修辞技法と単語学習の為の例文集

第18話

少々口幅ったいようですが、興ざめやものがたり行く口と鼻、そんな具合に二人は近づいているので、見守るこちらとしてはむず痒くてたまりません。　パロディー

人目を気にせず駅前で口論する男女を目撃し、老人は頭の中でつぶやく、うたがふな眉間の皺も裏を張る、これぐらいの気軽な気持ちがあれば相手の苦衷を配慮できるだろうに。　パロディー

いくら息子が弁解したところで、究竟父親の露出癖はごまかせないわけであって、人の陰部を好むような風変わりな人に出会う究竟なことはほとんどありえず、激しき玩具に進んで成り代わろうともがく姿は見苦しい。　パロディー

その絵を眺めていても屈曲した有機線は見つからない。少女は理詰めの大人らしさを感じて、口を歪めて素敵な絵とつぶやいた。　反語法

定まることのない人生を戦い抜いてきた老人は、物乞いに出くわすと必ず金銭を恵み、特に意識することなく功徳を積んできた。ある日突然行いが報われたらしく、生き別れていた息子と娘が手をつないで散歩道を歩いているのを見つけ、その帰りに買い物をしていた嫁に邂逅した。家に祭られている仏様の前で功徳を感謝しつつ、この歳になってから再会するなんて悪いものだと思った。　反語法

裸の少年が大きな丸鏡を覗き込むと、映る姿は二つに別れ、片割れが愚昧な友人の名をあげて手痛くあげつらう。少年はたまらず鏡に向かって言う、君のほうが賢いよ。　反語法

頭が働きだすまでの動き出したが大儀なのだ。くりくり頭に刳形をつけてちちくり合うぐらい億劫なのだ。　言葉遊び

ベッドに横たわりながら繰り言を散々に吐き出すのだから、看病しながら聞くこちらの身にもなって欲しい。まったく青菜に紐でも括って繰り言を黙らせたい。　言葉遊び

市場に向かって歩いていると、差し掛かった広場に多くの人が車座になっている。近くに立っていたダンボールに尋ねると、相手変われど武士変わらずと生意気なことをぬかした。　言葉遊び

レンガ壁の下で蹲る老人は、なぜそのような状態に陥ったのだろう。愉快な事でもあり、軽挙した弾みに背中の筋を痛めたのだろうか。それとも軽挙な振る舞いを若者に拳で窘められたからだろうか。　修辞疑問

卵を逆さにした顔の人物は炯炯と佇んでいる。西日の射す大地の愁いに染まったようだが、以前は炯炯とした目玉を持ち、表情ある顔つきで青春の真っ只中にいた。すべて失せてしまったのだろうか。　修辞疑問

ハモンセラーノの太腿に近い三角定規は黄色く、チーズ形をして鼠蹊部に契合しているが、それが美味しいと思うか。　修辞疑問

門構えの前に立ち、葉書を渡そうとする配達員の形影に、勧善の種が芽生えの芽を出していて、ふとした拍子に受け取ろうとした老婆の顔に熱い口付けをしてしまった。　冗語法

壁に釣り下がった茶の皮手袋が規律良く垂れて、その傍には圭角の削られた翡翠色の玉が置かれている。彫像の顔ばせは憤懣に満ちていて、目の前に繰り広げられる眼前の騒動に圭角の色を見ていた。　冗語法

以前は傲然と城下をうろついてあたり構わず論破していたのも、今では慧眼を抜かれてしまい、水引を括られた顔の面を盲らしく上方に向け、自動人形は腕の無い体を引きずって歩いていた。　冗語法

情実を拭い去った白人女の炯眼は気強く据えられ、炯眼を自負する者の心底を浚い、胸底を突き、奥底を抉り、胸奥に噛み付き、腹心を引っ掻くが、実際は焦がれの目遣いをしているだけだった。　反漸層法

古代建築の夾雑物を抱えた二人は正座して、従容と語り、悠揚と文献を教え、泰然と顔を近づけ、恬として腕を絡ませているが、実際は迎合し合い、烈々な虚実に渦巻いていた。　反漸層法

壁に生えたインド牛の彫り物は笑みを浮かべ、この世に起こる事象を何もかも軽信する姿に落ち着いており、白々しい鵜呑み、空々しい相槌、余所余所しい嘆声、素知らぬ哄笑、それらを見る者に感じさせるが、土地の人間が形象する知性の神が物の形を借りて具現した像だった。　反漸層法

触手の先端をぶった切った形の大砲から、平穏を警醒する砲声が響き渡る。砲声は行く先を失った者を警醒。朝鮮アザミは眼を覚ます。朝鮮アザミが眼を覚ます。　反復法

吝い男は靴下のみ残し裸で横たえ、悄然として震えた。情念の虜になった女との係争を思い返し、兢々としながら弁証したおかげで、ひどくやり込められた。誠にやり込められた。　反復法

靴磨きは軽躁から程遠い、程遠いおかげで消沈することはない、消沈することなく打ち沈むことなく、ポケットに手を突っ込んで足を差し出す男の靴を磨く。靴磨きは軽躁から程遠い。　反復法

目前の門と背後の楼に径庭あり。また、彼と彼女に径庭あり。羨ましきだね。　皮肉法

真に警抜な写真さ、大きな尻に焦点を当てて、女の糞便する瞬間を切り取ったのだ、まともな頭の人にはとても撮れないよ。　皮肉法

腰に帆布を巻きつける生き物は、海風に消摩した大理石に座り慶福を噛み締めている。それを見ていた男は人生は気軽だと笑った。　皮肉法