第19話 好きって?
教室に戻る圭人。
真美の姿がないことに気づく。
嫌な予感が胸をよぎる。
となりの席のめぐに思い切って尋ねる。
「あ、あのー。真美さんは…?」
「え、なんか、用事あるから先に教室行っててって言われたきり戻って来ないんだけど。てっきり一緒かと思った!どこいったんだろー」心配そうにするめぐ。
キーンコーンカーンコーン
先生
授業始めます。この前出した課題出すように。
先生が来てしまい圭人は仕方なく授業をうける。
その頃屋上では…
膝を抱え、顔を伏せて泣いている真美。
なんて声をかけたらいいかわかない佑介。
そのまま時間だけが過ぎて行く…。
だが、1時間目が終わったら、真美がいないことに気づいた圭人が来てしまうかもしれないと思い、思い切って真美を連れ出す。
「ちょ、ちょっと来い!」
真美の顔を見ずに手を引っぱり走り出す。
真美は何も言わずについて行く。
佑介は自分の部屋に連れてきた。
そこで真美の顔を見た。
目を真っ赤にして今にも消えそうなくらいに儚く見えた。
真美の存在を確かめるかのように佑介は強く真美を抱きしめた…。
「オレは、お前のこと本気で…」
…好きだ…と言いかけた…グッと言葉にするのをこらえ、より一層強く抱きしめた。
『彼女まで奪うな』そんな圭人の言葉が頭をよぎったからだ。
真美は佑介の腕の中でずっと泣いていた。佑介の制服に涙が染み込むくらいに…。
少し落ち着いてきた真美。バッと佑介から離れる。
「佑介…私…誰を信じていいかわからない。
佑介だって…私を…。圭くんも…。たしかに、好きだって言われた事なかった。目が好き。目のことだけだった…。私、やっぱり好きな人とはうまく…いか…な…」 また涙が出てくる…。そして部屋を出て行こうとする。
グッと真美の手を掴んだ。
「待て!オレはあの時の気持ちに嘘はなかった。からかったわけじゃない!信じてくれ。お前が野木を好きな事に気づいてた…。だからすぐ身を引いただけだ。」
嘘をついた。本当の事を話したら真美がもっと傷つくから。
「1人にさせて…」佑介を見ずに言った。
「オレ達親友だろ!1人にはさせない。絶対余計なこと考えるから!そばにいる!」少し声を張った佑介。
佑介を見る真美。
——それ…前に佑介に言ったこと…。
「覚えてたの…?」
「あの言葉うれしかった。俺にとって女の親友なんかできたの初めてだったからな。お前の気持ち考えずにキスなんかして悪かった…。もう一度友達になってくれないか?」
優しい声。
少し考え込んだ真美。ゆっくりとうなずく。
「昼休みになったら、あいつがここに来るはずだ。試して見ないか?あいつが本当にお前の事をどう思ってるか」
その頃圭人
休み時間屋上を探したが佑介も真美もいなかった…。
そして、休み時間の度に真美を探しては授業を受けていた。
め「ねー。真美のLINE既読にならないんだけど、あんたは?」めぐがコソコソ声で圭人に聞く。
け「僕もです…」
さっき特進クラスを除いた時佑介がいない事も確認した。2人は絶対一緒にいる。そう思うと気が気じゃない圭人。授業の内容が入ってこない。
め「あんた、影薄いんだから授業なんか受けてなくてもバレないって!探しに行けば?」
圭「僕にそんな度胸ありません…」
め「…」呆れ顔をするめぐ。
そして昼休みになった。
バッと急いで立ち上がり特進クラスへ走りだす圭人。
「斎藤桃華よんでくれ」女子に声をかける
「あ、はい❤︎」
——な、なにこのイケメン❤︎こんなイケメンいたっけ?
「桃華ちゃーん!呼んでるよー!」
桃華やクラスの人が達が圭人に注目する。
桃「だ、だれ?」といいながも歩いてくる。
え、誰?
すごいイケメン❤︎
何組の人ー?桃華ちゃんモテモテー!いいなー❤︎
桃華様には平くんがいるだろー。
え、でも平くんに勝るとも劣らないイケメンだよ!
