第2話 年下に絡まれる聖斗
「さっき先生からもかかって来たけどさぁ、うまくいかなかった。なんせ相手が・・・」
聖斗は電話中である。同じゼミの仲間の女の子からの電話で携帯に着信が入っていた。
さきほどの面接のことについて、聞いてきたので答えていた。帰り途中の小さい公園のベンチに座っている。
「聖斗は運がないね。明後日卒業式なのに」
相手の女子は運がないとバッサリと言った。聖斗とはゼミが同じで、男友達の関係でそれ以上かもしれない雰囲気もあったりする。そして、明後日が卒業式なのだと心配していた。
「痛いこといってくれるなぁ 俺もこんなこと望んじゃいなかったんだけどな。お前はもう決まっているから、いいよな。お前どこに決まったって言ってたっけ?」
「えーーー、言ってないって。でも聖斗がきまったら教えてあげてもいいよ」
「教えてくれたっていいのになぁ」
女子は自分の就職先を秘密にしているようだ。聖斗は・・・
(もったいぶるなよな。でも聞いたら聞いたらでショックかも。)
「ねぇ、聖斗がんばりなよ。応援しているから。これからいろいろなことあったとしても」
「あまり落ち込んでないから大丈夫だ。お前の言う通りせいぜいがんばるさ。」
「なら、良かった」
聖斗は女子の言葉で励まされていた。しかし明後日には卒業式なのだという焦りをさらに感じてしまった。女子の方は聖斗の声と言葉を聞き、安心していた。
「じゃあ、切るよ」
「卒業式でな」
「あ、聖斗」
最後に女子は言い忘れていたかのように言った。
「待ってるよ」
聖斗が一言返そうというところで電話が切れた。
プゥープゥープゥープゥー・・・・・・。
「電話切るの早かったな。三十分もしてなかったみたいだ。通話代最近高いしな。」
「早く帰ろう」
聖斗は立ち上がり公園を出た。そして遠くから聖斗を見ている姿があった。聖斗はまだ気づかないでいた。
「おい、てめぇー。さっきの電車に乗ってた奴だろ」
聖斗は帰り途中に絡まれていた。絡んできたのは五人組で男子二人に女子三人で服装からして高校生のようだ。リーダーらしき女子高生が最初に絡んできた。聖斗と五人組は人がいない路地裏にいた。
「何?俺にようでもあんの。高校生だよな?」
「それがなんだよ。てめぇーにムカついてるわけ、今シメてやるから」
「早くやっちまおうぜ」
五人組のリーダーに続いて、つるんでいる男子も言い出した。この五人組は見た目が不良・ヤンキー、女子は茶髪でメイクが濃く、本格的なギャルである。一般人は普通なら近づきたくない雰囲気で聖斗はそれらに絡まれている。
「てめぇーはなぁー、さっき電車で寝てたよな。てめぇーのバイブ音がうるせぇーんだよ。マジストレス溜まったわ。落とし前つけてもらうからな。それから俺らだけじゃねぇー、他の連中もウザガッテたこともついでにいっとくわ」
それに聖斗以外のつるんでいる仲間達が納得している様子であった。そしてニヤツキ始めた。
「それは悪かった。謝るよ。でもお前らにシメラレルのは勘弁してほしいわ」
「それで、反省してるわけ?マジで絞めるよ。でもあたしたちに詫びを示すなら考えてあげる」
「ごめんなさい。気をつけます。さよなら」
「はぁー、そんなのはわかってんの、てめぇーの持ってんのあたしたちによこせ」
「ふん、そういうことか。それが目的で、俺をつけて来たのか。高校生が暴力沙汰起こしたらどうなるかわかってんだろ?」
「てめぇーが誰にもちくれないようにしてやるから覚悟しな」
聖斗は電車でスマホのバイブ音に気づかなかったことに難癖をつけられ、年下の高校生達に金品を渡すように脅されている。不良・ギャル達は渡さなければ、聖斗をリンチすると脅している。聖斗はいちよう謝ってみたが、通用してはいなかった。リーダーのギャルの後ろからいかにも不良な格好をした男子高校生が出てきた。
「もう、やっちゃっていいすか?体がうずうずしてんすよ」
「絞めちゃおうよー」
他のギャルの女子が言った。聖斗がぼこぼこにされているところを待ちきれないようだ。女子の顔は、メイクが濃く、ギラツイタ唇で聖斗を見て、ニヤニヤしている。
「お前らはきちがいだ。一人の俺を袋叩きにしようとするつもりだからな」
「渡すつもりは結局ないわけ」
「早く始めようよー」
2人のギャルが待つのが限界でいるようだ。
「渡せばいいのに。バカだよ」
リーダーのギャルは濃いメイクの顔をニヤツカセそして・・・
「お前たち。やりな」
不良達が聖斗にいきよいよく襲いかかってきた。
聖斗はまず一人の不良に蹴り飛ばされた。
蹴り飛ばされた聖斗を見て、ギャル達は高笑いした。ギャルの一人は
「キャハハハー、あたしたちに逆らうからよ」
「はやく痛めつけて」
もう一人のギャルがいった。リーダーのギャルも聖斗がやられているところを見つめた後、続けて笑い始めた。
