第65話 卒業
お風呂に入った後は、ベッドに向かう。
ベッドでは智さんに抱きつく。
「いつも甘えんぼだな」
「いいの、旦那さまだから」
智さんの休みも今日で最後なので、朝食の時に今日の予定を聞いたけど、何もする事がないので、結局、二人でジムに行って、遅めの昼食を採るという普段の生活になった。
翌朝、智さんはスーツに着替えて会社に出勤する。
私は学校に行くけど、既に休みに入っているので、ちょっとだけ勉強して帰って来る。
学校に行くと、早紀ちゃん、真利子ちゃんも居た。
「おはよう」
「「おはよう」」
二人が声を掛けてくれる。
「ねえ、どうだった、新婚旅行」
好奇心旺盛の早紀ちゃんは、早速聞いてくる。
おっとりタイプの真利子ちゃんは、聞きたいけど、聞かないみたいな感じ。
「ええ、良かったわよ」
「それじゃ、分からないじゃない。何が良かったの?もしかして、夜」
「へ、変な事言わないでよ。もう」
「あ、赤くなった。いいなあ、私も優しい旦那さまに抱かれて、『可愛いよ』って言われたいわ」
「早紀ちゃんなら、大丈夫よ」
「ホントにそう、思ってる?」
「思ってる。思ってる。ね、真利子ちゃん」
「そうよ、早紀ちゃんは可愛いもん」
「二人とも、適当ねー」
「それで、夜はどうだっのよ」
「そんな事、言える訳ないじゃない」
「言えない事したんだ」
「ち、違うけど……」
「もう、早紀ちゃん、彩ちゃんが困っているから、そのくらいにしてあげて」
「真利子ちゃん、ありがとう」
「しょうがないなあ。結婚式の時は呼んでよね」
「結婚式は、親族だけのジミ婚の予定だから…」
「えー、そうなの?」
「うん、式は神前式でこっちでするんだけど、披露宴は名古屋の実家の近くでする予定なんだ」
「そうかぁ、それもいいなぁ」
「ねえ、指輪とか貰った?」
「うん、婚約指輪なら」
「結婚指輪は?」
「式までに二人で買いに行こうって事になってる」
「なんだか、幸せいっぱいって感じがする。いいなぁ」
早紀ちゃんと真利子ちゃんとの話は永遠に続いていく予感がする。
食事の片付けが終わって、リビングに戻ると智さんが深刻な顔をしている。
「あなた、どうかしましたか?」
「あっ、いや、ちょっと仕事の事で…」
「どういう事でしょうか?」
智さんの仕事の内容は、今度、大型工事が発注されるんだけど、どうやったら受注できるかという事らしい。
正攻法と裏で手を結ぶ方法があるらしいけど、智さんは正攻法で行きたいみたい。
「そういうのって良く分かりませんが、あなたの信じるようにすればいいと思います」
「彩の言う通りだな」
「『君子危うきに近寄らず』って言うじゃないですか。ここは様子見でもいいんじゃないですか?」
「彩もそう思うか」
翌朝、智さんは晴々とした顔で家を出ていった。
私の助言が力になれたら、嬉しいな。
3月の第二土曜日、私たちは結婚式を挙げた。
予定では、卒業式の前週ぐらいで式を挙げる事にしていたけど、都合がつかなくて、卒業式の前に結婚式というスケジュールになった。
神前結婚式なので、私は白無垢を着たけど、白無垢がこんなに大変って初めて知った。
三々九度をする時に,手が震えていたのは、緊張していただけでなく、着物が重かったというのもある。
神前での結婚式には、智さんのご両親と母だけが出席した。
結婚式が終わると、みんなで八王子の母の家に行き、智さんのご両親と私の母も交えて、ささやかなパーティを行う。
なんだか、もやもやしていたものが、すっきりした気持ちになった。
私たちは、晴れて夫婦になったということを実感する。
白無垢はレンタルだけど、その隣には、やはりレンタルの卒業式で着る羽織袴も掲げてある。
だけど、今はジャージを着ている。
「なんか、白無垢と羽織袴の中間がジャージって言うのもなんだかな」
「だって、楽だもん」
「それに、大学って、クリスチャン系なのに羽織袴なのか?」
「やっぱり、みんなが着ると着たいし」
明日は、羽織袴を着ての卒業式になる。
「智久さん、ちょっとお願いがあるのだけど…」
母が智さんにお願いをしている。
「明日だけど、彩の運転手をしてほしいの。私は、彩の学校まで運転して行く自信がなくて、ここは旦那さまに、おまかせした方がいいかなと思って」
「わかりました。可愛い妻のために、運転手をしましょう」
「では、智久さんも卒業式に出ます?」
「いいんですか?」
「問題ないですよ。是非、一緒に出ましょう。お義父さん、お義母さんも良かったらどうですか?」
「えっ、いいのかな?」
「大丈夫です」
「お父さん、折角だから私たちも出ましょう」
お義母さんの意見にお義父さんも同意している。
智さんが運転手で、助手席に私が乗り、後部座席には、母と智さんのご両親が乗って、大学に向かうけど、車だと短距離で行けるので、そう時間も掛からずに到着した。
卒業式が行われるホールに、卒業生とその家族が出席して、式は滞りなく終わった。
私が卒業証書を持って外に出ると、智さんたちは既に私を待っていた。
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