いざ尋常に!
ここは私立舞原高校が管理している独自のシェアハウスだ
俺は朝の一風呂に入るために大浴場に来ていた
無論ここには人数分の部屋があり
部屋にはシャワールームが完備されている
だが、やはり朝風呂は入っておいて損は無い
大浴場の扉にプレートがかかっていないことを確認してから扉を開けた
衣服を脱ぎ、フェイスタオルを持って
大浴場に入る引き戸を引いた
…俺は絶句した
何故なら5人の少女がいたために(もちろん裸)
幸い(残念なことに)湯気で胸の先端と下半身の大事なところは見えなかった
俺は目をパチパチさせる
少女達も目をパチパチ…
しばしの沈黙が流れる
一時の凪というやつだ
「「キャアアアアアアアアアアッ!」」
5人の少女は悲鳴を上げる
俺は急いで引き返した
「ったく なんという事だ!
女性の入浴中にいきなり入ってくるとは!
君にはデリカシーというものがないのか」
後ろの4人もそうだそうだ と言わんばかりに
こちらを睨んでいる
「で、でもプレートはかかってなかったし…」俺は反論する
「確かにプレートはかけていなかったが
脱衣所に服が置いてあっただろう
確認してないのか?」
う、正論だ確かに確認していない
「ま、まぁ私達にも過失はあったんだし…
その…大事なところは見えてなかったっていうんだし…許してあげようよ」
後ろの少女が言う
「確かにそうだが もし見られていたらどうするのだ?君は見られてもいいって言うのか?
痴女か?」
違うよ〜と彼女は答えながらおれを見る
(この状況で見られても…)
こんな状況で何かを言える立場ではない
「まぁ今回は許すとしよう
しかし、次やれば命はないと思えよ?」
妙に説得力がある
何故なら4人ともスキルを持っている
詳しいスキルは分からないが
俺一人で確実に勝てるという保証はない
例え俺が神クラスのスキルであろうとも
スキルしだいによっては簡単に覆されてしまう
「…そう言えば 自己紹介がまだだったな
教室では簡単にしていたが、今は同じルームメイトでもある 交流を深める という意味でもまずは自己紹介をするとしよう」
俺を含めて4人が頷く
「私はミエラ=シュエル ミエラと呼んでくれ
スキルは…」
彼女は口を止め
拳を握り 正拳突きをする すると彼女が突き出した拳に炎が宿る
「炎を身体に纏うことができる」
ぉぉー 俺達は拍手をする
次に視線を移す
「うちは有村ネネ 日本人と異世界人のハーフや!よろしく!スキルは 水を自由自在に操ることができる
やで」
(な!?ハーフだと!?)
驚くのも無理はない外見は完全に外国人だからだ そこに日本人の風格は微塵も感じられない
次は…視線を移すと小さな少女が立っていた
「ミーア=トリーです スキルは瞬間移動ができます よろしくお願いします」
そういうと頭をぺこりと下げた
マスコットのように可愛いが本当に同い年だろうか…
次はフィールだった
「フィールといいます!
スキルは光を集めビームを撃つことができます!」
そうか 彼女も偽ってAランクに入ってきた子だ しかし偽りのスキルでも凄すぎだろ…
ビームを撃つ それは炎を纏うより水を操るより 瞬間移動より価値があるだろう
恐らく一番重宝されるはずだ
(っと…次は俺か)
俺は立ち上がる
「改めて見ると大きいなぁ君」
「そうだよ!彼は大きいんだよ!色々と」
なんの話だ…と思いつつ
自己紹介をする
「隣堂颯馬だ 颯馬でいい スキルは…」
(そうかスキルか…)
俺は迷った
スキルをどうするかを
俺の本来の能力は刃を千本作り出すことができるしかしそれでは本当にAランクかを疑われる 正直偽るのは簡単だ
剣を出しすぎなければいいだけだ
俺は続ける
「スキルは十種類の剣を作り出すことができる」十種類の剣 すなわち刃ではない
あくまで持ち手と刃がある 一般的な剣だ
俺の 刃 は実際持ち手がないものも多い
だからこそ限定することによって
疑われずに済む
そう思っていた…
「ええ?なんで嘘つくの?颯馬君?
