第18話 恋の行方
圭人の部屋
「…真美さん?ここ1週間元気なかったですね…。もしかして、平くんの婚約の件…ですか?」真美の様子を伺う圭人。
「婚約するのに、なんで好きなんて言ったんだろ。私のことからかってたのかな…。まぁ、佑介はいつも私の事からかうけどね。
でも、あんな嘘つくようなヤツじゃないって思ってた…」膝を抱えて座り顔を埋める。
「真美さんは平くんが好きなのですか?」
辛そうな声だった。
ガバッと顔を上げた真美。
「好きじゃない!ただ…私は勝手に親友だと思ってたから、裏切られたのが辛いだけ…。もう、友達に嫌われたくなかった…。だから誰とも仲良くならずに静かに過ごしてきたのに。こんな思いはもうイヤだよ…」
涙をこらえる。
バッと駆け寄り真美を抱きしめる。
「僕は裏切りません。絶対に!真美さんのそばにいます。泣かせたりしません。だから、僕だけのものになってください…」
——圭くん…。信じてもいいよね…。
「私、圭くんと付き合いたい。圭くんが好き」ギュッと抱きしめ返す。
「ホントに?」さらに強く抱きしめる圭人。
「ホントだよ…」
「夢みたいだ…。真美さんがぼくを好きになってくれるなんて…」
「ずっとそばにいてね」
幸せそうな表情をする2人。しばらく抱きしめ合った。
佑介の部屋
「ねえ!ねえ!聞いてるの?婚約したのに、口を聞かないなんてありえます??」
プンプンしながら佑介に向かって話す。
「…」無言で勉強をしてる佑介。
全然、話をしてくれない佑介に苛立ちを隠せない桃華。顔を真っ赤にした。
「あの女のどこがいいの?私の方が頭もいいし、スタイルも、顔も、家柄も全て上ですわ!何が不満なの?私と婚約したい男なんていくらでもいるのよ!それなのに…。
あんな女すぐ潰せるのよ!それでもいいの?」
ガタッ。椅子から降り桃華の方へ来る。
「ベラベラうるせーんだよ。お前が婚約しろっていうからしてやったんだ。だから平財閥と手を組めるんだろ?ありがたいと思え。
オレはお前みたいな自信過剰なヤツが一番キライなんだよ。それと、あいつはお前なんかが手に負えるヤツじゃねー」
ものすごい威圧感に固まる桃華。何も言えない。
「学校だけでは婚約者として振舞ってやる。
オレのイメージが崩れるからな。それ以外ではお前とは口も聞きかねーし、お前に触れる事もねー。オレは床で寝る。一緒に寝るのなんかごめんだ」冷たい眼差しで桃華を見下ろし、また机に向かい勉強を始めた佑介。
——やっと、手に入れたのに…。
今まで感じた事のない痛みが桃華の胸を締め付けていた。
翌日
〜学校〜
み「うそー!!マジで?付き合う事になったの??おめでとう」めっちゃはしゃいでる。
ま「あ、どーも」相変わらずクールな真美。
み「何、クールぶってんのよ!ホントは嬉しくてキャピキャピしたいくせに!」
ま「あなたみたいにキャピキャピするヤツそーいないから。てか、私がキャピってたら気持ち悪がられるだろ!」キレてる。
み「えー、いーじゃんたまにわぁ!」
め「付き合ったのはめでたいけど、学校ではあんまり話さないよねー。恥ずかしいの??
てか、なんであんな影薄い系と?同じクラスだったの知らなかったよ!!」←席隣だろ。
ま「いい人なの!頭もいいし、優しいし!私の事すごく考えてくれてるし」少し顔を赤らめる。
め「のろけちゃってー!まぁ、真美が幸せならそれでいいけどね!」
み「それ、私が言いたかったやつー!」
あははは!3人の笑い声が響きわたった。
そうして月日が流れ
真美と圭人は休みの日や寮で愛を育み、
佑介と桃華は学校でだけ婚約者を演じた。
二学期の期末テストがおわり、結果が張り出される。
1位 野木 圭人
2位 平 佑介
3位 田中 芳樹 ←特に関係ないヤツ
:
6位 竹内 大輝
:
8位 斎藤 桃華 (女子3位)
:
:
:
21位 深瀬 真美
:
38位 二宮 めぐ
:
:
:
98位 大山 みどり
え、平くん2位だよー。
1位の野木って誰ー??
桃華様も8位に落ちてるー。
いろんな声が飛び交う。
——圭くん1位だ。すごい!私も圭くんと頑張った甲斐があった!よかったぁ。
でも、佑介…。珍しいな…。いや、圭くんが頑張ったからだ!
特進クラス
佑介は毎回1位なので、あえて見に行かない。
「平くん今回2位だったね。1位の野木くんってどこのクラスなんだろー。いくらでも特進入れたろうに」特進の1人が佑介に話す。
——野木?
