第21話 涙

雨…これは誰かの涙…?


信じてもらえなかった悲しみの涙…

誰も幸せにできない悔しさの涙…

思いが届かない切ない涙…

大切な人を悲しませた後悔の涙…



この雨が晴れる時はくるのでしょうか。




年が明け、世間では『おめでとうございます』と言葉が飛び交う。

4人は顔を合わせることはなかった。



冬休みが終わろうとしていた頃、真美の家にみどりとめぐが来ていた。

「どーした?LINEで『わからなくなった…』来てから全然連絡取れないから心配でめぐときたよ…」


真美の目は赤かった。何日泣いたのだろう。

圭人との出来事を一部だけ話した。

ただ、佑介と兄弟だという事、母のことは圭人の為に隠した。


み「真美が平くんを好きだと思ってて、同情で一緒にいるって?真美のことわかってないね」

め「でも、なんで急にそんな事言い出したの?いつも穏やかそうなのに…」


「なんか、辛いことがあったみたいで、当たりたかったのかも…。圭くんって感情的になると心の中で溜まってるものが出て来ちゃうみたい…」

屋上の時もそうだった…。人が変わったみたいに。

『心の中に思ってた事が出てきた…。』

だから、それを我慢してたんだと思ったら余計に辛かった。


め「真美はどうしたいの?好きなら圭人の所に行ってあげなよ。きっと後悔してる。でも、一生そう思われて過ごすことになるかもしれないよ」

ま「圭くんの心の闇は結構深かったのに、気づいてあげられなかった私が悪い。それに、佑介のこと考えてたのは事実なの。2年の時、たしかに佑介のことずっと見てた…。でも今は圭くんのことホントに好きなのに、わからない…。思い込んでるだけで、本当は心の奥に佑介がいるのかもしれない…。もう、わからないよ…」

うずくまり泣き出す真美。


み「でも、平くんはもう婚約者がいるんでしょ?どの道平くんとは付き合えないよ…」

ま「わかってる…」



何も解決しないまま冬休みがあけた。



——教室行きたくないなぁ。イヤでも圭くんと会っちゃうし。今日サボろうかなぁ。


ホームルームギリギリの時間まで寮の玄関でウロウロしていた。


「何してんだ?おまえ…」

後ろから声をかけられ、振り向くと佑介がいた…。


「佑介…。いや、寝坊しちゃってさ…」

——なんか、気まずい…。


「なんかあったの?おまえ、嘘下手。」

——見抜かれてる…。でも、佑介もなんかあったのかな…。元気なさそう。


「佑介もなんかあったんでしょ…。元気ない」

微妙な距離を保ちながら話す2人。


「なんとなく行く気しなかっただけ」

佑介はずっと真顔だった。

ふと、なにかを思ったのか真美に近づき手を取り歩き出す。


「ちょ、どこ行くの?そっち学校じゃないけど!」

「サボる。どっか行くぞ!」

だんだん小走りになり、そして走りだす。

「え!?マジでサボるの?」

佑介に手を引かれ戸惑いながらも一緒に走る真美。



その頃、圭人は教室に真美がいないことにショックを受けていた。


——やっぱり来ないですよね。でも、僕もどんな顔して会えばいいかわからなかったな。





バスに乗り込む2人。

「ねー、絶対補導されるって!寮ならまだしも、学校の外は危険でしょ!」

焦る真美。

「ま、着替えれば大丈夫だろ」

冷静な佑介。

「き、着替え持ってないし!!」


バスを降りた2人が向かったのはの少しお高めのアパレルショップ。

「ジ、ジルスチュアート?何しにここへ?」

ビビる真美。

高校生には無縁に近いショップへ普通に入って行く佑介。


「好きなの選べ!買ってやる!」

「え?なんで?買ってもらう筋合いは…」

と、言いながらかわいいお洋服達に見とれる真美。


「すみません?こいつに似合う服全身コーディネートしてもらえます?」

店員に声をかける佑介。


「はい。かしこまりましたー」


——え、ちょっと。どうしよ。制服のままじゃダメだから、着替えに買ってくれるんだと思うけど、もっと安い店あるだろ!!

これだから金持ちは!

