第6話 退廃した王国イサファガ

王国だなんて言うもんだから、きっと見上げる程の巨大な城でも建ってるんだろうと、

俺は想像を膨らませて城下町に近付く。


だが、いわゆる民家がどれもこれも、あまりにも簡素で粗末な造りだったので、

俺は首を傾げた。

殆どの建物が木材や土で建てられていて、煉瓦なんかは見当たらない。

これじゃあ王国とか城下町じゃなくて、村とか集落のレベルだよ。


「ここが、王国……?」


「そうだ。

ガッカリしたか?」


「ええ、まあ……」


「そうだろうな」


「はあ……」


俺と少しばかりやり取りした後、フルメイルは黙りこくってしまった。


「わっ」


隣のメツェンさんが俺をグイッと抱き寄せ、耳に口を寄せて囁く。

むず痒いけど、悪くはない。


「シツちゃん、今のは失礼よ」


「聞かれたから……」


「社交辞令!」


メツェンさんはやや強めに言い、俺を押して距離を離した。


しばらく歩くと、町の住人らしき老人が俺たちに声をかけてきた。

先頭のゾデが立ち止まったので、俺とメツェンさんもそれに倣う。


「ゾデ様、お元気で」


「ああ」


「そちらの娘さんは……?」


老人が俺の方を見る。


「新しいAAだ」


エーエー……だって?


「なんと!」


ゾデの紹介に老人は目を丸くして驚くが、すぐに俺へ向かって深々と頭を下げてきた。


「このイサファガに良くぞおいでなすった。

有り難や有り難や……」


「えっと……」


「もう行っても良いか?」


「は、はい!」


ゾデが道を通すよう促すと、老人はパッと飛び退いてみせた。


「メツェンさん、今のお辞儀は……」


「すぐに分かるわよ」


「はあ」


老人が立ち去り、俺達3人はまた歩き出した。

やがて、ゾデが一軒の建物の前で足を止める。


「ここが女王の城だ」


「ここが?」


城って言われても、俺には何の変哲も無いただの平屋に見えるのだが。

最初にイメージしていた何十メートルもの威厳溢れる巨城が、砂のように崩れ去っていく。

崩れ去った後には、他の民家と大差無い貧相な外観の一階建ての城。

女王の威厳も何もあったもんじゃない。

ぶっちゃけ俺の実家よりショボいぞ。


どうしてこの町は、こんなにも退廃的なんだろう?

これが単なる夢幻でないのは流石に体感してるけど、

こうも荒れ果ててるとイマイチ盛り上がれないな。


俺はモヤモヤを抱えつつ、女王の城に踏み入った。

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