「殺すんじゃないよ」
「もちろん」
不良の一人が返事をした。聖斗はやられた腹を押さえていた。もう一人の不良が続けて聖斗の両足を蹴りで崩しにきた。そして蹴りをくらい、地面に倒れてしまった。
「いてぇーなぁー。」(くらってみたが、そこそこ強いみたいだな。)
聖斗はあえて攻撃をくらってみたようだ。相手の強さをはかるためなのだろうか。
「お前は来ないのか?」
リーダーのギャルに聞いていた。聖斗はリーダーのギャルが何もしてこないことが気になった。
「お前がやられているところを楽しく見ているだけさ。そうでしょ?」
「・・・あぁ、そうだね」
他のギャルが代わりに答え、改めて聞かれたのでリーダーのギャルはそれに答えた。
「早くやられて、金よこせ」
不良がそういって、今度は顔面にパンチをくらわせようとしていた。聖斗は立ち上がるところである。
殴りかかるところをとっさに避けた。
「まぐれか。次はくらえよ。そいつを捕まえて押さえつけろ」
もう一人の男が聖斗を捕まえようとしている。ギャル達はクスクス笑っている。聖斗は・・・
「お前たち、こんなことが知れたら、ただじゃすまないぞ」
「うるせーよ。早くよこせ」
聖斗を捕まえる為、後ろに回り込み不良達で挟み撃ちにした。捕まえようとしたところで聖斗は反撃にでた。
「むちゃくちゃなことして、なめんなよ。お前ら」
聖斗の表情が鋭くなり、不良の一人に瞬間的に近づき、足で足を崩した。すると不良は地面に着き、膝を押さえ、痛がっている様子である。残りの四人はそれを見て、驚いていたがその後聖斗を睨みつけ始めている。
「てめぇー、よくもやってくれたな。逆らってんじゃねぇーよ」
「みんなで袋叩きにしちゃおうよー。アヤナさーん」
後輩のギャルが言った。
「アヤナ。油断してたわ。こいつ、今度こそ潰すわ」
「ほんと、お前ら怖いこと言ってんな」
聖斗は自分たちが何を口にしているのかわかってるかと聞いているのだ。ギャルと不良達はさらにイライラしているのが表情をみても明らかになっている。そして、アヤナ以外は聖斗を取り囲み始めた。聖斗の逃げ場は無くなっていった。リンチになろうとしている。アヤナは直ぐに取り囲みに参加せず後ろで聖斗の様子を見ていた。
「アヤナさんやりましょう。こいつが二度と逆らえないように調教しないと」
後輩のギャルがそれを言い、もう一人のギャルもうなずき、アヤナが来るのを待っていた。
「あんた達じゃ、またやられるかもしれないから。あたしがやるよ」
と言い、アヤナは前に出てきて取り囲みに混じった。
「次はお前が相手か。女だからって来るなら容赦出来ないぜ」
聖斗はギャル・不良達をさらに睨らみ、本気で戦う構えと覚悟を見せている。空気は段々と重たくなり始めていた。アヤナも聖斗を睨み、対抗していた。睨みと睨みがぶつかっていて、その場にいた他の不良達も内心動揺していた。
「おとなしく渡してくれれば、こんなことにならなかったのに」
さらに空気は重たくなっている。しかし聖斗はアヤナの睨みに飲み込まれることはなく、睨みを緩めることはなかった。周りの不良達はこのやり取りに立ち入ることが出来なかった。立ち入れば、自分たちが飲み込まれそうだと動物的予感を察知したからだろう。
さらに、アヤナは後ろの様子を見て、それを感じていた。今まで相手してきた連中はアヤナの睨みというか自分から出す圧力に耐えきれず降参していたが、今目の前にいる男は、違うと確信した。アヤナは強気で行く。
「あんた、早くアタシにひれふして、金目のもん渡しな。アタシにこれで勝てたやつは一人もいやしない。次はあんたを直接痛めつけてやるから」
「はぁああ。これ以上やるなら女の子でも容赦するわけにはいかねぇーぞ。こんなことばっかやってよぉー」
「うるさい。だまんな」
後ろにいるつ仲間達がいる手前もあり、アヤナはさらに強気に言ってみた。
・・・が、しかし
「なめんじゃねーーーーよ」
怒声で聖斗の睨み、圧力が一気に強くなった。まるで強い風が一瞬吹いたような感じだ。道に落ちている軽いもの吹き飛んだ。
さっきまでぶつかりあっていたものが、これによりアヤナの睨みを超えてしまった。
「アヤナどうした。いつもの調子でやっちゃってよ」
同級生のギャルに言われた。しかし、このままだと飲み込まれるかもしれないと場の空気で感じていた。
「お前こそなめんじゃないよー」
睨みの力を維持しつつ、聖斗を蹴り飛ばした。
聖斗は年下の女子高生に蹴り飛ばされてしまった。少し痛がっているところを見ると、ダメージを受けてしまっているようだ。人気がないところでやっているので聖斗と不良・ギャル達以外の人は気づいていなかった。辺りは睨みなるものの力で物などが散らかっていた。
