第14話〜大東亜大騒乱 前編〜

大東亜帝国は昔から石油などの

鉱山資源に恵まれず、

その殆どを他国からの輸入で賄ってきた。

食料も例外ではなく、

主食である米以外は殆ど食料自給率が

45%未満なのである。

そんなこともあり、シーレーンの分断

などが起こったらそれこそ、大反乱や

動乱が起きかねない状態になると

予想されていた。

その最悪の事態は起きた────



霧の艦隊出現が初めて確認されたのは

カルス公国の輸送戦隊が大東亜へ物資を

輸送した時である。

その時の損傷した艦船である、

カールスルーエは大東亜で修理が行われ、

直ぐに帰投する手筈だった。

だった筈なのだ──

しかし、その修復をしている時にも

貿易船が襲われたという知らせが次々と

舞い込んでくるのだ。

結局、カルス公国は輸送戦隊8隻の帰港を

諦め、暫くは大東亜帝国に預けるということ

にした。

この貿易船が何隻も襲われている事態に

対して、国際海洋会議は、シーレーンの

分断はやむなしという判断を下したのだ。

但し、北方海域に限るという条件付きではあったが。

しかし、大東亜に続く海路は、霧の艦隊の

出現が報告されている海域ばかりである。

よって、古くから貿易に頼っていた

大東亜帝国は、物資面で完全に、

孤立したのであった。

これが、悪夢のきっかけになるのは

誰もが予想した。

しかし、ここまでとは────


動乱の始まりはカルス公国の輸送戦隊が

大東亜帝国の港に入港した

4日後の朝五時頃だった。

大東亜帝国最大の貿易港である、

縦須賀港。

輸送船へコンテナを積み下ろしするため

の大型クレーンが多く並べなれている。

そんな縦須賀港にいつものような

活気は無かった。

勿論、異星人襲来の影響もあるのだろう

が、それよりも問題だったのは

シーレーンの分断である。

繋留されている船舶は

カルス公国の輸送戦隊や

アメリカン合衆国の貿易船

などの、15隻だった。

周りには人気が無く護衛艦などを見張る

警備兵などもいない。

波の音、風の音

風がコンテナに打ち付ける音

繋留に使った鎖が風によって音を立てる

放置された赤と白の旗が翻る音

様々な音が起こる中、

人間が行動して発生する音など、

一つもなかった。


─辺りの様子を伺う視線が飛び交う─


そして、誰もいないことを確認すると、

遮蔽物から一斉に人影が飛び出してきた。

その姿は一般人そのもの。

しかし、手には軽機関銃や小銃、拳銃

などを所持している。

何のためなのだろうか。

すると、リーダー格らしき男が

辺りを見回した後、その集団の

先頭に立ち、そして止まった。

振り返り、自らを追いかけてきた集団

に目を配る。突如言い放った。

「我々は、無能の国から脱出する!我々は、自由求めて遥かなる闘争を始める!本来の我が祖国を取り戻すぞ!皆の者ついてくるがよい!」

と威勢よく放つと集団が、うぁぁぁ!

と歓声をあげる。

その集団は150人程である。

集団と、リーダー格の男は近くに

繋留してあった、カルス公国の護衛艦

「シュトゥットガルト」

に乗り込み、占領。

そして、機関を始動させた。

そう。軍艦強奪をしにきたのだ。

次に何をするかと思えば、

いきなり、前部甲板に展開している

VLSを開放し、発射。

「前部VLS開放。CIC指示の目標…」

「打ちぃ方ぁ始めぇ!」

目標は縦須賀市の市役所。

艦対地艦ミサイルは真直線に飛翔する。

「3,2,1…弾着、今!」

と言うと、市役所から黒煙が上がり、

崩壊してゆく。

この攻撃での犠牲者は15人。

これにより、狂乱混沌の


大東亜大騒乱が始まったのである


次回予告

「大東亜大騒乱 後編」

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