第4話 VSイセエビ
「俺が!?何をどうやって?」
「素手でもなんでも構わん!
体内の白い塊をを破壊しろ!」
「もう倒したじゃん!」
俺は真っ二つの巨大イセエビを指差した。
「すぐに再生する!」
「再生!?」
俺達が言い合っている間に、
巨大イセエビのそれぞれのから何本もの筋肉組織が伸び、互いを連結した。
もう、何なんだよ!?
「来るぞ!」
「知るか!」
「何!?」
俺は脊髄反射で叫んだ。
もうここが夢の中なのか死後の世界なのか全然分からないが、
切っても治るなら逃げるしかないだろう。
俺はずっと何かの上に座っていたが、ようやく立ち上がった。
そして巨大イセエビと反対方向に走る。
「どこへ行く!」
「逃げる!」
「ふざけぐわっ!」
フルメイルが言葉を中断して悲鳴を上げる。
ほら、逃げた方が良かったじゃん。
俺は走りながら振り向いてみた。
そして立ち止まった。
フルメイルを心配したんじゃなくて、俺がさっきまで座っていた物の正体を知ったからだ。
硬くて柔らかかったそれの正体は、人間の女性だった。
骨が硬くて脂肪が柔らかかったんだろう。
薄着で横たわる彼女の豊満な肉体や、
長い緑髪の隙間から覗く、
毛布のように全てを許して包み込んでくれそうな丸く愛らしい顔が、
俺の足をひと目で止めさせたんだ。
3文字にすると、惚れた。
俺があのバケモノを倒せるってんなら、この女性も救えるだろう。
逆に放置したら、彼女は食べられてしまうかも知れない。
勝算も有るし、どうせ現実でないのなら好きにやっちまおう。
「おい」
フルメイルは多少遠くへ吹き飛ばされていたが、起き上がって剣を拾っている。
「白い塊……どこ?」
「頭の方だ!
僕が頭をカチ割るから、あとは頼む!」
フルメイルが巨大イセエビに突撃した。
長い触角の横薙ぎを素早くしゃがんで回避し、
直後に跳躍して巨大イセエビの頭部に着地する。
バケモノと互角に渡り合っていたり、何メートルもジャンプしたりと、
とても非現実的な身体能力だ。
「はあっ!」
フルメイルが剣を両手で握り、垂直に巨大イセエビへ振り下ろした。
今度は縦に真っ二つとは行かなかったが、巨大イセエビの頭部が左右に裂ける。
「あれか!」
頭の先端辺りに、フルメイルが言った通りの白い塊が覗いている。
俺は右手を強く握り締め、巨大イセエビへ突撃した。
左右の触覚が、挟むように俺に迫る。
『ガキィン』
またこのガード音、俺の勝算だ。
最初に突撃された時もそうだったが、今の俺は何かに守られてるみたいだ。
巨大イセエビの触覚はそれぞれ外側に向かって弾かれ、
その勢いで頭部の切り傷が更に開いた。
俺は速度を落とさず突っ込む。
やや歪んだ球形の、白い塊が完全に露出している。
大きさはバスケットボール程度か。
これならやれるぞ。
「うおりゃああ!」
走る勢いを乗せ、体当たりにも近い俺のパンチが白い塊を直撃。
その瞬間、巨大イセエビは粉微塵になり、
そよ風に流されてパァっと辺りに飛び散ったかと思うと、
ひとかけらも残さず完全に消滅した。
「やったな!新たなアンチエージェントよ」
フルメイルが剣と盾を放り投げ、俺に近付いて来る。
「お前も沢山の疑問を抱えているだろうが、先にひとつ聞かせてくれ」
フルメイルは俺の返事を待たずに続けた。
「まさかとは思うが、お前……男なのか?」
あ、女装してましたねそういや。
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