15話 PPD-AG (テル)

 端末板のメール着信音が鳴った。


『じゃかじゃんじゃかじゃん、あ~♪ わたっし~のあ~いはぁ~♪』


 黒いビルの夜空に響く、ちょっと外れた歌声。 


「ちょ、スミ・スミレ? あんたそんなのが好きなのぉ?」


 長髪赤毛のロッテさんが片眉をあげる。こいつ歌がへたっぴじゃないさと、鼻をつんつん。


「ボカロのムジカちゃん聴きなさいよ。マシンボイスの最高峰」

「いやいや、生身の声ってのがいーんだよ。ってロッテさん、下界のアイドル知ってるんだ」

「下に出入りするようになって、まず覚えたのは芸能関係よぉ。いい歌多いわよね」

『オンチで悪かった』

「ちょ、ミッくん、だれもあんたを責めてなんてないじゃなぃ! あんたの子守り歌がオンチすぎるとか、ひとっことも!」

『ハイハイして近づき、目を輝かせて私の歌を聴いていた君は、あんなにかわいかったのに……』

「そうよあたしはもう大人なのよ。もう子守唄はいらないのっ」

『うう』


 長い赤毛が揺れる肩先に、銀鎧の金髪イケメン騎士が出ている。

 青白い機霊光を放つミッくんこと、ミケル・ラ・アンジェロだ。アホウドリ型機霊はただいま全開。ロッテさんは俺を抱えて、黒ビルジャングルの上を飛行中。


「だれからなの?」


 ロッテさんに抱っこされてる俺にさらに抱っこされてるハゲ猫プジが、きょろんと青い目を上向かせる。


「じっちゃん。弁当もったかぁ? だって」

「んもう。リュックに入れてるでしょ? 水筒もちゃんと入ってるわよ」

「おう。しかしあれが、タイガギルドの蒸気船? でっかー」


 黒ビルの上に悠然と浮かんでいる船を見すえ、俺はひゅうと口ぶえをふいた。

 でかい。実にでかい。メイ姉さんと海洋調査したときに遭遇した、まっくろ巨大クジラみたいだ。

 ぶしゅうぶしゅうと真っ白い蒸気が、その丸みを帯びた腹の部分から出ている。


「あそこのボスが、アムルを狙ってるって話よね?」

「うん。じっちゃんが、ドラゴギルドから奪えって命令してる通信を拾ってくれたんだ」


 アムルがさらわれて、もうまるまる三日になる。俺たちは手を尽くして、青銅翼の女と銀髪の少年の行方を探した。といっても、じっちゃんが地下工房に常備してる盗聴装置で、ギルドが飛ばす通信を傍受してくれたってのが、メイン作業だ。

 その間に俺は知り合いやつてに聞きこみするかたわら、ミッくんをいじってた。

 ロッテさんの依頼である機霊の性格変更は、実に強固なプロテクトがかかってて、いじれずじまい。仕方ないので性能面を、ざっくりてきとうにアップさせた。

 おかげでミッくんは、今はとっても楽そうに俺たちを運んでくれてる。

 ロッテさんが俺を抱えると、嫉妬して文句たらたらなのは変わんないけど。

 それにしても。


「アムルの円盤、PPD-AGだったんだなぁ…」  

「PPD? ああそれって、機霊を扱う関係者なら、誰もが知ってる公開コードよねぇ」


 ロッテさんが目の前にせまる蒸気船を見すえる。侵入口をさがしてるんだが、蒸気の煙が邪魔して胴体部がよく見えない。


島都市連合P永久保存指定P及び星域遺産指定物D……アルゲントラウムAG……天界下界へだてなく、全世界のだれもが知ってる、史上初の融合型機霊よね。まさかあの銀髪少女が、PPDの円盤持ちだったなんてねぇ。そういえば玉座にいた人形皇帝、たしかにあんなふうな顔だったわ」

