ファッ!?

「うおおおおぉ!!!」

怒りの剣が勢い良くモンスターを

一閃する


「ミラクス」は上と下に体が分かれ

消滅する


(あと、一体か…)



俺はもう一体のモンスターを見る

もう一体の「ミラクス」は俺を見ずに

再びミーアに攻撃しようとしている


「待て コラァァァ!!!」


俺はジャンプして飛びつき

今度は頭から一刀両断する


断末魔の叫びが響いた後 モンスターは消滅した



(流石に腕は劣ったか…)


(ミーア!)


俺は脇腹を抉られた少女を抱き抱える


「すみ…ません…お手を煩わせてしまって…」


気にするな と言い駆け出す



とりあえず薬局に行く


モンスターを見て逃げ出したのだろう


薬局には客も店員も居なかった


(こんなんで治んのか…)


金はレジに置いておくことにした



「これを巻いておこう多分治るはずだ」


そう言い俺はミーアの服に手を伸ばす


「何をするつもりですか?

まさかいやらしいことでも…」


(なんでそうなる)


「巻くだけだ…そんなつもりはない」


「私の体が見たいんですか?」


ちょっとだけ…というのは本心

男子高校生だから仕方がない…



とりあえず断っておき

服を脱がそうとする


「いや 大丈夫です ほんとに…」

彼女は嫌そうに断る

「いやいやそんな目的ないから…

包帯でも巻いとかないと血が止まらないぞ?

俺は少女に促す


「その必要はありません」


「ふぇ?」

予想外の言葉に間抜けな声が出る


少女は自分で服を脱ぎ始めた


「いやいやいやいやここでそんな事は…」

俺は慌てて視線を逸らす


しかし、そうも居られなかった


しゅー という音と煙とともに

少女の肌が露出する


その白い肌には抉られた痕 血の痕

1mmもなかった


「え…?」



「そんな…嘘だろ…確かにミーアちゃんは腹を抉られていて…」


俺は驚きの表情で彼女に話す


「すいません…実は私…」


そう言うと俯いた


「スキルを2つ持っています…

黙っていてすいませんでした!」


(スキルを2つ…そんな事が有り得るのか…)



「1つは瞬間移動

もう1つは瞬間完全治癒です…」


「な…瞬間完全治癒…だと!?」


《瞬間完全治癒》

それは神クラスを上回る超特殊スキルだ


与えられたダメージ分を即時に回復する

というチート級の能力だ


即死のダメージを受けても死なないのである


「そのスキル…ラファエルのスキルか…」


「ラファエル…ですか?」


俺が「滅する生還者」と呼ばれる由縁になった戦争で俺と共に闘っていた

女性天使だ…


(ラファエルのスキルがこの少女に

宿っていたのか…)



ふっ 皮肉なもんだな



戦争で俺の「裏切り」によって命を落とした天使の能力が…とはな



「とりあえずミーアちゃんが無事ならなんでもいいよ♪」

優しくーそう優しく告げるフリをする


(チッ!こんなとこに宿っていたのか

ラファエルの…まぁいい

また根絶やしにすればいいだけ

幸いミーアのスキルが攻撃系じゃないのが救いだな)




単純に言うと殺しやすい

それだけだ

俺はミーアを殺す必要がある

瞬間完全治癒なんて俺にかかれば

どうということは無い

前世のラファエルも俺の手で殺めたのだから




俺の目的は1001本目の剣を作り出す

その為には神 及び神スキル保持者

を殺さなければいけない


そうじゃないと己のスキルは

限界を超えない




限界を超えたスキル<超越進化スキル>


とは単純なランクアップだけでなく

スキルを複数所持できるようになる

2つや3つなんてものじゃない

過去には100.200と持った者もいたという

まぁそんなに持ってても使わないだろうが…




とはいえルームメイトになって

デートまでした少女を殺すのは

心もとない


(異世界に行った時にどさくさに紛れて…)


俺はぼんやり考えていた




「…さん!颯馬さん!」

ミーアは俺の身体を激しく揺さぶりながら

俺の名を呼ぶ

「そんなにショックでしたか…?」


いや、そうじゃないけどそうだ

俺は平然と答える

違和感を感じられてはこの先支障が出る

「いや、ミーアちゃんがスキル2つ持ちなんてのは願ってもみないことだな

こんなに凄い子がルームメイトで嬉しいよ」


俺達は大型ショッピングモールを出た


















シェアハウスのドアを開けると

フィール ミエラ ネネが仁王立ちで俺達を

睨んでいた

「ちょっと!二人とも!

どこ行ってたんや?もしかして、

うちらにキツいメニュー与えといて

颯馬はマスコットとデートか!?

ええ身分やのォ?」

ネネが怒鳴り散らす

それに乗じてミエラも不満を漏らす

「ふむ…せめて一言言ってほしいものだな…

勝手に抜けられると心配してしまうではないか」

ごもっともだ…

「まったく〜二人でナニをしてたのかな〜?

まさか二人でホテルに入っていった なんてことはないだろうね?」

フィールがとんでもない事を言い出す

「そ、そんなことしてないって!

ミーアちゃんもなんとか言ってくれ!」


俺はミーアに助け舟を要請する


ミーアは頷く


これで安心できる…

と思ったのはつかの間


「そんなことはしていません

颯馬さんは私を抱き抱え、服を脱がそうとしました」


「「!?!?!?」」



「颯馬!そんなことしてたんか!?」

「学生にはまだ早いんじゃないかな〜?」

「な、な、なんてことを!?しかもルームメイトと!?」




(なんでそこだけ抜き取る!?)

