03

 四人が開いた石の扉は自然に閉まり、後戻りができなくなった。

 扉は構造上こちら側に引いて開ける扉だというのにこちら側には取っ手などなく、そもそも四人がかりで押し開いてきた重い石の扉である。


「マジか」


 ジュリーは背中に冷たい汗を感じブルリと身震いをする。


「RPGの演出的にはよくあることですが、ミクロンダンジョンでやられると結構精神的にきますね」


「リタイヤもできないってことか?」


「いや、いくらなんでも流石にそんなことは……」


 というゼンの言葉には力がない。何せここは『そのダンジョンに挑むと戻ってこない』などと噂されている『帰らずの地下迷宮』だ。そもそもにおいてここは「クリアできるダンジョン」なのか? そんな疑問さえ浮かんでくる。


「引き返せなくなったのは事実だし、変えようもないんだから先に進むしかないでしょ」


 ロムがいう。


「そうだな、ここで頭抱えてたって事態は変わらない。状況は想定外だが、オレたちの冒険に危険があることははなっから覚悟していたことだ。行こう」


 ジュリーのいつも以上に熱血漢然とした芝居ががった発言は冒険者に改めて決意を促し、四人は力強くこの不気味なダンジョンを歩き出した。

 冒険者の進む迷宮の通路は床も壁の石積みで誇張ではなく中世ヨーロッパ的ファンタジー世界の迷宮に迷い込んだように思えた。全体的に湿っぽく、鼻をつく匂いも漂っている。戦闘をジュリーが歩き二列目に光源となっている杖を持ったゼンとマッピングしているサスケ、殿しんがりにロムという馴染みの隊列フォーメーションだ。

 ゼンはまた、思考の世界に沈んでいた。

 今の所は問題なくプレイできている。しかし、このダンジョン内ではゼンでさえ常になにがしかの危機感が神経をざわつかせる。前を歩くジュリーは前衛ということもありわずかな物音にも過敏に反応して腰の剣に手をかけていた。


「ジュリー」


 ゼンはついに声をかけた。


「これまでの通路から見てしばらく後ろからの攻撃はありません。ロムと交代しましょう」


「オレは大丈夫」


 そういうジュリーの唇は乾いているらしく唇だけでなく顔色も悪い。答える言葉が震えて聞こえた。


「ずっとそんな精神状態では持ちません。せめてロムと並んで歩きましょう」


 先へ進もうとしていたジュリーだったが、立ち止まったまま十秒近く沈黙した後振り返って頷いた。


「……わかった。しばらくはそうしよう」


 実のところロムも平常心とは言い難かった。むしろ戦士としての確信に満ちた勘が胸の奥で強く強く警鐘を鳴らしていた。不意打ちに対応するため盛んに棍を回してこわばる体をほぐしていたし、ともすれば跳ね上がりそうな心拍数を抑えるために普段よりも意識的に深くゆったりと呼吸する。


「サスケ、私の思考に付き合ってくれませんか?」


「情報の整理でござるか? よかろう」


「ありがとう」


 ゼンはサスケに話すという行為によってこれまでの状況を確認し始めた。

 テナントビルの何階かわからない場所にある凝りすぎのダンジョンセットは意図的に掘られた洞窟ゾーンから石積みの迷宮ゾーンへ、さらには隠し扉シークレットドアから降りてきたこの地下迷宮ゾーンへと続く変化は冒険者に何かを暗示している気がしてならない。扉といえばどの扉も向こう側から開けられないように作られていた。最初の扉は木製で閂で閉められていた。それ以降の扉も外から鍵や閂をかけられていた。まるで「誰かを閉じ込めている」かのように。そして今、彼らはその石の扉によって閉じ込められた状態だ。

 配置されていた怪物モンスターは洞窟内こそ固定式だったが、さきの迷宮内ではどれもAIの補助でこちらの攻撃に対処する高度なロボットタイプでジュリーとサスケはそれなりに苦戦を強いられた。RPG的に考えれば、階層一つ深く潜ったのだから当然より強い怪物が出てくることになる。

