第5話 能力
ムバク――人の記憶を食べる生き物。そしてこの街がセーフエリアと呼ばれていること。龍治は実際に目で見ることで、この世界を少しばかりだが、理解することができた。
(あんな化け物を相手にしていたら命がいくつあっても足りないな。街の中でやれる職を見つけるしかない。)
龍治のスピリティが何なのか、それを確かめるべく、街に戻り役所を訪れていた。
(もといた世界の役場によく似ているな)
「窓口に行って鑑定依頼の手続きをしましょう」
フィリィと一緒に窓口でいくつかの書類にサインを書いて、これにて手続きは終了。
「あとは、役所のほうで勝手にやってくれるから、あなたは鑑定室にいきなさい。私はついていけないから、ここで待っているわ」
「スピリティってそんなに厳重な情報なのか?」
「違うわよ。鑑定するときに周りに人がいると、その人同士が干渉しあって正しい結果が出ないのよ」
「なるほど。それじゃ行ってくる」
鑑定室には直径3メートルぐらいの大きな丸い石が置いてあるだけで、あとはさっきもらった鑑定手順が書いてある紙だけだ。
(なになに...この紙を鑑定石に張り付けてください。その後、両手を前に出して鑑定石に触れてください。ただしその時に、両方の手の平以外触れないように気を付けてください。こんな感じね)
すると大きな鑑定石と言われる石が緑色に光りだした。いや、正確に言えば少し青みがかった緑、青緑というべきだろう。その輝きはしばらくすると収まった。最初に張り付けた用紙をみるとそこには「治癒・再生」と書いてあり、その他の説明文は消えていた。
その紙を持って鑑定室から出て受付に持っていく、窓口の人が少し驚いた表情を見せたのが少し気になったが、申請を済ませてスピリティの証明書を発行してもらった
(まるで無料でとれる免許だな)
「どうだった?」
フィリィが駆け寄ってくる
「お待たせ、はいこれ」
証明書をみせる
「治癒・再生って…めずらしいスピリティをひいたね」
「やっぱり珍しいのか」(あの窓口のひとのリアクションからするにそんな感じがしたんだよな)
「おそらく、生き物を治癒することが可能なんだろう?」
「多分そう、このスピリティに関しては情報が少なすぎて私も聞いたことはあったけど実際に見たのは初めてだから、正確には答えられないわ。ごめんなさい」
「そうなのか、まぁ使っていれば効果も効力もわかってくるだろうから。とりあえず、これで一応は就職に必要なものはそろったか。あとは家だな」
「お金もないことだし、今夜は私の家に泊まれば?」
「え?いいの?...」
「いいわよ。ごはん買って帰りましょう」
龍治とフィリィはこうしてまたフィリィの自宅に向かって歩きだした。
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