若干腹立たしくなってきたので、買わせてやろうと思い始めた悪い顔の真美さん。


「こちらなんかお似合いになると思います」といいながら次々アイテムをもってくる。


「かわいいー!こっちもかわいいですね!」

佑介をほったらかし、買い物を楽しむ真美。


ワンピース 3万円

パンプス 3万円

コート 6万円

トップス 2万円

バッグ 2万5000円

その為小物 1万円


合計175000円になります。


——げ!!高!調子乗りすぎた…。

恐る恐る佑介を見る。

「カードで!すぐ着るので試着室借りていいですか?」

普通に払ってる人。


「着替えてこいよ」

と普通に渡してくる人。

「あ、はい。ありがとうございます」

サササーと試着室に入る。

——なんか、今日の佑介あっさりしてんだよなぁ…。


試着室を出る真美。

「どう?似合ってる?」

私服で会うことないから緊張する…。ノーメイクは見られてますけど…。


「いいんじゃん?女子大生に見えなくはない!行くぞ。次はオレの番」

フィッとすぐに外を向き歩きだす。


「え、反応薄!!待ってよー!」

後を追って店を出る。


ありがとうございましたぁ。


「ねー。なんか今日あっさりしすぎじゃない??」

佑介の腕を掴み、顔を覗き込む。

ドキッ。

顔を真っ赤にしてる佑介。つられて赤くなる真美。


「行くぞ。」

恥ずかしいのを隠し、真美の手を引き歩きだす。


——なんで、赤くなってんの。意識しちゃうじゃん…。

……こういう事なのかな。圭くんが言ってた事って。無意識に佑介を意識してたのかも。


なんだかんだ考え事をしていた真美。

「おい!行くぞ!」

いつのまにか、高そうなお店の中で着替えた佑介がいた。

「あ、ごめんごめん。てか、もう買ったの?早!」

「お前がボケーっとしてるうちに買って着替えたわ!」

真美の頭を軽くコツンとした。

「今日は何も考えるな!そのためにサボってんだから。行くぞ!」


「うん。わかった」




それから、遊園地に行った。ジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷に入ったり、なんも考えずにただ楽しんだ。夕方には少しスッキリした気分になってた。


観覧車の中から夕日を見る2人。

「日が沈むの早いね…」

切なそうに外を眺めてる真美。

「このまま、時が止まればいいのにな…」

静かに佑介が言った。


ズキン。胸が痛んだ。なんて返せばいいかわからなかった。

「オレ、冬休みが明けたら婚約届け提出するって親に言ってあって、今日桃華と行く予定だった。でも、お前があんな所にいるから連れ出したくなった。付き合わせて悪かったな…」


「私も、出す予定だったんだけど、ケンカしちゃって…。今日行きたくなかったの。同じクラスだし、顔合わせずらくてさ。連れ出してくれてよかったよ…。こんな高い服まで買ってもらってさ!お金持ちは違うわ!」

照れ隠しで皮肉を言った。


「親のカードだから気にするな。もう後継ぎになったんだ。好きに使わせて貰おうとおもってね」冷めた目をした。

「親が働いたお金無駄遣いするなよ!返す!返す!先に言ってよ!多額のお小遣いをもらってるのかと思ったし…」

怒ってる真美。


「あはははは!お前やっぱり面白いな。そんな事言うヤツあんまりいないと思うわ。1年の時からバイトして貯めた金だよ。いつか大事な人にプレゼントする為に貯めたお金だから安心しろ」


ズキン。さっきから胸が痛む。

「だったら、婚約者に買ってあげればいいのに。てか、なんでバイトなんかするの?」


「親の金に頼りたくなかったから。微妙に反抗。母親はなんだかんだ世話焼いて買ってきたり、送ってきたりしたけど。オレは親父を許せない。平家なんか継ぐ気もなかった。でも、これがオレの運命だったみたいだな。

桃華は何でも欲しいものは手に入るし、オレが買ってやる必要もないだろ…」

ハッ。

真美の顔を見た佑介。

夕日に染まった顔には涙が溢れていた。

「なんで泣いてんだよ!どうした?」


——なんで2人とも…家族の話をする時そんな悲しい顔するの。圭くんも佑介も幸せな時はなかったの…?


