第4話〜アルメニア作戦〜

整備兵達が、アルメニア作戦の為に忙しなく動いている。

アルメニアとは、先の攻撃で崩壊したカリムズエラ公国の、国教である「カーエルナ教」の「カーエルナ章典」にある、処女神であり、太陽神である、女神、アルメニア・スェービコフに由来する。

さて、UAV120機が滑走路に置かれ、それぞれ、飛び立って行った。その様子を見た整備兵や、管制員が歓声を上げる。

その頃、臨時設立空軍作戦司令室ではこんな会話がされていた。

「ベンジャミン司令!UAV全機離陸しました!これより、強行威力偵察作戦、通称アルメニア作戦を開始します!」

と、アメリカン空軍の参謀が言う。

「ご苦労!ではまず、3Dプリンターとモニターの電源を入れ、報告を待とう。」

と、ベンジャミンは言う。

「了解しました。接敵まで38分です!」

30分後……

120機のUAV部隊は、両翼に太陽の光を受け、輝かせながら、飛行する。前方には黒い飛行物体が確認できる。現在の所この飛行物体を爆龍と呼んでいるらしい。その爆龍に接近する。機体下部にある、赤外線カメラで、撮影を行い、それぞれ120機の映像データと照合し、3D模型や、映像をリアルタイムで作り出すことが可能である。先程、3Dプリンターと、モニターの電源を入れたのはその為である。これにより、敵情がより早く掴め、作戦立案も容易になる。

5分後、接敵予想より少し早く接敵。

偵察を開始。全120機のデータを照合し、3Dモデルが作成される。しかし、作成されるのはまさに氷山の一角である。しかし無いよりはマシだ。さて、アルメニア作戦参加機第25号機が、敵艦に接近。すると、いきなり艦の前方部分の一部が開き、そこから600機程の有人(?)戦闘機が飛び出してくる。すかさず、偵察機隊が、500kg爆弾を発射。戦闘機に命中するはずだった…

しかし、シールドが張られているらしく、機体の1m手前辺りで自爆する。偵察機隊はすかさず、敵艦に向かい、爆弾を全弾投下する。しかし、敵艦にもシールドが張られているらしく命中弾は零。偵察機全機が散開するがそれを敵戦闘機が遊撃するため追いかけてくる。謎の緑のレーザー弾を発射。1発当たるだけで撃墜される。次々偵察機が撃墜されていく。所詮はAIと言ったところか。知能を持つ相手の前に呆気なく散ってゆく。敵戦闘機の練度は物凄く高い。連携の取れた編隊行動。役割分担。まさにエリート級部隊と言ったところだろうか。偵察隊はすかさず離脱にかかるが、敵艦からの激しい対空砲撃(正確に言えば単なる砲撃だが)が開始され、25号機が接近してから僅か五分の間で8割が撃墜されてしまった。結局帰還できたのは41号機56号機89号機119号機の4機のみである。敵機撃墜は0機。敵艦への損害無しという人類側の大敗となった。しかし、使用兵器が有人機ではなかったのが不幸中の幸いと言えるだろう。

偵察機が帰投したアーメルノ空軍基地は沈痛な空気に包まれていた。帰投した偵察機はボロボロ。最後の力を振り絞り飛んできたということがよく分かる。直ぐに、修復を開始する。しかし、損傷具合が酷く、修復には暫くかかるだろうとの試算が出た。

司令室では、

「…戦力の差は歴然だな…さてどうするか。」

とアメリカン空軍参謀が言う。すると

「まずは敵のシールドの解除を行うことが最優先事項となります。コンピュータウイルスを送信し、敵艦及び敵機のシールドを無効化するという作戦を立案致します。」

と、大東亜空軍参謀が語る。

「プログラムは出来ているのか?」

何処からか声が聴こえる。

「いいえ。なので、幾つかのコンピュータウイルスを複合させた、複合コンピュータウイルス仮称をゼネラルウイルスとも言いましょうか。このウイルスを敵に向け送信します。」

と言う。ベンジャミンは

「分かった。とりあえずやってみよう。何が必要だ?」

と尋ねる。大東亜空軍参謀は

「1機のステルス爆撃機にコンピュータを積み、敵艦の近く1kmを飛行するだけで任務は完了です。しかし、この作戦には常に、撃墜される可能性があり、また、この作戦は有人爆撃機でなければ成しえない作戦となります。」

と少々声を細め言う。するとベンジャミンは

「これは志願制か…?」

と言うと、何処からか

「カミカゼだけは勘弁だぞ!」

と聞こえる。すると大東亜空軍参謀が怒気のこもった声で

「飽くまでも、この作戦は後の作戦のためには不可欠な作戦です。まだ私達は負けた訳ではありません。カミカゼなど惨めなことなどさせません。私がそして、世界が許しません。」

と決意を込めた声で語る。

「わかった。すぐに用意する。作戦名は…アマテラス作戦でいいか?」

とベンジャミンが尋ねると、

「ええ。構いません。今度こそ太陽を昇らせるためにもその作戦名は相応しいでしょう。」

と大東亜空軍参謀が言う。さらに、こう言う。

「先の無人機の撃墜は決して無駄ではありません。我々に貴重な情報を与えてくれたのです。その情報を元にこのアマテラス作戦を必ずしも成功させましょう!」

すると、その場にいた全員がおー!と言う。幸いまだ、士気は高い。しかし失敗続きになると、士気は必ず下がる。絶対に成功させなければならない。この星の未来の為にも…!


場所は変わり宇宙船により、闇に支配される北方海域。またここにも巨大な軍艦が現れる。しかし、この軍艦はどうも旧式に見える。だが、色彩は鮮やかで、黒に近い灰色の船体に赤色のライン。周りは霧に囲まれ、まるで、霧を纏っているかのようだ。これを見た漁民は霧の艦隊と恐れた。この艦隊は戦艦6巡洋艦18駆逐艦120その他艦艇測定不可。の大艦隊である。この不気味な大艦隊は北方海域を抜けるため、進路を東へと執った。この艦隊が後にどんな影響を及ぼすか、その時は誰も知らなかった。いやこの艦隊の存在する知らなかった…


次回予告

「霧の艦隊」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る