クラスがざわざわする。
そこにいたのは、メガネをとり、前髪からオールバックで1つに結んだヤンチャ系イケメンに変身した圭人がいたのだ。
(普通の姿だと、誰にも気づいてもらえないので強硬手段)
そして、桃華が来るや否や手をとり無言で走り出す。
桃華はイケメンに手を繋がれて顔が赤くなる。
——だ、誰なの?もしかして告白?わたしには平くんがいるのに。略奪?男らしいですわ❤︎
1人で妄想する桃華さん。
寮へと入った瞬間、だれもいない事を確認する圭人。
恥ずかしそうにしてる桃華。
「お前、平佑介の部屋の番号知ってるだろ!教えろ!」完全にヤンチャキャラ化してる圭人。
「え?告白じゃないの?」キョトーン。
「はぁ?だれが告白なんかするかよ!早く教えろ!深瀬真美と一緒だぞ」
急に顔が強ばる桃華。
「105ですわ。わたしも行きますわ」
走りだす2人。
ビーッビーとインターホンを鳴らす。
全然応答がない。
ドンドンドンとドアを叩く!
「いるんだろ!開けろ!」圭人が叫ぶ。
しばらくすると、ガチャとドアが開く。
そこにはボクサーパンツ姿の佑介が立っていた。
「なに?取り込み中なんだけど」冷めた顔で圭人を見る。
ゾッとした。
——まさか…。
急いで佑介を押しのけ中に入る。
ベッドの上に座り、布団で体を隠し素足を晒した真美がいた…。
カァッとなった圭人。佑介に殴りかかる。
ボゴッと鈍い音がなる。
「どーゆうつもりだよ!僕の女だぞ。何、手だしてんだよ!奪うなって言っただろ!」
胸ぐらを掴む。
「好きじゃないんだろ?なら構わないだろ。
それとも、オレだから嫌か?別の男なら許せたのか?」あおるように言った。
クッと言葉を詰まらせる圭人。
あまりの苛立ちで桃華は震えていた。
そして真美の元へ歩く。
バシッと平手打ちをした。
「あなた!彼はわたしの婚約者よ!こんなことしてただで済むと思ってるの?」
また手を上げようとしている桃華を見た圭人は佑介を押し倒し、桃華の方へ行った。
グッと桃華の手を抑えた。
「ちょっと離して!もう一度、いえ、何度殴っても気が済みませんわ!あなた退学よ!」
暴れる桃華。
「真美さんには手を出すな!!真美さんに手を出すヤツはたとえ誰でも許さない!お前でも、他の誰でもだ!僕はずっと大事にしてきたんだ!誰にも渡さない!」
怖い顔をして、佑介と桃華を見る圭人。
「…だってよ。真美…」優しい声と、顔で真美を見る佑介。
「圭くん…」布団をおろす真美。
制服を着たまま。靴下を脱いだだけだった。
ビックリしてる圭人と桃華。
ホッとしたのか、ペタンと座り込む桃華。
圭人は真美を抱きしめる。
強く強く。
「真美さん…。屋上での事聞いてたんですか?」抱きしめたまま圭人が言う。
うなずく真美。
ゆっくりと真美を見つめる圭人。
「すみません。でも、僕の本性を知っても好きでいてくれますか?僕は好きという感情がわからないんです。だから真美さんを好きだと思ったことはありません。でも、そばにいたい!幸せにしたい!だれにも渡したくない!それは本当です…。信じてください…」真美の肩を掴み下を向く。震えてるのが真美に伝わる。
圭人の手を握り
「信じるよ…」と静かに答えた。
佑介を見た真美。優しい笑顔を向ける。
——ありがとう。佑介…。
佑介は自分の胸の痛みを隠し、笑顔を見せた。
その様子を黙って見ていた桃華は、2人にこんなにも愛される真美が、憎くも羨ましかった。
——私の何がダメなの?なんで、この子ばっかり愛されるの…?
そして、真美と圭人は出て行った。
「…その髪型どうしたの?」
少しぎこちなく話す2人
「真美さんのこと探すのに、普段のままだと誰も話聞いてくれないので…。素顔を見せてしまいました。誰も僕だとは気付いていませんでした…」メガネをかけ髪をほどく。
「なんで、素顔見せないの?」
「嫌いなんです。この顔…」
「そっか…キレイな顔なのにもったいないなぁ。まぁ、でも圭くんがモテちゃうのは困るかな…」
佑介の部屋
イスに座り手で顔を覆う。
ずっと胸の痛みが消えない…。
叶わない想いの辛さが自分でもわかってる桃華。
かける言葉が見つからなかった。
——あの時、本当に助けたのはあなた。なぜ言わなかったの?そんなに苦しいのなら…。
でも…私も…あなたを誰にも渡したくない…。
あの時、助けたのが佑介だったら真美はどちらを選んだのだろう…。
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