君は神クラスのスキルで《千刃》と呼ばれていて、千本の刃を作り出すことができるんでしょ? ルームメイトに嘘をつくのは良くないなぁ〜」
(なっ!?!?!?…こいつぺらぺらと…」
俺は金髪少女を睨む
金髪少女はニヤリと笑う
彼女自身も嘘をついているが
俺が嘘をついているとばらすことで
自分が疑われる機会をなくそうとするつもりだ 性格が悪すぎる
「どういう事だ 隣堂 嘘をついているのか?」
ミエラが聞く
あとの2人も俺を見る
フィールはただただ笑っている
(はぁー どうするかなー)
俺はため息をついたあと
こう答える
「知りたければ、俺と戦え!」
「「えぇぇ?」」
フィールを含め4人の女子は呆気にとられる
予想通りの反応だ
「な、なぜ戦う必要があるのだ?」
疑問に思うのも無理はない しかし―
「俺だって言いたくないことの1つや2つはある お前らはそれを聞いているんだろう?
ならやることは1つ 力づくで聞き出すまでー
だろう?」
俺は問う
「…確かにそうだが いいのか?」
何がだ と聞く
「私達は本気で行くぞ 言っていなかったが
私とネネは道場に通っていたことがある
ミーアだって瞬間移動だけでなく
打撃も強い フィールもAランクの中では上位の能力だ そんな4人を相手に君は勝てるのか?」
まぁそうだろう はたからみればスキル持ち4人をたかが剣を作り出すだけの能力で圧倒できるとは考えられないだろう
しかし、それはー
「俺がそこまで弱く見えるか?
なら、俺の秘密を1つ教えてやろう」
そう言って俺はニヤリとする
「俺はこう見えても 異世界生まれ異世界育ちなんでねぇ しかも紛争が頻繁に起こるところだった 物心ついた時から既に敵国の兵士を殺していた」
4人は唖然とする
「なるほど…つまり相手にとって不足はなし という事だな」
お互いな と俺は応える
「では行くぞ!ネネ!ミーア!フィール!
いざ尋常に勝負!」
「おう!」「う、うん!」「私は全部知ってるんだけどねぇ」
ん? っていうか…
「どこで戦うん?」
ネネが聞く
すると
「なら俺が用意してやるyo!」
声がする方向を見るとアフロでヘッドホン
そうーAクラスの担任だ
「「ぇぇええええ!?」」
「せ、先生 いつからそこに…?」
フィールが聞く
「いつ…って 最初からだze!」
「つまり…俺が説教されている時か」
俺が顔色を伺いながら問う
「そうだyo! お前が女子の尻に引かれてる様は最高に面白かったzo!」
ほっとけ…と呟く
「でも 用意するってどこに…?」
ミエラが聞く
「これだyo! 3.2.1でお前らは飛ばすから
準備しとけ?」
飛ばす?何のことだと思いつつカウントが始まる
「3…」
どこに飛ばされるのだろう
「2…」
検討がつかない
「1…」
ふぅとため息をつき 気合を入れる
「0オ!」
目の前の景色が歪む
目を開けるとそこは
まるでコロッセオだった
広い闘技場の真ん中に俺達はいた
ここで俺達は戦うのか…
自分から言っておきながらも
心のどこかで不安になる
(俺が人と…ルームメイトと戦うなんてな…)
実際俺は敵国の兵士と戦ったことはあったが
戦うというより暗殺に近かったお互いの顔を認識せずままことが終わっている
俺は1分と続く戦いを経験したことがない
いや…あったか
俺が終わらせた 「聖戦」と呼ばれる
醜い戦争を…
「どうした?来ないのであればこちらから行くぞ!」
ミエラの声で意識が現実へと戻る
(今は…目の前の戦いに集中だよな!)
俺は気合を入れ直す
「さぁ行くぞ!」
俺とフィール ミエラ ネネ ミーアによる
模擬戦が始まった…
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