第36話
これはすべっこい布だから、氷よりも滑りやすいぞ。虚誕を言ってるわけじゃないぞ。 誇張法
得意な技能は何か尋ねると、面被りクロールが得意と言う。説明してもらうと、素面でなく、屋台で売られている面をかぶって泳ぐことらしい。別に酒に酔って適当なことを口にしているのではなく、いたって素面であり、素面は甚だしく見目良い。それでいて虚静なところもある。 言葉遊び
鳥はずるけた顔して算盤を取り、色とりどりの取り持ちをする。動きすぎて結んでいた前掛けがずるけて落ち、急いで取り直した。口裏ばかり合わせていたせいか、嘴は屈曲していた。 言葉遊び
擦れっ枯らしと評判の胡麻塩頭の老人は、芥子を食べ過ぎて昏倒したらしい。繰り言ばかり言っていたから、舌が辛くなっちまったんだ。 言葉遊び
観衆を飽きさせないためには、寸陰だって油断できるか。見た目には浮薄な気風があるが、口の端に礼節を感じられる。 修辞疑問
寸暇も休むことなく働けるだろうか。苦衷を逃れようと、頬杖をついて設計士は思案する。 修辞疑問
黒いドレスの男に寸毫の虚飾があると思うのか。彼の進展にあった苦渋を察すればわかることだ。 修辞疑問
死んだ屍のほっつき歩く刺繍の声価は高い。激情を騒ぎ立てるぞ。 冗語法
その窓からはフラスコや香水の空き瓶を透かして、盛観なパレードの盛り上がりが見れるはずだった。下卑た喧騒を遮断して。 冗語法
閑暇な清閑のうちに不浄な人形を作った。皮膚の毛羽立った形骸が怖気立たせくれる。 冗語法
馬の隣に精悍あり、ベレー帽が、背筋伸び、健脚持つ。 省略法
マントのみ、裸、彼性急に、男を転がし足蹴する、軒昂したとばっちり、それか側杖。 省略法
高架下を歩き、清興を汚す手段を思索し、道に躓き、賢哲、肯綮は見つからず。 省略法
月夜に平原を歩くと清光がさやさやわたしの足下を照らす。火のもとで酒を一杯飲みでもしたら、号哭してしまいそうだ。 声喩
ぽんぽこぽんぽこ、スーパーの従業員の間で卓球は盛行していて、昂然と試合する者が大勢いる。 声喩
叔父は困ってしまった。正鵠を間違えて論断したので、血にまみれた布切れを持ってひいひいしなければならなかった。剛腹な気質が災となった。 声喩
酒を飲んだり、歩いて体を動かしたり、美術品を鑑賞したり、頭の働きを戻すために色々と刺激を受けることをしたが、失った精根は回復しなかった。それが昼寝しただけで戻ったのだ、それまでの懸命は何だったのだろうか。 設疑法
知り合いの専門家に交差点の角にある古びた建物の構造を精細に説明してもらったが、一見したほうが詳しい事情が飲み込めた。人の話はまず最初に聞くべきだろうか。 設疑法
七分に髪を分けた男の顔から生色が見られないと友人は言ったが、彼の親類に災禍があったのに、どうして生き生きとしていられるだろうか。 設疑法
これからの時代は手鍋が必要だと、以前から成心していたが、その予想は何の根拠もなく、不思議なことに気づけばそう思っており、むしろ金稼ぎをしたいという欲が成心に変わったのだろう。おそらく賃金の低い労働に困じていたのだろう。 接続後多用法
その親子の生活の一場面を描いた表現は清新と噂高く、なので噂を聞いた人々が集まり、かつ人の流れにたまたま付いてきた者も多いので、そういうわけで大勢の者がギャラリーに押し寄せたが、しかし全員を収容するだけの容量はなく、またそれを観るのに時間がかかるので、要するに全員は入れなかった。それに館長が荒怠しきっていたので、なによりも働く気力がなかった。 接続後多用法
精髄をつかんだ、しかし勘違いしていた、それでも諦めず、それから再び勉強して、ついに高遠な技芸の境地へたどりつくことができた。 接続後多用法
ゆっくりと登っていくトロッコに乗り込もうとしたら、足を滑らせて線路に顔を打ちつけてしまい、前歯を折って夥しい血が溢れるのを、コウモリは嬉しそうに上空を回りながら見下ろしていた。生々とした少年は自分の歯を手につかみ、コウモリに投げつけると礫は羽を穿ち、あえなく落ちてしまった。血にまみれた顔をにやつかせて、コウモリの頭を思い切り踏みつぶした。形影は無残な光景を静かに写す。 漸層法
睫毛の長い青年がオープンスペースで食事をしていると、キッチンに言葉遣いの悪い男がやってきて、調理していた物静かな男に声をかけて、テニスを観に行く話をした。決勝戦だから観に行こうというのを聞き、当日のチケットは買えないことを知ってい睫毛の長い青年は心の中で彼を蔑むと、キッチンからさらに世間知らずな会話が交わされて、ダフ屋がでるやら、たぶん買えるんじゃないらしい軽薄な言葉が大きく聞こえ、整斉さを感じ無い男の雰囲気に、軽微な頭の痛さを覚えた。 漸層法
右手から水鉄砲を撃たれたので、不意をつかれた少女は手で防ごうとするも遅く、左目の眼睛に勢い良くぶつかり、そのまま眼球を貫通してしまい、肉が飛び散り、液体が眼窩から溢れて砂の地面に垂れて、小さな団子を作るうちに、水の弾は脳に達して、過度な空想を頭に思い描かせて、光焔を夢見て倒れた。 漸層法
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