、ジャングルの奥地だかに住む原住民の映像が思い起こされる。


天井からは草を編んだカーテンのような幕が貼られているが、

向こう側に誰か居るようみたいだ。


「スカルベル女王、このゾデ帰還致しました」


「うむ」


カーテンの向こうから女性の声がした。

メツェンさんよりも年増で、気の強そうなチカラの有る声色。

こんな町のこんな城に住んでいても、やはり女王というワケか。


「人が多いようじゃが?」


「片方は僕が助けた町人ですが、ひとりは新たなAAです」


「なんと!」


女王が声を荒げる。

すぐにカーテンを潜り、俺達の前に女王が姿を現した。


真っ先に目が止まったのは、

大きいなぁと思って見ていたメツェンさんよりも更に膨らんだ胸部。

その大きさは巨乳を通り越し、爆乳と呼んでも差し支え無い。


髪は明るめの金髪で、 全てを背中に流して一纏めにしているようだ。

服装は町人やメツェンさんとそう変わらず簡素だが、

所々に金属の装飾が施されている。


身長は俺よりも高いと言うか、

俺の方が低すぎるだけであって、この女王が特別高身長にはならないだろう。

ちなみに俺の身長は、隣に居るメツェンさんにも負けている。

ましてやフルメイルなんぞには到底及ばず、

爪先立ちしても超えられない程の差だ。

女装をする上ではチビは有利だから、全然気にならないけどね。


女王は俺を見てしばらく口を閉ざしていたが、全身をワナワナと震わせ始めた。


「わらわより豪華な服……!」


「はい?」


「ゾデ!こやつから衣服を剥ぎ取れ!」


「えええ!?」


女王は俺をビシッと指差し、何の迷いも無くそう叫んだ。

その格好で女王を務めるのには思う所が有るだろうけど、

だからってそんな堂々と、山賊の頭領みたいな命令を下すのは……。


「女王、お言葉ですが……」


ゾデがツッコミを入れる途中で、地面が強く震えた。


「うおおっ」


振動でその場に居る全員がよろめき、屋根から小石がパラパラと落ちて来る。


「外に出よ!」


女王が叫び、俺達はそれに従った。

少し前の俺なら絶対に受け付けない言葉だが、今は違う。

俺よりよいち早く事態を察したらしいメツェンさんが、

とっさに俺の手を取り引っ張ってくれたのだ。


俺達が城を出ると、周囲の民家からも続々と住民が脱出している。


「またバケモノが!?」


「違う!地震だ!」


振動は強さを増し、俺達は立っていられなくなった。


「きゃあっ」


「むごっ」


バランスを崩したメツェンさんの胸が、同様によろけていた俺の顔面を直撃し、

そのままふたりで後ろに倒れる。

ラッキースケベだがちょっと痛くて苦しい。

まあ、エアバッグみたいな物だと思えば……。


「大丈夫!?シツちゃん!」


「何とか……」


「きゃ!」


俺を下敷きにしてしまったメツェンさんは慌てて体を起こそうとするが、

揺れが酷いせいで、またしても俺にボディプレスをかます。

これ喜ぶ所なのかな?


「女王!ご無事ですか!」


「くそう、またしてもわらわの城が……」


女王の発言を受けて、俺はこの町が退廃している理由を分かった気がした。

またしても……だから、結構な頻度で地震が来てその度に建物が破壊され、

まともな建築をしていたのでは修繕が追い付かないんだろう。


俺の仮定は概ね当たっていて、1、2分も続いた揺れが完全に収まった時には、

町の全ての建築物が無残に破壊され尽くしていて、見る影も無かった。

女王の城も例外では無く、女王は瓦礫の山を見てポツリと呟く。


「この星の裏側で、一体何が起こっていると言うのだ……!」


それ、とてつもないスケールのセリフなんですけど!?

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