 そして明確な目的のないダンジョン。シナリオとしてはそこに何があるのかを探索するという冒険の根源とも言える導入から、石の扉によって閉じ込められた現在は出口を求めて奥へゆくという目的に変わっている。


「しかし、こう考えると実に巧妙なシナリオですね。これがTRPGなら『やられた』と天を仰いで賞賛するのですが……」


「落とし穴だな」


 不意に思考の世界から現実に戻されたゼンは、ロムの棍が床を指しているのを確認する。誰かが少なくとも一度落ちた形跡がある。


「試しに開けてみるか」


 ジュリーの言葉に興が乗ったのか、ロムは落とし穴の蓋を混んで強く突く。十分の一となった冒険者は五十グラムから百グラムといったところである。その重量で落ちるほど簡単な仕掛けである。棍で突かれて勢いよく開いた穴の底には先端こそ丸まっていたが針が剣山のように並んでいた。針には演出なのか本当に落ちた冒険者のものかはわかならい血が付いている。


「針の山は落とし穴ピットの定番でござる。日本でも忍者ものでよく出てくるトラップでござるが、あれは物語で主人公は回避できるからいいのであって、実際に仕掛けられていると生き死の問題に繋がる本当に危険な罠でござる。それをこのように……」


「なんか、本当に生きて返す気がない感じのダンジョンだな」


 ロムの言葉に三人は無言で固まってしまう。

 無意識に強く奥歯を噛み締めたジュリーが低く掠れた声で先へ進むことを提案する。

 冒険者は再び出口を求めて迷宮の奥へと歩を進める。途中で二度、落とし穴を発見したが今度は開けることもなくやがて丁字路に突き当たった。


「後ろが狙われる危険が出てきた。隊列を元に戻すぞ」


「大丈夫ですか?」


 ゼンに問いかけられ、ジュリーは幾分良くなった顔色でぎこちないながらも笑顔を向ける。


「ああ、だいぶ落ち着いた」


「どちらへ進むことにする?」


「オレの方」


 棍を右手に持って歩いているロムは右側を、並んで歩いていたジュリーは腰に履いている剣の鞘がその棍に当たらないようにと左側を歩いていたのだ。

 丁字路を左に進むとその先で通路が右に折れていた。その曲がり角の向こうを確認しようとジュリーが壁際から顔を出そうとした時、黒い塊がぬっと壁から現れた。


「わっ!」


 思わず声を出してのけぞるジュリー。

 黒い塊は特に反応を示した様子もなく盛んに触覚を振り、のたりとその全身をこちらに現した。

 その姿はまごうことなき蟻である。しかし、そのサイズが想定外だった。彼らから見て五十センチ超級、実寸で五センチはあるのだ。

 ジュリーは慌てて腰の剣を抜くと、腰だめで構える。


「一匹か?」


「後続が顔を出さないところを見るとその可能性は高いですが、これは……」


 ゼンが絶句し、サスケも対応しあぐねてか、紙とペンを持ったまま固まっている。丁字路になったことで最後尾に戻っていたロムが、二人の間を抜けてジュリーの右に並ぶ。


「アリって襲ってくんのか?」


 ロムの背中越しの質問にやっと再起動したゼンが得意のうんちくを披露する。


「普段は小さいので気になりませんが、アリは比較的攻撃的な生き物だと言われています。あごも強いですが、注意すべきは蟻酸ぎさんです」


「ギサン?」


「蜂同様尻に毒針を持っているんです」


「刺すのか?」


 ジュリーが思わず振り返ってくる。


「蜂と違って刺せるほどの針を持っているアリは少ないらしいですが、逆に毒を吹き付けてきたりするらしいんです」


「よっぽど厄介じゃねぇか!」


「これはこういう種なのか? こんなでかいアリいるもんなのか?」