アヤナの攻撃で倒れてしまった聖斗は起き上がった。そして・・・。
「年下の女子高生でもここまでされたらゆるせねぇ。お前、覚悟しろ」
「ここまではむかってくるのはお前が始めて」
聖斗の睨みが怒りでさらに増していき、蹴り飛ばしたアヤナも聖斗の「覚悟しろ」という言葉で自分もただではすまないだろうと緊張していた。
「女の子にこんなことしたくはなかったけど。これも自業自得」
聖斗はそれをいった後、拳を握りしめそれを見たアヤナは唾を飲み込んでいた。周りの不良ギャルはその場から距離を取り始めていた。最悪アヤナを置いて逃げるつもりかもしれない。
「お前のお友達、離れていってないか。本当に仲間か?」
「うるさい。だまれ。そんな挑発は通用しないよ」
アヤナは後ろを見なかった。そんなことはすでに感じとっていたからだ。後ろの不良・ギャル達のリアクションはこの時はなかった。
「さぁ、かかってきな」
「じゃあ、遠慮なくいくぜ」
そして、アヤナの上半身めがけて、拳を入れる寸前の所で聖斗側の後ろから突如・・・
「そこまでだよ。きみたち」
^「後ろから声がしたと思ったら、聖斗とアヤナの間に入って、聖斗の睨みの力を纏った拳を片手で止めた。
「そこの君、遠慮をした方がいいな」
「そこの女の子は強情だね。でも本当は君・・・まぁ、いいか」
そこにいたのは、三十代前半と思われる男性がいた。服装はスーツでジャケットは開いていて、ノーネクタイで、ワイシャツは第二ボタンまで開いている。こんな状況になり、聖斗とアヤナはびっくりもしていたが、今、気になっているのが目の前の男は何者なのだろうという共通認識を聖斗とアヤナは思っていた。
「あなたは・・・」
聖斗がまず口を開いた。アヤナは沈黙し、目の前の男を見つめていた。聖斗とアヤナの睨みは男の登場で飲み込まれている。
「俺は簡単に言えば、警察だよ」
「・・・」
アヤナはというと沈黙している。警察という言葉を聞いた瞬間まずいと感じていた。
「これ以上やるというなら、君たちを然るべき場所につれていかなくちゃならない。わかるよね?」
警察官と名乗る男は"然るべき場所"といっているが、それを聞いた二人はすぐに想像できた。出来ればお世話になりたくない場所。
そして、その場を覆っていた圧迫感といって良いものはすでに無くなっていた。
沈黙が続いている。警察官がいることに緊張していて、アヤナも時々警察官のお世話になることもあるが慣れているわけではない。その時は周りに不良・ギャルのグループがいたから、何とかなっていたが今回はいつもように行かずさらに警察官を名乗る男が現れイレギュラーの連発でグループの仲間が混乱しアヤナを置いて逃げてしまったからだ。
「それに君達の力は普通じゃないということを理解してくれ。もちろん俺も君達の力を止められたわけだから君達と同じということになるわけだが」
「ちょっとー」
アヤナが口を開いた。男と聖斗はアヤナの声を聞いて、アヤナの方に向いて次の言葉をまっている。聖斗はアヤナの先ほどまでとの雰囲気の違いに気づいた。そして、アヤナが聞きたいこともなぜか、何となくわかるような気がした。これも目の前の警察官を語る男の言う力に関係しているのだろうか?
「力って何ですか?これは何なんですか?あなたと同じって」
聖斗が先に口に出して聞いた。これは本来ならアヤナが言うセリフである。アヤナはそれに続けて聞く。
「本当に警察官ですか?普通じゃない」
(確かに普通じゃないよな)
聖斗もアヤナの聞いたことに同意している。
(それにこいつ、さっきとなんか変わってないか。あの連中にも置き去りされた感じだしな)
聖斗はそう思いながら、アヤナの方をみていた。アヤナと視線が一瞬合い、アヤナから逸らした。そんな二人を見ながら、警察を名乗る男は話を続けた。
「繰り返すが警察だ。もっと言えば警察の中でもジャンルは変わってくるがな」
「もしかして、公安ってやつですか?でも、なんでそんな人が俺たちに」
「公安があたしたちに関わる理由がわからない。いつもなら町の警官なのに」
聖斗は警察官がジャンルは変わってくると聞き、何となく思いついたのが"公安 "だった。それに続いてアヤナも公安だとしたらなぜ町のトラブルいや喧嘩に介入するのか不思議に感じていた。警察官を名乗る男はそれを聞いて・・・
「君の言う通り、俺は公安さ。君は感が鋭いな。もしかして力が関係しているこもしれないな。そっちの子も公安の俺がなぜこんなところにいるといったが、それはもちろん訳があるからだ。何もなければ、通常の対応で二人とも警察署行きのところだぞ。つまり、問題は君達だ。君達が中心なんだよ」
言われた二人は驚きの表情を出していた。
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