第4話
六曜館の渋谷店は九十坪あった。故に客席は百九十席あった。
御子柴さんが従業員の配置を決めた。私は調理場担当だった。御子柴さんが、コーヒーを立てる場所に付いた。
そこが一番全体が見えた。
一週間ほど営業していなかったので、客の入りは悪かった。求人募集の広告も出した。
御子柴さんは、会計士の試験にあと一教科受かれば、合格するところまで来ていた。
彼が合格するまで、一年を要した。六曜館で、彼は全ての科目を合格しようとしていた。
彼は既に九年間もその試験に要していた。中央大学の商科を卒業して一貫して狙っていた。
司法試験よりも難易度が上だと聞いていた。昭和五十八年に私の店へ来たときは、「韓国の大手企業の会計監査に行くところだ!」と意気揚々と出掛けたものだった。
その御子柴さんのトップとしての価値は、喫茶店のトラブルを大人の次元まで上げたことである。
それ故従業員同士の中傷誹謗が、無くなった。皆の思いは、月間の売り上げが四百万円になることだけだった。
しかし、なかなか客は入ってこない。御子柴さんの意見で、周辺の企業へのチラシ配布から始めることとなった。
とにかく、六曜館が再建したことと、出前を取ることにした。我々のメンバーを見て、社長は「これで安心できるメンバーだネ」と言ってくれた。
売り上げが増えるまでの三ヶ月間は、私はトイレ掃除に専念した。御子柴さんが居てくれるだけで、私は落ち着いていられた。
私は朝から晩まで、ただトイレを磨くだけ。三ヶ月も毎日トイレ掃除をしてると、「これは内装工事をしたように新品になったね!」と社長を感嘆させるほど綺麗になった。
天井も床も壁もマジックりんで磨いた。私にも、内装をし直した様に見えた。
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