「本人は女の子じゃないっていうんだよなぁ」

「自覚ないのねぇ」

「いや、ほんとについてんだよ」

「へ? ついてるって……え?! なにそれ」

「アルゲントラウムは融合型のプロトタイプだからかなぁと、いまちょっと思った。もしかしたら、男でもOKなんじゃないかって」

「ちょっとじゃあ、なに? 高祖マレイスニール帝は男だったとか? うっそでしょぉ?」

「うーん」


 ギルドが情報を出しまくってる裏板によると。ちょうど俺とプジがアムルをひろった直後ぐらいに、エルドラシア帝国軍が降下部隊に極秘命令を出したらしい。

 じっちゃんいわく、

『PPD-AGが、不慮の事故により帝都から大陸ユミルに墜落したそうじゃ。大陸拠点詰めの帝国の天使たちに、発見・回収命令が出とるぞ』

 

 墜落地点で拾ったときからもしかしてって予感はあったけど、アムルはやっぱりただの天使じゃなかった。

 エルドラシア帝国の、五十体目の人形皇帝。つまりマレイスニール帝の複製クローン体。

 ってことは、男か女かはさておいて、少なくともあいつは、俺たちのような・・・・・・・人間じゃない……。


「高祖マレイスニールって、いったい何体、人形を作ったんだろ?」

「一説によると千体以上? とにかくできるかぎりつくらせて、冷凍カプセルに入れて、王宮の地下に並べたって話よ」

「現時点の複製体が死んだら、カプセルをひとつ解凍する……」

「そう。そして背中に、先代から取り出した皇帝機アルゲントラウムを埋め込むってわけ。マレイスニールは自分が永遠に支配者たることを望んでそうしたわけだけど、まぁそんな遺志なんて、だれも尊重しないわよねぇ」

「だよなぁ。ずうっとおなじ顔の奴が王様ってやだよな。ふつう二、三代で飽きるぜ」


 顔が問題なんじゃなくてと、ロッテさんは肩をすくめた。


「帝国は大きいから、それなりにいろんな勢力も派閥もあるのよ。人形を本当に施政者としたのはまぁ、三代目ぐらいまでね。後は元老院が実権を握ってやりたい放題。代理騎士が帝政を牛耳った時代もあったみたいだし。まぁ、高祖帝の遺志でかなったのは、自分が永遠にアルゲントラウムと在るようにってことだけねぇ。それもアルゲントラウムがPPDに指定されたから、都合よくそうしたってだけのことよ」

「PPD指定を受けて、高祖帝の複製体は処分されずに、皇帝機の保存のために利用されることになった……」

「ええ、そうよ。元老院はマレイスニールのクローンに対して、都合のいい処分方法を思いついたってわけ。しっかし、連合のPPD保存指定は絶対のはずよ? なのに黄金円盤はめたまんまの人形皇帝が大陸に落っこちたとか、ほんとありえない事態だわよ」


 アムルは今、ギルドのやつらの格好の獲物になっている。

 天界の機密通信をかすめとったギルドの連中は、帝国にアムルを売って金儲けしようとしてる状況だ。


「不慮の事故で墜落って、ほんとに事故だったのかしら?」


 腕の中でプジが複雑なうなり声を出す。そこが俺も知りたいところだ。

 PPDってのは天界の島都市連合が定めたもんで、帝国が勝手にどうこうできるものじゃない。永久保存指定ってのはそのとおり、国際条約で保存することを義務づけられたもののこと。そうするための費用の大部分が、連合から出されてるって話だ。つまり、もし損なったり失いでもしたら、帝国にとっては大失態の一大事だ。

 そんな事態を防止するため、AGをはめられた保存用の器――人形皇帝は、帝都の王宮の奥深くで厳重に保護されてるってきいてる。

 そんな存在のアムルが、俺たちの住む下界に墜落したって……どういうことなんだ?

 帝国にとっては不祥事以外のなにものでもないはずなのに、なんかおかしい。

 帝国がだだ漏れ上等で機密通信を軍内に飛ばしてることといい、アムルの背中の怪我といい……「墜落」は、たんなる事故とはとうてい思えない。

 アムルはなにものかに襲われたんだ。

 つまり故意に、落とされた。真っ赤に汚れた大地に。

 いったいいま、天の帝国で何が起きてるんだ?!

