第19話
刑余の者は垂涎するも、刑余め、玉を失っても魂は失わない、血は枯れないぞ。 比喩
すげない態度の女の事情を推し量れば、許せないこともない。貧民街に螺子で係留され、血肉を捧げて男を喜ばしてきたのだ。 比喩
柱に隠れて筋骨の逞しい背中を見せる人に、稀有な雄牛の剽悍さが見える、生き血に騒ぐのだ、稀有に貫かれて白壁を彷徨う。 比喩
恋の徒花はいずこへ、炎は気疎く見えなくなり、気疎し草原で荒涼と風に吹かれ、気疎い孤独に身は辛気に募ってくる。 諷喩
その絵には激甚な人の争いが行われている。痩せこけた裸の人々が槍と盾を振りかざし、焦燥して揉みくちゃになる。淀みのイトメは絡まりやすい。 諷喩
下根の者は衰弱する。根の腐った木は立ち枯れる運命だ。 諷喩
笠をかぶる女性はけざやかに恥じらいを見せて、頼りがちに男性を見つめる。笠に陰る面は密やかに想いを寄せて、慎み深い気色を相手に伝える。 平行法
風が地を払い、蒼然とした原っぱに旅愁が気色立つ。くさいきれが鼻をつき、懐での男は飄逸に気色立つ。炊飯の芳香が煙を燻らし、振り返った小僧の腹は気色立った。 平行法
白線は飛び交い化生する危うい瞬間を捉える。赤い斑点はこびりつき奇怪な化生を現す。原色は交差し期待はずれの化生を想起させる。 平行法
日傘を差して歩く老婆は露天の売り子に懸想しており……、自分の姿を気にすることがなく、……それでも毎日通って情誼を深めようとしているのだ。 黙説法
床に広げた白布目掛けて色彩を散らばせるんだ、……そりゃ自分のしていることに疑問を持つことはある、けど……、冷静に見れば自分の狂乱をまざまざと見るだけで、それは懈怠なんだ、たしかに、……懈怠だろうから。 黙説法
血道を上げる彼の技法は、ひょっとしたら……、蓋し事を成し遂げるかもしれない……、なにせずるずると雑談にかまけているわけじゃない、蓋し横道の恋に逸れるかも、……いや、必ずやってくれるだろう。 黙説法
県外に通じる国道を結紮すれば、輸送は途絶えてバクテリアは猖獗しないと彼は考えていた。巴模様の都心の病状か。それで事は防げるだろうか、そうは考えていない、それを手始めに殲滅に取り掛かるのだ。 問答法
手荒い曲線を結節して市井の積怨を発現させる。手法の結節に躓かないだろうか、彼女の姿勢を見れば弁別できないことはない。丸まらない背中に筆を持って伸ばした腕は、長い年月に打ち建てられた美意識の高さを窺える。 問答法
蹶然と文章を書きつらねていかないのか、どうも足固めに気をとられてしまって、そうたやすく進んでいけない。 問答法
ずんぐりした二人の男は向かい合い、目を突き合わせて結託を確認する。ステッキと手は触れ合い、空に呼びかける。確かに結んだ決意は天をのぼり、世界を動かす力となろう、身は砕けても意志は潰えず、必ず民衆の力となるのだ。 呼びかけ法
タンクトップの背中にひたと張り付き、気取られないように身を沈めてる。貞操盗んだ罪はどれほどのものか、きちんと代償をいただくとするのはわかるだろう、誰もが自分を許してくれる。恐ろしいまでの速さで短刀を突きたて、瞬時に気取る。 呼びかけ法
ワークシャツを着込んだ男はタバコを吹かしながら作品を閲すると、座りこんでいた女性に目を向けて苦笑いした。随分と長い月日を閲したものだ、それがこの結果だ、芸術の神よ忘れるな、おれはおまえの一番の奴隷となった証拠を見ているのだぞ。 呼びかけ法
胡坐をかいてくつろぐ背の丸い男には、どんな外連も通じない。清閑な心情を湛え、深閑とした畳の上にじっとし、深深と更ける夜を肴に、閑静な住まいに飽きず、閑寂な生活を正直に生きている。 類語法
逆巻く色調と音調に懸案は浮かびあがり、枢要を掴むことができず枢機を見失い、機軸に蹴りを入れてしまう。心髄はいざ知らず、中軸を投げて腹蔵を砕く。 類語法
疾うから眩暈に頭は蝕まれ、それは動転に足が弱りきっているようで、いつしか聳動に心は落ち着きを持つことができず、永劫に将来の暗さに震駭する。 類語法
懸河の汀に立ち、眠気、寒気、頭痛、眼精疲労、欠伸、様々な症状に襲われる。 列挙法
雑談、談笑、哄笑、ふざけ合い、遊戯、友誼、友情、情愛、狷介を意地ずくに通してすべて失った。 列挙法
わたしと彼の関係はすでに懸隔にある。妬み、嫉み、恨み、憎み、呪い、価値感の違いは懸隔の極みにある。 列挙法
凄愴な出来事を頭に浮かべて、額の禿げ上がった老人は目を瞑り俯く。建議すべきか、裸体は砂に埋もれて清麗、血は通うか、泣き伏せている心、穴に入る心境に丸い背中が細い肩を。 省略法
内側に向かって歪むパプリカの痛み、感じることのない遅鈍に汗をかき、牽強の為に詭計を企てるのは、果肉の肌理か。 省略法
喧々とはほど遠い、懸隔の瞬間を翻るマントの面、女は横顔を見せる、先へ向かう、意志は強く盛観に膨らむ。 省略法
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