第10話〜絶望戦線〜
朝日の昇らぬ日など無い。そんな言葉が陳腐な嘘としか言いようのない。何故なら辺りはもう昼間なのに闇に包まれている。何時になれば終わるのか、分からず精神疾患を発動する者もしばしば。聞こえるものはエンジンの爆音と砲声と言った所だろうか。
「なっ、なんだあれは!!」
「にっ、逃げるんだ!化物だ!」
先のレーヴェリ作戦での失敗があり、第二弾のレーツ作戦がまた、前回と同じ場所、「レーダー戦線」で戦闘が行われていた。
辺りから聞こえる悲鳴とも取れる叫び。
ゴゴゴゴゴ…と鉄と鉄の塊がぶつかり合うような音。重さを感じさせる鉄の軋む音。全てが不協和音を奏でる。鼓膜に焼き付くあの音は恐怖の音、死の音と形容された。すると刹那。爆音と激しい振動、そして爆風、爆発閃光。鼓膜を破り、視界は無くなる。そして体は熱風と衝撃波でバラバラに砕ける。辺り物も何も彼もを焼き払い、吹き飛ばす。生き残ったものは奇跡的に一人居た。この情報は直ぐに通達されることになった。
さて、ところ変わりフライタン連邦共和国には政府機関とは独立した陸軍がある。これを独立陸軍と如何にもな名称が付けられている。この独立陸軍は世界の中でも最強クラスの陸軍である。一時期、謎の生命体(?)が現れた。それを人は深林棲戦車と呼ぶ。主に実現しなかった計画だけで終わった戦車や生産数が少なかった戦車などの形をしている事が多かったらしい。例を挙げればラーテやマウス、そしてよくクーゲルパンツァーの様なものも居たそうだ。ただ…機動力、防御力共に桁違いで、通常の陸軍では対処が不可能であった。そんな時に生まれてきたのが、戦娘である。彼女らは戦車の設計図であり、戦車を自分の意思で、自由に動かし、操作することが出来る。そう。戦車には何人も搭乗して操作するが、それをだいたい一人でこなせるのだ。しかし、補助役は必須なのである。謂わばメンタルモデルの様なものである(副制御は必要だが)。そして、彼女達を纏め、総括するのが独立陸軍である。彼女達は人間の様に意思を持ち、人間として、生活を指揮官そして、仲間達と共に暮らしている。
この独立陸軍にレーダー公国守備隊第一大隊が全滅したこと、レーダー公国守備隊第二大隊の生存者の証言が伝えられた。
そして、この独立陸軍の第二大隊にはレーダー公国周辺戦域の殲滅作戦を言い渡された。
指揮車はエルナ・ティーガー(ティーガーII)である。
彼女達は勝利は絶望的とされているレーダー戦線で勝利を掴むことは出来るのか……?
次回予告
〜第2章突入〜
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