 

『じゃかじゃんじゃかじゃん、あ~♪ わたっし~のあ~いはぁ~♪』


「あ、じっちゃんからまたメール」

 

 蒸気船の真下、腹の部分にミッくんがのぼりついたとき。じっちゃんから不穏な内容の情報が流れてきた。

   

『PPD‐AGの回収命令を出した御仁の肩書きがわかったぞ。第五十一代神聖エルドラシア皇帝陛下じゃ。本日、帝都フライアでその皇帝陛下がまたエルドラシア軍に対して公に勅命を出しとるようじゃ』


「第五十一代? 神聖エルドラシア? 皇帝? 陛下?」


 いまアルゲントラウムを体内保存しているアムルは、五十体目の人形皇帝。

 五十一代目って、ようするに五十一体目の人形のことだよな? つまりアムルの次に用意されてるやつってことだよな?

 アムルの背中にまだ円盤があるのに、もうすでに目覚めさせられて、「皇帝」を名乗ってるって……しかも、命令を出してるって……???


「はぁ? 神聖エルドラシアってなによぉ?」


 ロッテさんが首をかしげる。


「国名が微妙に変わってるってどういうわけ? 五十一体目の人形が、帝国軍に直接詔を出してるってどういうこと?」 

「人形皇帝自身が、命令してるって、これ……」

「本当にそうだとしたら、おだやかじゃないわねぇ。人形皇帝には、他の国の皇帝や王みたいな権限は、まったくないはずなのにぃ」

「あ、ロッテさん、前方十一時、三十ナノメートル。船の腹部が開いたわっ」


 きゅるんきゅるんとプジが青い目を動かす。蒸気を透過して見てるので、瞳の稼動音がはんぱない。


「了解! プジちゃんありがとっ」


 ロッテさんが蒸気の中につっこむ。と、目前に、船腹の一部ががっぱりと開いている光景があらわれた。ぶんぶん羽がうなる乗り物が数機、そこから飛び出していく。

 蜂みたいな機体を吐き出したそのタラップに、アホウドリサイズの機霊と俺たちは、音もなくさっとすべりこんだ。

 船内は飛翔機ブンブンでいっぱいだ。何十という機体がずらりと並んでる。船体底部は船倉兼ブンブンの発着場となっているらしく、かなりだだっ広い。天井も二階建ての家の高さぐらいある。 

 少なからず人がいるから、プジが一瞬、人工毛をさかだてた。 


「ねえ、あたしたちみつからない? 大丈夫?」

遮蔽結界ステルススケード張ってるから、目には見えないわよぉ。でも音は聞こえるから気をつけて」


 ロッテさんがひそひそ声で口に人差し指をたてる。

 アムルはこれから十中八九、ここの連中にさらわれる。だからあらかじめ蒸気船に潜入しておいて、ブンブンが獲物をここにもってきたときに華麗に奪還するって寸法だ。

 開いていたタラップ床が、ぶっしゅんぶっしゅん蒸気を吐き出しながらゆっくり閉じていく。

 それがぴったり床にはまったとき――


 

『じゃかじゃんじゃかじゃん、あ~♪ わたっし~のあ~いはぁ~♪』


「ひっ!」


 スミ・スミレちゃんのかわいらしい歌声が、声高らかに鳴り響いた。

 音響効果抜群の船倉の中に。 





 

「ごめん! ほんっとうにごめんー!」

 

 えっと……現在、船倉は混沌のるつぼです。俺のせいです。

 飛びかうレーザービーム。破裂して壁にとりつく、粘着性の黒いねばねば。

 

