第3話

3.死神の秘密



目の前に現れた親は、少し目を赤くしていた。そして親は私を見るなりこう言った。

「何バカなことしてるの!あなたがこの世からいなくなったら私達はどうすればいいの?」

久しぶりに母の怒っている姿をみて私はホッとした。

「雫がいじめられていることは知っていたけど、なんでこんなことしたの?最近、学校は行ってなくて私と話す時は元気だったじゃない。」

母は涙が溢れもう声がカラカラだった。

「ごめん、お母さん、でも私みたいな人間がいるとお母さんが困るでしょ。私が生きてたって迷惑にしかならないでしょ。」

私はお母さんに本心をすべて言ってしまった。お母さんは私を見つめ、少し間を開けて私にこう言ったのだ。

「そんなこと、あるわけないじゃない、雫がいたから私たちは…」

お母さんが涙をながし、声が詰まっている時、ずっと黙っていたお父さんが口を開いた。

「雫、親っていうのはな、無条件で子供を愛するものなんだよ。だから、迷惑なんて思わずに私たちにたくさん迷惑をかけなさい。必ず私たちはそれを受け止めるから。」

お父さんの言葉に私は自然と涙が流れて来ていた。…お父さん達が私のことをこんなにも思っていたなんて。

「ありがとう、ありがとう…」

涙が溢れてお父さんとお母さんの顔が滲んで見えた。お母さんは私を抱きしめ、もうこんな辛い思いはさせない。と、少し声を震わせて私に言った。お母さん、お父さん、今までありがとう。私は心の中でそう呟いた。


お母さんとお父さんが病室から去った後、私は病院のカウンセリングを受けていた。カウンセリングの人は私の話をよく聞いてくれて本心をほとんど話せた。そして今日の診察は全て終わりこの日はそのまま入院することとなった。


夜、私は慣れない寝床で寝ることとなったため、ずっと寝付けないでいた。ふっとため息をつき布団に潜った。さすがに布団を被っていないと凍える寒さだった。

今思ったのはここは夜の病院ってこと。幽霊とかいるのかな?私は小さい頃から幽霊とかそんな系が見えるから余計怖かった。そんなことを考えるとすごく寒くなった。布団の中でくるまっていると今までなんだったんだと思う位早く寝てしまった。


「ここは?」

見慣れない光景が目の前に広がっていた。空は明るく、オレンジっぽい色をしていてなんだか今まで私がいた世界とは違う感じがした。

それは気のせいじゃないと知るのはそれから時間もあまりかからなかった。なぜなら、目の前にいたのは、後ろ向きに立っている桜だったからだった。桜は私に気づいていないのか、後ろ向きで何かを見つめていた。

「桜?」

少し桜を見た時、私は胸がドキドキしたような気がした…私は独り立っている桜に話しかけた。振り向いた桜はどこか悲しげな表情をしていた。

「珍しいね、生きている人が2回もここに来るなんて。」

そういえばここは前、桜と話したところにそっくりだ。

「雫、やっぱり自殺したこと後悔してる?」

桜がいきなり自殺のことを聞いて来たので私は少し戸惑ってしまった。

「そ…それは…。」

急に聞かれたことに答えられず私は黙ってしまった。

「まぁ、急に聞かれて答えられるわけないよね。私が自殺した時は、親が悲しんでいるのを見て初めてことの重大さを知って私は涙を流したんだ。」

桜の言葉に私の胸はズキンと音を立てた。私も親に迷惑をかけたんだと、その事実が私の心に重くのしかかってくる。

「雫、絶対に雫は自殺で死んだらダメだよ。」

桜は話しているうちにも涙が頬をつたって流れていた。

「大丈夫?桜、何かあった?」

私は泣いている桜に優しく話しかけた。

「大丈夫、私のことは気にしないで。」

桜は私にそう言うが私は桜の悲しい顔が見たくなかった。

「桜!私達は親友でしょ。だったらなんでも話してよ。私は別に桜を変だとは思わないから。」

桜は涙を流しながら私に言った。

「ありがとう、やっぱり雫は優しいんだね。」

桜は私に涙ぐんだ笑顔を見せながら私に言った。

「私ね、自殺したでしょ。自殺した人はね、完全に未練を断ち切れなくて成仏されないんだ。だから私は死神の仕事をするか、下界をさまよっているか、しか選択肢がないんだよ。」

信じられない事実を告げられた私は桜の悲しい気持ちを全てわかった気持ちがした。

「でもね、死神の仕事をしてたから雫にあうことができたと思うの。」

桜が死神になることを決意したのはただならぬ覚悟があったからだろう。

「桜は強いんだね。私なんか桜みたいに強くなれないよ。」

そんな言葉を発した私を桜は見つめた。

「そうかもね、でもね私が強くなったとしたならば死神になったあとだよ。自分の死のことの重大さを実感したからね。これに近い経験をした、雫も強くなると思うよ。」

そうか。私は桜の話に少し納得していた。なぜなら、自殺未遂をした後から今を比べるとかなり違うと思う。気持ちの面でも、体の面でも。でも、それは桜のおかげなところが多い気がする。なぜなら桜と話した後、気持ちが明るくなり出したからだ。

「ところでさ、雫はなんで今回この世界に来れたのだろう。」

「えっ、普通の人じゃこれないの?」

「来るとはしても前の雫みたいに自殺未遂のひととか病んでいる人くらいだもん。雫は病んでいなかったみたいだし。」

衝撃の真実。私のようなケースは初めてらしい。

「ねぇ、雫って幽霊とか見えるの?」

私はなぜか見える。って言うか桜も私といる時見えてるって言ってたな。

「見えるよ。って言うか桜も見えていたんでしょ。」

桜は躊躇もなく首を縦に振った。

「じゃあ納得いくな。雫がこの世界に何回か来ること。」

とういうことかよくわからなかった。なぜ全く別の死後の世界へ来てしまったのか。

「多分、雫は霊感が高いんだよ。その高い霊感のせいでこの世界にに引き寄せられてしまったのかもしれないね。」

「そうか、やっぱりそのせいか。」

私は分らないくせに知っていたような口の聞き方をしてしまった。

桜は気にも止めず考え事をしていた。そして、桜は「あっ」とひらめいたような声を出した。

「雫、私と仕事する気はない?」

急に聞かれたその人ことに頭は真っ白になった。

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