 休むことなく動く触覚が何を探っているのか無表情な昆虫の顔からは全く読み取れず、ロムは棍を握る手に汗にじむのを感じていた。


「少なくとも日本にいるアリに二センチを超える種は存在していません。これは…おそらくおそらく人為的に大きくされているアリです」


「ミクロンシステムで…でござるか?」


「システムは専門外ですが、縮小と復元ができるのですから拡大も理論的に可能なんじゃないでしょうか?」


「このダンジョン……」


 ジュリーは構えていたショートソードを腰の鞘に戻し、背負っていた日本刀風のソードを抜く。こんな事態を想定して用意した刃を研いだ殺傷力のある剣である。


「あいつらのダンジョンだな」


 四人に緊張が走る。その殺気を感じたのか? アリが戦闘態勢に入ったように姿勢を低くしてこちらに向き直った。

 ロムはその反応に先手必勝とばかりに攻撃を繰り出す。棍をわずかに右に引き、間合いを詰めるとアリの横っ面を殴る。手には外骨格の固い感触が伝わってきた。弾かれるように横を向くアリに間髪入れずにジュリーが剣を振り下ろす。その連携は事前に打ち合わせたものではないが十分意思の通じた動きだった。

 狙いは触覚。できれば一刀の元両断したかったが慣れない武器と経験不足から剣の軌道と刃の角度が合わずガツンとした手応えを伴って触覚の中ほどに食い込む。


(やべ!)


 焦りも手伝って剣が抜けない。慌ててアリの頭に右足をかけて力任せに剣を引くが、引く角度が剣の角度と違っているらしく抜けそうにない。しばらく奮闘してみたがらちが明かないとすっぱり諦め、彼は腰のショートソードに武器を変える。足で押さえつけていた頭に剣を突き刺すとその外骨格はチョコレートケーキのように割れたが、アリはなおも暴れている。ジュリーは剣を引き抜き今度は頭部と胸部の間に剣を突き入れて切り離した。


「ヤベェぞおい。もしかしたらこの後の遭遇エンカウントもこんなのばかりかよ」


 倒したアリの触角からソードを抜いたジュリーは刃こぼれがないか確認しながらゼンに問いかけた。


「可能性は高いですね。でも、我々は一度経験してますよ?」


「そうだった」


 今は「賢者の迷宮亭」の名で知られるようになった千葉のダンジョンは、彼らがアタックした時は一本道に虫を閉じ込めただけという何の配慮もないダンジョンだった。あの時はロムにおんぶ抱っこで実際に彼が戦ったのは群がり寄る蚊を払ったのと盾で虻からの攻撃を防いでいただけ。それが今日は曲がりなりにもアリに対して剣を振るいあまつさえ倒すことができた。


(オレも十分戦える)


 そう思ったのも無理はない。

 しかし、それは常にこちらが先制できる可能性が高い昆虫相手だったからかもしれない。


 いつもの通り歩ける限り通路のマッピングを終え、いくつかの扉を開け始めると部屋の中には頻繁に虫が配置されていた。

 最初の接敵こそ突然のことで後手に回った感はあったが、そういう場所なんだという割り切りで腹を据えるとジュリーとサスケは精神的に余裕が出たのかここ数回のダンジョンアタック同様にロムの手を借りずに戦うことを主張して二人で虫に挑んでいった。

 部屋の中には大体においてアリが配置されていた。一匹の時もあれば五、六匹放り込まれていた場所もある。十倍に巨大化されているとはいえ所詮は一センチに満たなかったものだ巨大化させられたためか思ったほど動きも速くなく落ち着いて対処すれば決して勝てない相手ではなかった。黒い外骨格は確かに殴っただけではダメージを与えているのかさえわからなかったが触角を切り落とせば迷走するし、頭部胸部腹部をつなぐ部分はうまく狙えば容易に切り離すことができた。形勢不利とみれば戦わずに部屋を出るという選択肢もある。

