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「OLなんやから派手やなくて、それでいて綺麗な恰好してなあかんとか、もうめっちゃ言ってくるんです。せやけどうち、あんまり強く言えるような性格ちゃうし、自分がしたいこととか言えんタイプやし。言われるままにしたら髪形とかネイルとか話し方とか、こんなんなってしもたし、全然うちの好きなやつと違うし」

 正直疲れました、と一気に言ってまたもやグラスを仰ぎ、空にした。

「ほんまのうちはこんなん違うのに」

 それでもそれを通せない自分が嫌なのだとサオリさんは言う。

「ほんまの自分を出すのが怖いんです」

「怖い?」

「受け入れてもらえるのかとか、会社とか関係とか考えると、ひよってまうって言うか」

「今のサオリさんは、本当のサオリさんとどう違うんですか?」

「え?」

「ありのままのサオリさんとは?」

「とりあえず、髪の毛はショートのマッシュヘアが好きやし、自分でもにおてると思う。香水ももっと爽やかな方が好きやし、ネイルも濃い色がええし、スカートよりパンツが好きやし」

 そう言った時のサオリさんの瞳は、キラキラと輝いているように思えた。

「なら、少しずつだけでも変わってみませんか」

「え?」

「自分を出すというのはとても怖いことだと私も思います。周りに合わせている方が随分と楽ですから。でも」

「でも?」

「無理をしていない、ありのままのサオリさんの方が、私は素敵に思えます」

「えっ」

「ですから、少しずつ変わっていくのはどうでしょう? 例えば髪形とか」

「髪形、ですか?」

「マッシュヘアのサオリさん、絶対に素敵だと思いますから」

 頭の中でありのままのサオリさんを思い描く。ほら、きっと恰好良くて可愛くて素敵だ。

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