何かを感じて、掲示板へと急に走り出す。
掲示板を見る佑介。
——野木圭人??まさか…
『圭くん大丈夫?』
『私、圭くんと付き合うね…』
真美の言葉が頭をよぎる。
あいつか…。
2組に走り出す。
キャー平くんよー!
2組に何の用かなー?
「野木圭人いる?」近くの人に訪ねる。
「野木??あー、あの人かなメガネの」
自信なさげに答える。
「野木くーん?呼んでるよー!」入り口から叫んだ。
圭人は無言で立ち、そのまま佑介のもとへ来た。
佑介は真美が教室にいない事を確認して、圭人を連れ出す。
人混みの向こうに圭人が見えた。その奥に佑介も…。なんか、嫌な予感がした。
「めぐ、先に教室行ってて!ちょっと行ってくる!」急ぎ足で後を追った。
〜屋上〜
カチャ。誰もいない事を確認してメガネを外す。
「なんですが、急にこんな所に連れてきて。
もしかして、1位奪われたこと気にしてます?」薄ら笑いを浮かべる圭人。
「そんなことどうでもいい。お前何企んでやがる」怖い顔をする佑介。
「何も企んでませんよ。僕はただ、あなたの存在が邪魔だっただけです」
——たしか、屋上の方行った気が…。
階段を上る真美。なんだか話し声が聞こえる。
ゆ「お前、桃華と共謀してるだろ?なにが助けただよ!そんで、わざと俺に見せたんだろ」
け「共謀なんかしてませんよ。僕はあの2人が話してるのを聞いて計画を知っていたんです。それで、提案をしただけです。真美さんに手を出さなければ、あなたを手に入れられるようにしてやるってね」
真美がそろーっと屋上のドアを開ける。
—— あ、いた。なに話してるのかな…。もう少し近くに行きたい。
塔屋の裏からそろーりそろーり近づく。
ゆ「お前真美の事本気なんだよな?」
——な、なに聞いてんのよ!佑介!
隠れて赤くなる真美。
け「本気ですよ。あなたからせっかく奪ったんですから、逃したらまたあなたの方に行ってしまいますからね。でも、もう婚約してるんですから関係ないですね」クスクス笑う。
バッ!圭人の胸ぐらを掴む。
「お前、野木って言ったよな?あいつの弟か?姉弟そろっていい性格してんじゃねーか」
今にも殴りそうな佑介。
「やっと気づきました?そうですよ。あなたが忘れられなかった人とあなたの父親は一緒。血が繋がってるんですよ。どうですか?姉に恋していた気分は」笑いをこらえきれない。
——あそこにいるのは圭くんなの?
ホントに圭くん?兄弟って何?圭くんはあんな話し方しない…。
ボカッと圭人を殴った佑介。
「俺がお前らになんかしたか?なんかのゲームか?なんで、お前らにそんなことされなきゃなんねーんだよ!」興奮しながら大声を出す。
圭人も急に声を荒げる。
「あんたが何も知らずにのうのうと生きてるのが気に食わなかったんだよ!俺たちが愛人の子供としてどんな思いで生きてきたかわかるか?愛人の子。父親がいない子。そういう目でずっと見られてきたんだよ!あんたの父親は俺が産まれてからは俺たちにも母さんにも会いに来なかった。金だけ振り込まれてさ。金には困らなかったよ。だけど、母さんはあんたの父親が好きだった。その寂しさを埋めるためにホストにはまりホスト狂いになっていった。俺たち愛されて育ってないんだよ。だからこんな歪んだ性格になったんだ。そんなことも知らずに幸せに暮らしてるあんたが憎らしくてたまらなかったよ。
だから、わざと姉さんが近づいて惚れさせて捨てた。あんたのことなんか好きでもなんでもなかったわけ。
オレもあんたが珍しく女と仲良くしてるからその子に近づいて奪った」
ゆ「近づいたってなんだよ。オレを不幸にさせたいなら他人を巻き込むことねーだろ。お前、ホントにあいつのこと好きなのか?」
また胸ぐらを掴む。
け「好き?そんなこと思ったことはないです。彼女が僕を想ってくれさえいればそれでいいです。その方があなたは苦しいですからね。
僕は平財閥も父親も手に入らない。僕から彼女まで奪わないでくださいね…」
バッと佑介の手を振り払う。
「オレは平財閥なんかいらなかった」
「恵まれた環境の中で育った人が何言ってるんですか?わがままですね。僕はあなたもあなたの父親も超えてみせます。授業が始まりますので、もう話すことがないのなら僕は失礼します」
メガネをかけ、去っていく圭人。
何も言えず立ちつくす佑介。
涙を流しながら動くことができない真美。
しばらく2人は屋上にいた。
佑介が塔屋にむかって歩き出す。
グスッと鼻をすする音が聞こえた。慌てて裏に行くとそこに目を真っ赤にした真美がいた
。
「お前、いつからそこにいた…」
やるせない気持ちが込み上げ顔を手で覆う。真美をまた傷つけた。
どうすればいいのかわからない佑介だった。
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