 いくつかの扉の中には実寸の虻もいた。

 千葉のダンジョンでは当時装備していた盾で向かってくる虻をはじき返す事しか出来なかった相手だったが、今日は剣を振るって叩き落としてトドメをさす事もできた。

 ジュリーはサスケと視線を交わして互いに頷き合うと、ロムに向かって「どうだ」とばかりに不敵な笑みを浮かべてみせる。二人は見違えるほど戦えるようになっていたのだ。それもこれもロムの指導を真摯に受け止め真面目に稽古をしてきた結果だろう。


「オレたち十分戦えるじゃねぇか」


 ジュリーが意気揚々と先頭を歩く。その口調はいつにも増して芝居がかっていて少し調子に乗っている色が見て取れた。


「油断は禁物でござる。こういう時は得てして足元をすくわれるでござるぞ」


 などというサスケの声にも高揚感が乗っていた。

 開けた扉の奥にはクモがいた。その姿を見た瞬間、ロムがみるみる青ざめていく。ジュリーがざっと部屋を見回すが部屋の中に他の扉はない。速やかに扉を閉じてため息をついた。


「行ってないとこは?」


「この扉だけでござる」


 と、サスケが地図上の一点を指差す。


「奥に道が繋がってなきゃ手詰まりだぜ?」


「繋がってますよ。ヤツらのダンジョンだとすれば確実に、次のステージに」


 ゼンには確信めいたものがあった。

 地図がないと迷ってしまう程度には複雑な迷宮を進みながら、四人は黙々と歩きたどり着いた先は木製の扉でこのダンジョンでは馴染みの閂がかかっている。


「一応調べるとしよう」


 そう言ってサスケが扉を調べ始める。見た通りの木製で四隅は金属の補強がなされている。閂も角材で古びた感じを表現されたもの。二、三十年放置された迷宮という見た目に仕上げられている。現実世界の環境音が一切聞こえてこないことと迷宮内の湿った空気と相まって没入感は怖いくらいだ。


「生き物がいるでござるな。やはり昆虫でござろう」


 経験は何より人を成長させるものだ。この数回のダンジョンアタックは戦闘だけでなく索敵能力も彼らを成長させていた。千葉のダンジョンに挑戦していた頃はよほど活発な生き物の気配を感じるのがせいぜいだったが、ダンジョン内が静寂な事もあって中の様子もなんとなくわかるようになっていた。

 クモはわからなかったが。


「不意さえ打たれなきゃなんとかなる。いくぜ」


 背中からソードを抜いたジュリーが仲間を見回す。サスケは背中の日本刀を抜き、ゼンも杖を胸の前で握り直して頷いた。

 ロムが閂を外し、サスケが扉を開ける。躊躇なく中に入るジュリーの視界を確保するためにゼンが続きサスケ、ロムと入るとそこには大きな褐色のカマキリがいた。あの時のカマキリよりは一回り小さいようだが、あの時と同種のカマキリだ。その向こうには青銅製の扉があった。カマキリも小さいがあの日と違い部屋も大きくない。ここはどうでも目の前のカマキリを倒さずに先へは行けないようだった。


「あの日のリベンジお前で晴らさせてもらうぜ」


 ジュリーはあの日の自身の不甲斐なさを思い出す。戦士として、剣士として共に戦いたい。せめて隣で協力したい。そう思いながら何も出来ずただただ奥歯を噛み締めながら逃げた記憶が脳裏に浮かび、全身が熱くなるのを感じていた。

 目の前のカマキリはあの日のカマキリより小さいとはいえ、このダンジョンで出会ったどんな相手より大きい。少なくとも七十五センチ近くはあるだろう。こんな状況でなければ愛嬌さえ感じられるハート形の顔をこちらに向け、四人を警戒してかユラユラと体を揺らしている。まさに蟷螂拳とうろうけんのようだ。長い棍を持ったロムがそのカマキリに正対する。


