第2話
季節はずれの桜の匂いに私は起こされる。私は死んだのだろうか。それともしんでないのだろうか。
「何かお困りで?」
急に話しかけられたので私はびっくりしてしまった。少し人間とはちがうかんじのどこか聞いたことのある声で話しかけられた気がした。
「どなたですか?」
私は恐る恐る聞いた。
すると思いもよらない答えが返って来た。
「覚えてない?私はあなたより先に死んだいじめられっこだよ。」
私はすぐに分かった。桜だ。
高橋 桜。桜は私がいじめられる前いじめのターゲットにされていた人。そのいじめの主な主犯は稲穂 波、大山 瞳、高崎 明美の3人だ。
しかし、いじめはその3人だけでは終わらず、その時の小学校のクラスいや、学年全体に広まり桜はすごく苦しい思いしてしまい首を吊って自殺してしまった。その時いじめの犯人が断定していなかったためさっき言った3人にはなにもなかったのだ。
そういう過去をもっているひとだった。
「桜、私って死んだの?」
桜は首を横に振った。
「雫、まだあなたは死んでないよ。だって死んだ人は必ず閻魔様のところに行くことになってるんだ。でも雫は、えんま様のところへ行ってないし死人リストに載ってないから生きてると思うよ。」私は驚いた。「じゃあ、今どうやって桜と話しているの?」
「それはね、雫が死にかけている状態で負の心が強過ぎてあの世と雫の意識が結びついてしまつたからだと考えられるよ。」
あまりにも非現実的過ぎて内容が頭に入ってこなかったが桜が言ってるから本当なんだろうと思った。
「桜、私は桜に謝りたいんだ。」
桜はびっくりした顔をみせた。
「えっ!雫が謝ることなんてあった?」
私は思いきっていった。
「あの時、いじめを止めないせいで桜が死んだんだ。私が止めていたら何かが変わったかもしれないのに、」自然と涙が溢れてくる。その時、桜は私の肩をたたいて言った。
「そんなことないよ。あの時雫が止めたって変わらないよ。それよりもあの時、私と一緒にいてくれたことが心の支えになったんだよ。だから気にしないで。」
桜は優しい笑顔で私の心を照らしてくれた。
「私ね、雫に感謝してるんだよ。だからあの時みたいに私がそばにいてあげる。」
桜の優しい言葉にさらに涙が溢れてくる。
「ありがとう、本当にありがとう」
私は現実か幻かわからない状況の中、桜の膝下で思いっきり泣いた。
時が過ぎ私達は二人で他愛もない話をしていた。
「桜、ききたいことがあるんだ。」
「なに?」
桜は笑顔で私の方を向いた。
「桜ってただの死人?」
桜は困った顔をし、「どういうこと?」といった。
「えっとね。私は桜はね、桜がどこか私たちよりも異質に感じたんだ。」
桜は少し笑いながら優しく答えた。
「鋭いね雫。そうだよ私は他の人達とはちがうんだ。」
桜は少し間を開けて言った。
「死神ってお仕事をしてるんだ。」
私は驚いた。じゃあ、死神ということは人の魂を奪ったりするのかな。
「死神っていうお仕事はね、死者の魂を無事にこの世界へ運ぶ仕事なんだよ。」
「死神ってイメージと違う仕事するんだね。」
「まぁね。でもあまりよくはない仕事だよ。だって自分が死んだことを認めない人とか、私について来てくれない人とかいるもん。」
つまりめんどくさいということだろうか。なんだかんだで桜は死人になっても変わらないんだなと私は思った。
「どうして死神の仕事についたの?」
私は思いきって言って見ることにした。
私は桜が難しそうな表情を浮かべていたのでこれ以上は聞かないことにした。しかし、意外に桜からはなしてきた。
「ただ、一つだけ言えることは、私はこの仕事以外にやれることがなかったからかな。」
そうだったのか。でも桜が元気いっぱいにいてくれれば私はどんなでもよかった。
「あれ?頭が…」
急に頭がクラクラし始め意識が遠のいて行く
「雫…もう別れの時間だね。」
やだ…別れたくない。
そんな思いとは裏腹に意識は薄くなってきている。
「雫、絶対に命を無駄にしちゃダメだよ。自殺なんかしたら私みたいに………っ…」
桜の話し声が最後まで聞けず私は意識を失った。
急激に明るくなった天井の光がまぶたを閉じている私の目にも伝わってくる。まだ起きたくない。でも天井のまぶしい光に耐えきれず少しずつ目を開けた。
それに気づいたのか私の近くにいた看護師らしき人がすぐに誰かを呼びに行った。ここは病院か…。
駆けつけた医師らしき人が私に話しかけた。
「私の声聞こえるかな、私は医師の松村と言います。雫ちゃんがね手首から血を流しているところをお母さんが発見して病院に来たんだよ。」
そういうことか、お母さんさえ私の死にたい気持ちを邪魔するんだ。
こう思った時、急に桜の最後の言葉を思い出した。
(雫、絶対に命を無駄にしちゃダメだよ。自殺なんかしたら私みたいに………っ…)
最後はなんて言っていたんだろうか。でも一つだけ言えることがある。私に絶対命を投げ出してはダメと言いたかったのだろう。でもそんなこと私にできるのだろうか。だって投げ出してはダメということは、そういう理由があったとしても絶対に耐え抜けということだ。心が弱い私にそんなことができると思っているのだろうか。
「雫ちゃん、聞こえるかな」
医者の声、今は応答する気分ではなかった。だって死に損ないの私が恥をかくだけだと思ったから。
「一応、意識はあるんだから親に連絡をして病院に来てもらおう。」
医師がそういうと、看護師と一緒に病室から出て行った。
私は親にいざ会うとなると緊張するな。どんなことを言われるんだろうか。手首を傷つけた理由?それとも慰めの言葉?まぁ、単に親と話すのが怖かったのだ…
そうこう考えているうちに親は私の目の前に現れるのだった。
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