第44話 常滑
智さんの実家の最寄り駅である緒川駅に着くと、お義父さんが車で迎えに来ていた。
「おうおう、よう来た、よう来た。母さんが家で準備しているから、早速、行くとしよう」
お義父さんの運転は高齢ドライバーとは思えない運転で、車を操っている。
この辺りは、交通の便が良くないとのことで、毎日、運転するらしいので、運転が上手なんだ。
「和香ねー、名古屋駅から1時間しか移動してないのに」
母の言葉に私も頷く。
「父さん、彩と陽子さんが、大高にあるデオンに行きたいというので、後で車を貸して貰えるかな」
「大高のデオンは混むぞ。儂たちも行った事があるが、それはもう大変だった。それより、常滑のデオンは空いてるぞ」
「常滑にもあるのか?」
「ああ、最近出来たんだ。あそこには近くにココトコと明太子アークもあって、行くならあっちの方がいいかもしれん」
あっ、母の顔が変わった。これは行くつもりだわ。
「ココトコがあるんですか?私、会員なのよ」
やっぱり、そうだ。でも、私も行きたい。
「恵子も会員になったと言っておったな」
「1枚のカードで、4人まで入れますから、恵子さんと二人なら8人まで入れますね」
智さんの実家に着いて、お義母さんが娘の恵子さんに電話している。
すると、恵子さんたちも来るという。
恵子さんの車の中からは、恵子さんの娘の里紗ちゃんと息子の武司くんも出てきた。
「なんだ、二人とも、いい歳をして母さんの後ろを追って来たのか」
智さんが早速、意地悪を言っている。
「そんなんじゃない、彩さんが居るから、英語を教えて貰おうと思ったの」
そう言えば、里紗ちゃんは、今年大学1年生だっけ。
「そう言えば、里紗は大学生になったのだろう。どこの大学に行ったんだ」
「愛知山川大学よ」
その大学を私は知らない。
「里紗は学校の先生になるのか?」
智さんから教えて貰ったその大学は、学校の先生になる人が多いらしい。
「まあ、成れればだけど」
「姉ちゃんは、先生に成る前に女子力を高めなきゃ」
「武司、あんたは何でいつも一言多いの」
「ホホホ、里紗さんなら、きっといい先生に成れます」
こういう場合、褒めて伸ばさなきゃ。
「彩姉さんにそう言われると、なんだかやる気が出てくる」
「やる気スイッチは、無いんじゃなかったっけ?」
「武司!」
「ホホホ」
「ハハハ」
この二人の姉弟はボケと突っ込みが面白い。
「でも、彩姉さんのお母さんって素敵」
娘から見ると普通の母親だけど、他の人から見るとそうなのかな。
「おじさんと夫婦という方がぴったり」
「それじゃ、私はどうしようかしら」
それはだめよ。大事な私の旦那さまなんだから。
「その時は僕が、彩姉さんをお嫁にします」
「武司は、自分の顔を鏡で見てから言うのね」
「えー、おじさんよりは、ましだと思っているけど」
「智さんの事は、私が一番分かっています」
智さんも甥にいじめられて可哀そう。
「もう、あんたはデリカシーがないんだから」
「お風呂を出て裸で歩き回る、恥じらいのない姉ちゃんよりはいいだろう」
「武司」
里紗ちゃんが武司くんを打つ格好をすると、武司くんは智さんの後ろに回った。
「ホホホ」
その姿を見て、思わず和んでしまう。
「いいなぁ、兄弟か、一人っ子だと兄弟喧嘩もできないもの」
「そうかなあ、こんなやつ憎らしい口ばかり利いてるし」
「それも兄弟が居るからよ、いないとそれもできないわ」
「いいもん、武司なんていなくても、彩姉さんが居るから」
「僕だって、姉ちゃんがいなくても、おじさんが……、居なくてもいいか」
「おい、それはどういう意味だ」
「ハハハ」
「ホホホ」
家族が増えると楽しい事がたくさんになる。
恵子さんが運転する軽自動車と智さんが運転する車で常滑に向かうことになった。
里紗ちゃんと武司くんが私に一緒に乗るように言うので、私は恵子さんの運転する軽自動車に乗ったけど、恵子さんの運転は私より上手だ。
「彩姉さんって、おじさんのどこが好きで結婚したの?」
里紗ちゃんが聞いてくる。
「そうねえ、お父さんのようでもあり、お兄さんのようでもあり、そしてやっぱり旦那さんだからかな」
「旦那さんだから好きなのは当たり前じゃん」
「フフフ、そうねぇ。改めて聞かれると困るわね。それじゃ、恵子さんは義男さんのどこが好きで結婚したんですか?」
「私?そうねぇ、成り行きかな」
「それじゃ、お義父さんと一緒です」
「本当は、付き合って、3年ぐらいかな。里紗が出来たので、まあ、その流れかな」
「えー、私、出来婚だったんだ」
「僕は出来婚じゃないから」
「当たり前じゃん、あんた頭悪くない?」
「姉ちゃんよりは、成績良いんだけど」
「私が勉強を教えているからじゃん」
「いや、本人の努力だね」
「フン」
「フン」
「あんたたち、彩さんの前で喧嘩は止めなさい」
「姉弟がいるっていいですね、私も弟か妹がほしかったな」
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