「ジュリー、サスケ、ロムをサポートを。左右に展開して節を狙ってください!」


 ゼンが叫ぶと二人は即座に反応しカマキリを挟み撃ちにしようとするが、部屋が狭くてうまく回り込めない。カマキリは複数の敵を相手にしていると認識したのか、その鎌腕をジャブとして振るう。ロムが防御力でやや劣るサスケの側に寄って鎌を弾く。ジュリーの方も剣で上手にさばいて見せた。

 二度三度とタイミングを図ったロムはわずかに間合いを詰めて相手を誘い、鎌をかけてきたその腕を棍で絡め取る。


「悪いな。無駄な殺生は好きじゃないんだが……」


 感情の読み取れないカマキリの目を見据えてそう言い訳すると、一気に棍に力を込めて関節を逆折りにする。メキリと外骨格が割れる音がしてカマキリの鎌腕が本来曲がらない方向に捻じ曲げられた。


「御免!」


 ガラ空きになった首めがけてサスケが刀を振り下ろすと狙いたがわず袈裟斬りにカマキリの首を落とす。


 頭と別れた体が完全に動かなくなるのを確認した後。四人はそのむくろを乗り越えて扉の前に集まった。

 青銅製の扉。緑青ろくしょうが扉全体を覆っており、この扉が実際の青銅で作られている事を物語っていた。鍵穴はないが鍵がかかっているのか単に錆びついているのか、ちょっとやそっとでは開けられそうにない。


謎解きリドルですね」


 ゼンが顎に親指を当て、人差し指で鼻の頭をトントンと叩きながら部屋を見回す。

 部屋の中は彼らと骸となったカマキリのほかは特段の装飾もなく殺風景な部屋だ。風化したような風合いを施された室内はざらついたレンガで壁も床も天井も出来ている。杖の明かりを扉に近づけて壁と扉の隙間を除くと鍵がかかっていのが見て取れた。扉はのっぺりした飾り気のないものなのでこちらに何らかの仕掛けがあるようには見えない。このダンジョンではアイテムと言えるようなものは手に入れていないので(この辺りもあの日のダンジョンを想起させる一因だ)、あるとすればこの部屋のどこか解錠の仕掛けがあるに違いない。ここまでリアリティにこだわっているのだから仕掛けも「らしい仕掛け」だろうと見当をつけたゼンは、扉のある壁に光を当てて丹念に調べていく。

 つられるように三人も照らされる壁を額を寄せ合って見つめていたがやがてサスケが違和感に気づいた。


「このレンガだけ他のレンガより風化が進んでいないようでござる」


 指差すレンガはかかっている鍵の真横にあり、なるほど他のレンガより色が明るく角も鋭角なようだし、よくよく見ればそのレンガは目地材から完全に浮いているようだ。


「パターン的には押し込むんだろうな」


 ゼンに確認を取るように言ったジュリーは一度生唾を飲み込んで掌底でぐいと押し込んだ。すると思った通り押し込まれ、奥でカチリと音がする。ひと呼吸置いてひとりでに扉が外へとゆっくり開いていく。

 扉の向こうは通路になっていて生臭く湿った空気がそれまで以上に陰鬱に漂ってくる。


「嫌な臭いだぜ」


 ジュリーの呟きにロムが応える。


「ああ、生き物のいる臭いだ」


 決して清潔ではない環境で生き物が暮らしている……漂ってくるのはそういう臭いだった。かすかに血生臭くもある。いよいよヤバイところに足を踏み入れる。ロムをしてそう感じさせる臭いだった。


「だからと言って立ち止まっているわけにも行きません」


 もっとも脆弱な立場であるゼン言う。


「だな」


 戦闘に次ぐ戦闘で今一番疲弊しているだろうジュリーが相槌を打つ。


「準備が出来次第出発することにしましょう」


「あいわかった」


 すでにサスケは準備に取り掛かっていた。

 ロムは無言でまっすくに伸びているだけの通路を見つめていた。

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