第38話
空模様を見ては節節散歩する男が連れるのは、白黒の豚だし、節節往来で会う偏屈なおっさんの連れているのは、角の長い牛だし、ロバにまたがる女は籠を頭の上に載せているし、ロバは間抜けだし、自分は何をするにも蹉跌してばかり、犀利な頭脳でも落ちていないかな。 列挙法
組んだ腕が柔らかい二の腕に食い込む女が右上に、その左は蛇の刺青が胸に彫られた女性で、左下が顔の半分に手を当てている唇の厚い女がいて、それから右下が截然とした崖を思いつかせる、下半身の太い裸の女性がいる。四季宛らに截然とコマは分かれていて、観る者を渾円とした地球を感じさせ、美しい声音が聞こえてくるようだ。 列挙法
舌端が軽くなるから言いたくないが、真正面の自画像を描くのはナルシストだ。どんな抗弁をしようが、口辺は締まらないだろう。 暗示的看過法
蝶の姿容を型作ったドレス姿の婦人を想像していたわけでなく、説破される自分を描いていたわけで、顔が強ばってきた、些か事事しくなりそうな予感がする。 暗示的看過法
まさかその女性が、かささぎの舌鋒に惚れたなんて言えない。自分の目の当たりにした光景を主張して鼓吹したいなんて思わない、村々に喧伝する気もない。 暗示的看過法
木によりて魚を求めるわけにはいかない、そのままではうまくいく可能性は絶無だ。小意気に構え、肯綮を見定めて事を成すべきだ。 引喩
取り越し苦労に取り殺されるわけにはいかない、しかと十分に説諭して、少しでも心配かけないように子供を教育したほうがよい。巷説を信じるのはほどほどにして、孝心を持つように正しい道に進ませないと。 引喩
ほら、亀の甲より年の功って言うでしょ、進退の瀬戸に瀕しているんだから、素直に助言を求めるべきだよ。いつまでも才弾けていられないし、一人でを再転する方法を挟んでもうまくいかないって。 引喩
結婚に瀬踏みはできない、戦場に待ったはない、女性は屹然と目を見据える。詐術は効かない、聡い女性はたくましい。 隠喩
書物を開いて詮ずる、段段に腰掛けて詮の結果を詮する。詮は雲の紐とひらり、詮は見えない。外からは繁華街のさざめき、密かにさしぐみ頬を濡らす。 隠喩
先鋭な政治家の手による写真にしては、素晴らしい。先鋭なマンドリンを抱えて、陶然とした目でこちらに微笑みかける。蠱惑の被写体か、高揚する花の香煙に。 隠喩
口にパイプを加える男が先覚者なのか、広場でぴよぴよ、内容はぐろぐろ、小さな籠の世話人をぺちゃくちゃ、何様のつもりだろうか、またおまえが何様なのだろうか、狡い話を耳にして、頭はぐろぐろとしてくる。弧身は宝だろうか、孤愁は得難いものだ。 隠喩連鎖法
顔が潰れたって喚いても詮方ないさ、話が槍となり、もしくは槌となり顔を潰しても、怒りは収まらず、悪気のない殺戮をするのだから、カップに謝れ、雑談を忽諸にしても非礼はない、心柄がくすんで濁っているのだ。 隠喩連鎖法
詮議しているつもりが、ただの愚痴の言い合いをして性情を貶めているのだ。不平ばかりで口が曲がり、口の端はずべらになり、口辺から蠅を飛ばしている。糞に集まるのは言葉ばかりでない、腐乱した脳髄の歩兵だ。詮議されるのはだれ、言下に伸されるのは、些少の病人か。 隠喩連鎖法
飼い犬に手を噛まれる、そんな不手際な女が嬋娟なはずはない。人からの噂をさのみ信じるべきじゃなく、錯落した話の中から本物を見分ける眼を養うのだ。 引用法
閑古鳥が鳴くと言っても、千載も鳴き続けるわけではないだろう、どうにか続けていれば閑古鳥もくたばるさ。 引用法
昨日の淵は今日の瀬というから、前栽に咲いている白い花に水をやろう。神経を逆撫でにする出来事が多い、せめて花には懇情をもって対したい。 引用法
四角い眼鏡をかける男の証言では、台所にいたのは、ゆで卵を剥く際に殻に白身がついてしまい一緒に剥がれてしまったような頭の男だということで、試しにゆで卵を実際に剥くことにした。作業が漸次進むと男は昏迷しているようになり、現実と空想を混同しているようだった。 迂言法
先蹤から習うにしても、くちづけのことをちゅうというような男の人の実例は習わなくていいかと生徒に問われた。高邁ぶっているくせに、言葉が軽々しいから生徒の言う通りだと先生は答えた。 迂言法
閑談が聞き苦しい。酒に酔っているのもあるからいらいらする。僭上は慎むべきだ。いらだち。それでも口と頭がピンクに染まっているような男だと見下げるべきではない。自分の価値をその分下げることになる。心遣りを見つけるべきだ。卑賤を誇示してはいけない。落ち着くべきだ。 迂言法
おお、戦塵の最中に輝く赤子が生まれた。惨禍を糧に生まれた希望の光か。 詠嘆法
おい、然諾しておいて何だあの顔、讒誣して俺たちをはめる気じゃないのか、見ろ、嗤笑してるじゃねえか。なんだよ。 詠嘆法
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます