第43話
立ち迷う葉巻の紫煙の芳しさに、蒼然とした顔色に艶が戻った。痩躯に血が走るのを覚えた。 形容語名詞化
衣装を整えるのに不備の小汚さがないよう、スタッフに念入りに達意した。蒼古とした材料は組み合わせによって見栄えが変わる、繊手をうまく調和させるのだ。 形容語名詞化
達観しきった賢明な潔さが音色に表れている。もう一度この曲を聞きながら眼下を達観してみよう、空々しい感懐を取り捨てて。 形容語名詞化
たっての誘い断っていると、彼女は青いワンピースの少女に手を引かれてしまった。誰かに焚き付けられて、手弱女は強情になったんだぜ。 破調法
ハットを被った男はテーブルにだらりと腕を置いて、仲間の失態から脱漏した情報について、身内の者を強く責めた。猛々しい譴責に諾否は問われなかったのよ。 破調法
白いレースの彼女としては傍を立て切って欲しかったが、仕切りとなる物を都合できる所でもないし、障子で立て切ることも望んだが、それはより難しいことだった。それでも彼女は態度を変えずに立て切り続けだ。窘める侍女の言う事を聞かず、珍妙な顔つきをしていたでござる。 破調法
小机を挟んで座っているロックンローラー二人は、立て引きに飽きて渋い表情を浮かべている。水魚の交わりも片方が濁ればもう片方は生きていれない、立て引きもほどほどにするべきだ。 長い間の抵触が互いの肌合いをざらついたものにして、共の理念を嘲罵させているのだ。 パロディー
金髪の黒人の子供は農作業をしている間、雲についてたばかってばかりいたので、母親にたばかり、岸辺に座る見窄らしい二人をたばかることを教わった。あはれともいふべき人は斧で打て、遅疑することなく、さっそく遅鈍な輩から搾取する準備を始めた。 パロディー
胸毛の濃い男はサングラスを駆けたまま風呂に浸かり、たまさかの歌手デビューとたまさかの好売上を思い返し、葉巻を吸って悠々燻らせた。朝ぼらけ風呂の朝靄猛々しき、などと珍談としかならない陳腐な文句を謡い、彼の思惑にのぼらない万一の凋残がすぐ迫っていることを知らずにいた。 パロディー
髭の剃り残った男は岩根に腰掛けて惰眠の最中だ。惰眠なこの男を家族は使える者だと罵っていた。打擲しても反応しない、その度に家族は嘆息をつく。 反語法
目を見開いた男の写真を彼はためつすがめつ見尽くした。彼にとって化粧の濃さは綺麗すぎて、胸がむかついて吐き気を感じた。端麗で嘆賞しにくい写真だ。 反語法
惰力に従い彼は習慣通り船に縄を括った。歪んだ櫂を矯めることなく、変哲のない仕事をこなす。それが彼にはつまらない。毎日新鮮な気持ちで感謝している。船の中央に端座して、神聖な日々を追想する。 反語法
たわいを失った老人は杖をついて、小道を歩き、河辺に沿い、林を抜け、丘を上り、崖から落ちた。老衰による凋落に堪えられなかったのか、若い時は沈毅な性情だった。 反漸層法
彼の立てた代案が議会に断案されると、泣いて、喜び、頭を下げて、首を吊った。友人はそのことを痛嘆し、衷心を込めて案を実行した。 反漸層法
世間から弾劾され続けて、ギタリストは巨大な虫眼鏡を肩にかつぎ、道路を駆け抜け、線路を飛び越え、飛行場に侵入し、潰れた。担いだ物で地勢を観察するつもりだったのだろうか、バンドの内乱を知悉していたのかもしれない。 反漸層法
広告戦略を談義する、マーケティング理論を談義する、会社法に反した事例を談義する、最高責任者に談義する、直裁を推奨し、追尋を基本とする。 反復法
彼ら映像制作チームは今度のプロジェクトの端倪を端倪する。先月亡くなったプロデューサーを追慕しつつ、高鳴る心地を押さえて。押さえて。 反復法
木立の下に跪坐して端厳に構える、木立の下に跪坐して端厳に構える、彼は首を刎ねられる。断想は血しぶきとなって飛び散り、断滅した。 反復法
彼らは腕を組んで口を揃えて言う、ドラッグパーティーに来て端座しやがって、行儀の良い野郎だ。端座することなどない彼らにとって、短夜の内に尻をつけるなど理解できない、喋喋に罵詈をぶちまけているばかりだ。 皮肉法
まあ、なんて端然とした立ち姿だろう、あんなことしておいて、立派な人だこと。あの人の陳情を聞いても、何一つ陳弁しないんだから。 皮肉法
ガードレールに手をついて、段だらの斜面を転がりたいと彼女は言う、一緒にドライブして絶勝の頂上に来たのに、この人は大きなことを言うなぁ。あまりの美観に直覚がおかしくなったのかな、眺望できていないんだ。 皮肉法
代表の二人は酒を飲んでからキャバレーで談判した。その結末を聞いた誰もが代表者を非難した。突き合わす意味などどこにあるのだ。あっさり釣り込まれてしまったのだ。 諷喩
三歳児の少女は欲しがっていた物が手に入らないとわかると、短兵急に泣き出した。教えられる前に本能が生きる方法を編みだしたのだ。貞女も涙を巧みに使いこなし、艶気を見せずにはいられないのだ。 諷喩
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