『あ~いは~♪ あ~いは~♪ とどか、なぁ~い~♪』


 歌い続けるスミレちゃん……。


『んもぉおおお! しんじらんない! ほんとしんじらんない!』

『ごめ! ほんとごめんんっ!』


 プジがあわてて俺の端末板に肉球をおしつけて音をとめた。はずだったんだけど。

 ぷにぷにの肉球は、俺の板にはでかすぎた。そんでもって、板は感度が良好すぎた。

 おかげで板のボリューム、いきなりマックスになったんだよな……(遠い目)。


『どこ押してんだぁプジー!』

『きゃああ、ごめんなさいごめんなさいー!』


 急いでマナーモードにしたけど遅かった。

 中にいるギルドの連中が反応するより先に、船倉に設置されてるセキュリティ・システムが火を噴いた。これ、機霊の遮蔽に対応機能のある、音源感知装置搭載の自動迎撃システムってやつだと思う。

 登録した声紋以外の音が発生したところを、正確に浄化する高性能なもん。

 結果、それがミッくんの青白い結界にぶちあたったもんだから……。


『遮蔽がとけた』

「ご、ごめんミッくん!」

『愚か者!』  

「ほんとすみませんっ! ひいっにらまないでっ」

「テル・シング! 侵入する前にマナーモードにしときなさいよ!」

「ひいい! ロッテさんごめんなさいいいっ!」


 赤毛の機貴人が俺とプジを抱えてその場から舞い上がる。直後俺たちがいたところにレーザービームの雨が降った。


「あのぉ、でも、音源感知装置があったんなら、どのみち見つかってたんじゃ」

「こんなに早くはバレないわよぉっ」


 ロッテさんがごっつんと俺の頭に顎ぱんちをくれた。 

 しっかし壁にはりついてるあの黒いねばねばってなんだ? はじめてみたぞ。アメーバタイプでぞわぞわ壁を走ってる。自走機能つき? いやいや、どこかで操作してる?

 動きがおもしろいんで見入りそうになったけど、今度はプジにほっぺたをぐりっとされた。

 おそいくる肉球の弾力が、なにげにたまらない。


「テル、あたしたちも展開ディストリクトした方が!」


 ずっと秘密にしておきたかったけど、もうやむをえないか?

 プジがロッテさんの腕から離れて背中にひっついてくる。うう、プジの正体をばらすのはいやだけど……仕方なく接合コマンドを唱えようとした、そのとき。


しろがねのシルヴァー息吹エイテムー!』


 ロッテさんの銀鎧イケメン騎士が、雄たけびをあげた。

 青銅級ブロンゾなのに白銀とはなんぞや? ってのはさておいて、まばゆい霊光が俺たちを包む。

 

しろがねのシルヴァーシュヴェールトー!』


 うずまく霊光から、光の筋が一本飛び出した。

 ロッテさんがその光の棒を剣のごとくに持って構える。


「な、なんかいつもより、おっきいわよぉおお?!」

「すげえ!」「きゃあ、まぶしいっ」


 ロッテさんが両腕を使ったんでその場に落とされたものの、俺とプジは壁についてるはしごに無事にとりついた。

 まばゆい光の剣が、そこかしこから飛んでくるレーザーをぶいんぶいんとはじきかえす。

 うわぁ、かっこいい。なんかのふっるい幻像でみたぞ、こんな戦闘シーン。

 その間にミッくんが片手を、迫り来る黒いねばねばに向ける。

 

しろがねのシルヴァー、』


 だからどうして白銀なんだと、突っ込む間などなく。


プファイルー!』

 

 とたんに無数の白光玉がミッくんの手から放たれて――じりじりぶじゅうと、アメーバ型兵器が焼け溶けた。


「すげえ! これ楽勝すぎ! 強え! ミッくん強えー!」

「テル、これどんだけ性能つけたしたの!」


 輝く剣を振り回すロッテさんが、目をむいて半ばうろたえてる。

 ど、どんだけって。核の部分に、逐電石を入れられるだけ入れただけなんすけど。

 

『はははは! 軽い! 体が軽いぞ!』


 ひええ、ミッくんが余裕の笑みをかましてる。ともあれロッテさんが応戦してくれてるすきに、俺とプジは逃げ道を探した。床へすとんと着地した目の前に、閉じた扉らしきものがある。その脇についてる丸いハンドルを必死に回すと、どこからともなくふしゅんという蒸気音がするとともに、扉が左右に開いた。


「通路だっ」

「せまそうね」

「逃げ込むにはうってつけ?」


 とりあえず飛び込んでみるか!