もうすぐ観覧車が一周する。

なにも言えず泣いている真美を見ていた佑介。

「もう一回いいですか?」

係員に言った。なんとなく悟ったのかOKをしてくれた。


また観覧車が上に登り出す。


真美がゆっくりと声を出す。

「圭くんも佑介も愛されないで育ったの?幸せじゃなかったの?」

佑介は少し黙り込み話しだす。

「父親が最低なヤツでも、オレは母には愛されて育った。だから幸せだったよ。オレ達の事に巻き込んで悪かったな。お前がオレに出会わなければ、圭人と付き合うことも、こんなに傷つく事もなかったよな…。

アイツは愛されて育ってない。だから愛し方がわからないんだ。きっかけはオレの女だと思って近づいただけかもしれない。でもあの日、お前が好きだってわかっただろ?大事、誰にも渡したくない。って言ったあの顔見れば本気だってわかったはずだろ」

また、悲しげな笑みを浮かべた。


「なんで、そんな顔するの?そんな顔するから佑介のこと気になっちゃうんだよ!

圭くんにも、本当は佑介のことが好き、僕とは同情で一緒にいるんだろって言われた。

私は2年の時から、佑介の本当の笑顔が見たかった…。でも、一緒の部屋になって、佑介の笑顔をたくさん見れて安心してた。だから、圭くんと出会って今度は圭くんを笑顔にしたいと思ったの。圭くんに優しい言葉をかけられて、ドキドキして、気づいたら好きになってた。屋上での話、ショックだったけど、それでも圭くんを好きな気持ちは変わらなかった。でも、佑介がそんな顔するから、佑介の事考えちゃうんだよ。私のせい…。このままだと、圭くんも佑介も傷つける。私…もうどうしたらいいかわからない。一年前に戻りたい…」涙を流す。


「真美。今日で最後だ。オレ達が会話するのも、目を合わせるのも。だからお前に最後にプレゼントしたんだ。オレは明日、桃華と届けを出す。だからお前は本当に好きなやつと幸せになれ。オレの事は気にするな。桃華はオレの事好きでいてくれる。母さんもいる。幸せになるよ…。だから、最後に今日だけ彼女になってくれないか?そしたら今日でお前を忘れる。お前を知らなかった頃に戻るよ」

真美のとなりに座る佑介。


「わかった…。私も圭くんに信じてもらえるように、明日からはもう佑介の事考えない。だから佑介…。笑顔でいて。寂しそうな顔はしないで…」

寂しさをこらえ笑顔を無理して作った。



それからイルミネーションを見たり、食事をしたり、本当のカップルみたいに笑顔で過ごした。


寮への帰りは、1つ前のバス停で降りた。

手を繋ぎ無言でゆっくりと歩く。もう少しで寮に着く。


時間は9時半。今週は門限のゆるい週。

でも、あと30分。


佑介が急に声を出す。

「真美。付き合ってくれてありがとな。去年お前のこと窓から見てたら、少し心が軽くなったんだ。忘れられない女がいてさ。でも、好きで忘れられなかったんじゃなくて、裏切られたショックを引きずってただけだったんだ。お前見てたらわかった。あの時から面白いやつだと思ってたよ。まさか、そいつが一番に部屋に来るとは思わなかった」


「え?見てたの?何回か目が合ったなぁと思ったけど。私もたまに佑介が寂しそうな顔をするのが気になって見てたよ…。まさか留年してるとは思わなかったけど。でも、最初は見た目に反してやな奴だと思ったけど!でも、実際はいいヤツだった。友達にもなれたし…。佑介のおかげで少し人見知り克服出来た気がするし。ありがとう」

恥ずかしそうに笑顔を見せる。


歩いてるうちにもう寮の前。


「もう寮だね。そろそろ門限の時間だし、ここで…んっ…」

真美を抱き寄せキスをした佑介。


「じゃーな。真美。先に行け」

「サヨナラ…」

歩き出す真美。涙が流れる。


真美が寮に入っていくのを見送る佑介。

壁に寄りかかり、空を見上げだ。涙がながれないように…。



ポツン、ポツン。

雨が降ってきた…。これは誰かの涙…。































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