まずい非常にまずい


これは…死んだ

俺は悟った


「大丈夫!?ミーアちゃん!

こんな奴に貞操を奪われたんか!?

可哀想に…」


ネネがミーアに肩を持ちながら言う



いや、待て こんな奴とはなんだこんな奴とは



(それなりにあるはずなんだが…)

どこの大きさとは言わない





「にしても学生でそれはバレたら退学だぞ?

ちゃ、ちゃんと その…ゴムハシタンダロウナ…?」




着けていればオッケーなのか


「えぇーもしかして着けずにヤッたの?」



フィールが追撃してくる



「だからヤッてないって!」


思わず俺は声を上げた



「「ぇぇええええ!?着けてないの!?」」



さらに話がややこしくなった





「大丈夫か!?ミーアちゃん!

妊娠したら大変やで!?

育てられんの?」



そこじゃないだろう

しかし、俺が話に入ると余計にややこしくしそうなので黙っていることにする


さっきまで黙っていたミーアが口を開く

「ヤッた…だの ゴム…だの

皆さん何の話をしているのですか?」


当の本人は知識を持っていなかった



助かった…

やはりこういう子は一人必要だ


なんていうか…ウブな子は…

と同時に俺たちの心の汚れ具合は酷い

とも思う



これでこの話は終わる…と思っていた


フィールがミーアに忍び足で近づき

耳に何かを囁く


「ゴニョゴニョ…ゴムっていうのは…

カクカクシカジカ…」


それを聞いたミーアは顔を赤くして俯く




やりやがった…


フィールの奴

ウブな子にナニもかもを教えやがった

こいつは子供の教育に悪い




「み、みなさン ソウマさんとはソンナことはシてませン…」


明らかに動揺している

初めての知識を埋め込まれたからだろう

顔が真っ赤で ヨダレが垂れている


「ソンナ気持ちいいコトはシテません…」


ん?なんかまずくね?



「気持ちいい…?なんでミーアちゃんそんなこと知ってんねん!?

やっぱり…」


ほら見てみろこうなる


フィールが俺を見てニヤニヤ



(こいつ…余計な事まで…)


教えやがった

純粋無垢な子が目の前で汚されたのを

初めてみた


これ以上のことは今後体験できないだろう

ちょっと興奮する




(って こんな事考えちゃダメだろう!?)


これで男子高校生のさg…




ダメだ

もう終わりだ

俺の学校生活は終わった



そう思っていたが

こんな俺を助けたのは意外な人物だった


「ハッハッハ!どうやらハーレム生活を満喫しているようだna!颯馬!そんな颯馬も流石にそこまでは踏み切ってないze!」





シェアハウスの一番広いリビングの

ソファにどっかり座っている人物がいう

先生だ



「あ、あんた いつからそこに…?」


「ん?お前達が帰ってくる頃かな…?」



「「なんだと!?」」


俺 ミエラ ネネがハモる


ネネに至っては方言を忘れて


「やっぱりまだまだだな…お前らはyo!」


神スキル持ちの俺やフィール ミーアも

気付かない程の気配の消し方

間違いなくこの先生は強い

1度手合わせをしてみたいものだな…



「しかし、そこまで踏み切ってないとは

どういう事ですか?」


驚きの声の中ミエラが質問する


「全部見てたze!颯馬とミーアちゃんのデートを!」


「そうか…って何で!?」


俺は納得しつつも疑問を口にする


「お前らの不純異性交遊の監視も

先生の仕事なんだよ…

ったく 面倒な仕事だぜ…

ヤッてくれてても良かったのによー」


なんてこと言うんだこいつ


「っしかし こいつらはナニもやってねーyo!

俺が保証するze!」


「そ、そうですか…」

ミエラ ネネ フィールは納得してくれた


助かった…



「ありがとうございます 先生 助かりました」


俺は感謝を述べる



「なーに これぐらいの事はしてやるyo!

まぁ本当にヤッた時は庇わないze?」



「そんなことするかー!!!」


俺は怒鳴った



何を怒鳴っているのだ とミエラは聞く

何もない と答えると

そうか といっても部屋に戻っていく


ネネ フィールもそれぞれ部屋に戻っていく

先生もいつの間にか姿を消し


シェアハウスの玄関にいるのは俺とミーアだけになった…


「ミ、ミーア その…今のは忘れていいんだぞ?」


俺は怪訝そうに言う



はい と言うので胸を撫で下ろす

のは叶わなかった



「ヤりたかったらいつでもイッてくださいね…私…準備しておきますので…」


マジか…!?

いやいやいやいやいやダメだろう!?


なんとか忘れてほしいものである


「さっき…忘れていいんだぞ とおっしゃいましたよね…」

少女は確認をしてくる

「お、おう」

俺は答える


「でも、私…忘れませんから!」


終わった…と思うも俺は後の少女の言葉によって絶望の顔にならずに済んだ


「颯馬さんとデートしたこと!」


(よ、良かった…その事で…)


ミーアはそう言うと自分の部屋に帰っていった


こうして訓練1日目は終わる…


もっとも 俺とミーアは訓練してないけど…








俺は楽しかった思い出を振り返ると共に

ミーアの二つ目のスキルのことを思い出していた…

「ラファエル…」



かつて殺した天使の名



その能力がミーアに受け継がれている


殺さなければいけない…


だが、俺の心のどこかで


反対の意志が芽生えていた




「俺は…ミーアを護りたい…」



殺さなければいけないものを護りたい


俺の中で何かが変わった
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る