しろがねのシルヴァープファイルー!』


 結界膜からまたもや無数の光の矢をとばしながら、ロッテさんとミッくんが俺たちがすべりこんだところに退避してきた。幅が狭いので、とたんに翼が半分にたたまれる。ミッくんがどえらく渋顔だ。


『せますぎる……』

「おだまりっ。ミッくんがでかすぎんのよ」

『でもせますぎる……』


 アホウドリサイズの機霊が全展開できる室内って、なかなかないかもなぁ。

 翼が半分だと出力も半分になっちまうけど、今のミッくんならきっと大丈夫だっ。

 迎撃機械の反応から遅れること数分、ようやく人間さんたちがわたわたと動き始めている。

 開いたものは閉めないとってことで、俺は追っ手が扉に到達するまえに、ハンドルをまた必死でまわして扉を閉じた。とたん、ロッテさんが俺とプジを抱え、ぎゅんと滑るように飛ぶ。

 うわぁやっぱり。すごいスピードだよ!

 

「ちょっと速すぎー!」


 翼から噴出するジェット機光のおかげで、あっというまに通路のつきあたり。

 すげえ! セキュリティセンサーが反応する前に、通り抜けてるよ!

 ロッテさんは左右に分かれてる通路を、いそいで右に曲がって、翼からまたジェットをふかした。とにかく矢のように通り抜けて、船の警備体制にひっかからないようにする作戦らしい。


「いったん外に出られるといいけど」


 超高速で飛びながら、出口らしきものをきょろきょろ探してる。

 プジの目も、援護するためにしゅんしゅんせわしなく鳴りだした。

 そのときぶるるんと、俺の胸元で振動がした。さっきあわててマナーモードにした端末板だ。

 うううじっちゃん、ありがたいんだけど、ゲットした情報を実況生中継みたくコマ切れにつたえてこないでくれよぉ……

 頭抱えそうになりながらも、気になるのでサッと画面を見てみれば。

 そこにはどきっとするような内容のじっちゃんからのメールと、じっちゃんからじゃない人のメールが並んで表示されていた。


『メールが届いています:「じっちゃん」さんから:

 本日神聖エルドラシア帝国第五十一代皇帝陛下が、PPD‐AGを冷凍保存措置に移行することを発表。PPD指定を取り消す申請が、島都市連合で受諾されたそうじゃ』

 

『メールが届いています:「ハル兄」さんから:

 少女Aとデート中だ。地下遺跡BB24に来い』

 


 少女A? A……あー……まさかアムル?!


「ろ……ロッテさん! いますぐこっから退避して! ハル兄がアムルを助けてくれたっ!」

「そうできればいいんだけど?!」

  

 ハル兄さすがと心躍ったのもつかの間。

 

「テル・シング! 歯ぁくいしばって!」


 いきなり目の前からすさまじい衝撃がきた。


「ひいいいい!」


 ばりばりと鳴り響く、雷鳴音。

 

「ちょ……なにこれ!」

『む……巨大、だ』


 ロッテさんの肩先にうかぶミッくんが、顔をひきつらせている。

 目の前にたちはだかるなにかに、俺たちは勢いよく衝突したらしい。

 展開している青白い結界のまん前に、赤銅色の塊がそびえたってる。

 壁一面にはまっているようなそれには、ぎざぎざの鋭利な牙のようなものが全身についてる。

 プジの尻尾がぼわんとふくらんだ。


「じっ、蒸気人形よ!」

 

『侵入者。排除。シマス』


 巨大な障害物はぶしゅううううと、凄まじい蒸気を吐き出した。

 顔じゃないかと思われる、四角四面の物体から。 


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