第5話 真美とみどり

〜3組〜

ねーみどりちゃんってさ前から思ってたんだけど、ウザキャラじゃない?

キャピキャピアピール痛いよねー。男子の気引きたいんじゃーん。

てか、ノーメイクブスそうじゃない?

あははは。たしかにー。

一軍女子たちが固まって話す。



またか。私はうざがられる。今に始まったことじゃないけど。

小学生の頃からずっと影で言われてたのも知ってた。でも、気にならなかった。ずっと真美がわたしのそばにいてくれたから。

真美は幼稚園、小学校ではボスキャラで、明るくて優しくて人気者だった。

女子に嫌がらせした男子泣かせたり、妹を泣かせた先生に怒鳴り込みに行ったり、かなり男前だった。

そんな真美が人見知りになってしまったのは、私のせい…。


お昼


「まーみー!めぐー!お昼行こう」

歩み寄る2人。

「どした?みどり。なんか元気ないよ?

またなんか言われた?」

みどりの手を握った。


やっぱり、真美にはわかっちゃうか。

「まー、いつものことだよ。でも大丈夫!わたしには真美いてくれるもん!」

「ねー。わたしもいるんですけどー!」

めぐが羨ましそうに言う。

「うちらはみどりのこと大好きだからね」


「うん。ありがと。大好き!」

ホントに大好き。だから真美に幸せになってほしい。めぐも友達になってくれて嬉しい。


〜食堂〜

「あーお腹いっぱい。てかさ、昨日2人はどーだったのよー」

みどりが夜の話題を持ちだす


「普通すぎる普通でした。2人で課題やって、寝た。それだけ。会話もあまり無し。さすが声かけられない男子。奥手そーだわ。真美はー?」

「わたしも、そんな感じだなぁ…」

そわそわしながら話す真美。

「ちょっとトイレ行って来るわー」

真美がトイレに走って行った。


「なんか変だよね。真美。いつもクールなのにそわそわしちゃって。相当、嫌なのかもね」

めぐが頬杖をつきながら話す


「…心配だなぁ。真美、男子苦手だから」

「そーいえば、あんまり自分から話しかけないよね?真美って」

めぐが不思議そうにみどりに尋ねる


「かなりの人見知りだからね。でも、めぐは最初から話しやすい子だって言ってたよ!

結構、珍しい事だよ。真美は元々、元気で誰とでも話せる子だったのよー」

思いつめたような顔をするみどり


「なんか、深いわけがありそうね。聞かせてくれない?私も友達多い訳じゃないから、こんな風に話せる子できて嬉しいの!!

まぁ、まだ浅いし信用してもらえてたら…だけど」

めぐはいい子だ。男できると男に走ってしまうタイプだから友達いないんだったよね。

話してもいいかな。真美の事わかって欲しいし。


ゆっくりと口を開くみどり

「実は、真美が人見知りになったのは中学に入ってからなの。最初はリーダー格でクラスでも楽しくやってた。私は別のクラスだったんだけど、でも、だんだん皆んなが慣れ始めた頃から、別の小学校から来たリーダー格との派閥が何組かできたの。真美は少々言葉がキツイ時があるから、人気の反面、嫌ってる人もいたの。ほら、目立ちたい人たちいるじゃん。ギャルのグループとかさ。要は一軍達」

「いるね。目立っててうざいよねー!みたいな事言ってる輩でしょー?イジメとか平気でするヤツ。それに目つけられたわけ?ちっ」

めぐが軽蔑したような顔で舌打ちした。


「そう!でも、その時真美は好きな人がいてね。初恋だったの。3年の同じ部活の先輩で、長身で頭もよくてテニスも上手くてかっこいい人だった。ちなみに、わたしと真美はテニス部なのよ。でも、先輩と彼女が一緒に帰ってるところを目撃しちゃって、その帰り道大泣きして帰ったの。で、次の日から落ち込んでるの隠すためにやけに元気になっちゃって

、それが余計にウザかったらしくてあいつらに火をつけたの。そこから呼び出しされたり、話すとうるさいんだけどーとか言われたり、男子に変な噂流されたり、追い討ちをかけたのは、真美の目のこと」


「これは真美から聞いたんだけど、先生に名前を呼ばれて見上げたらキレられたって。なに睨みつけてんだよ!って…。私はただ見ただけなのにって悔しそうに言ってた。

部活の先輩にもガン飛ばしてんじゃねーよ。って帰りに待ち伏せされたり。それが2年続いたの。それでも、まだ明るく振る舞ってた」


「何、その教師も先輩も最悪だな。イライラするー!」キレるめぐ。


「でね、真美は三年間で何度か恋をしたの。女の子だからね。でも、告らないうちに全部惨敗。好きな人を目で追ってるだけで、睨まれてるって言われてさ。もう限界だったのかなー。自分の顔が嫌いになってしまったの。だけど、部活は本当一生懸命やって、3年が引退した後、レギュラーメンバーに選ばれたの。私はそんな真美が羨ましくて、部活終わりに話してる時に、私、今日機嫌悪くて真美とかもうるせーなって思いながら見てた。ってポロって言っちゃったの。相当傷つけたと思う。泣きそうな顔して帰って行った真美を見た時、自分、最悪なこと言ったってすぐ思ったのに、追いかけなかった。決定打を放ったのは私なの。それから大きな声を出すことはなかった。話すことさえ臆病になってしまったの」


少し泣きそうなめぐ。

「何言っちゃってんだよー。みどりー!バカヤロー!

でも、なんでみどりと真美は今でも仲良いの?」


「わたしその時、珍しく友達いてさ真美がいなくても…なんて思ってたの。真美に頼ってばっかじゃいけないって。だからあんな事言ったのかも。

3年になるまで口を聞かない日が続いたとき、部活会議があって、先輩後輩の関係性についての話し合いだったの。顧問も混ぜてね。その終了間際に、真美がいきなり立って「わたしは先輩に目つきのことを言われたり、待ち伏せされたり、ラケットで叩かれたりしてました。すごくイヤな思いをした。だからみんなはそういう事は絶対しないでっ」って泣きながら言った真美を見たら抱きしめられずにはいられなかった。テニス部のみんな真美を抱きしめてた。ごめん、なにも気づかなくてって。真美は後輩にも優しくて、明るく振る舞ってて、そんな事全然気づかなくて私酷いこと言った。何度も謝った。小学生の時に、真美がそばにいてくれたこと忘れてた。これからは私が真美を守るからって。誓ったの」涙ぐむみどりとめぐ。


トイレで1人今日の夜の事を考える真美。



「なるほど。そういうことだったのか…。いいヤツじゃん」

みどりとめぐの近くで誰かが話を聞いていた。それは果たして誰なのか?

佑介?それとも…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る