第13話
おお、彼は任された仕事を緩怠して罪をなすりつけるか、寡黙で勤勉な小人の緩怠として職を追い、その緩怠を省みることはしないのか。 詠嘆法
街を貫く本道から外れて路面の荒れた間道に入り、マンションの裏に隠れて二人は下半身の運動を仲良く行う。たまさか窓から覗いていた少年の閑道な朝は血の気に染まった。 婉曲法
爽やかな草原での尻をいじくる悪癖をやめたことで、常識ある人間の情動を感得するに至ったのだから、母親の尽くす毎日の祈りが感得されたのだろう。 婉曲法
三味の音抑えた勘所、張りつめた弦の緩むを知らず。 縁語
早瀬に立って世間の流れを思い、艱難にくじけて溺れず、笹舟のはかなさで揺れながら何とか行きようと思う。 縁語
半端な詭計を看破される。 音彩法
峨峨にそびえる岩盤こそ頑に登った岩頭の眼福だ。 音彩法
個人主義というのは能力が優れていればそれなりの効果をあげるだろうが、チームプレイのスポーツの場に置いては多くが鼻持ちならない身の丈知らずの自信家であり、おれにボールをくれ、はやくくれ、と借金取りのしつこさでせがむわりに、ボールを持っても目立って良い働きをするどころか、ほとんど相手に奪われる始末であり、はやくボールをわたせ、持ちすぎるな、と仲間に促されても自分の世界に没頭しているせいで耳に入らない、こういう輩を頑迷というのだろう。 活写法
公園を通りかかると、小さな子供たちが数人固まってなにやら罵りあっているのを目撃し、小さい頃に背の低いことを馬鹿にされて、悔しくてもじっと我慢してやりかえさず、怒ってなぐるもんか、絶対になぐるもんか、馬鹿って言うやつが馬鹿なんだ、ぼくは馬鹿にならないぞ、と頭の中で繰り返し、ひたすら緘黙したことを思い出した。 活写法
彼女の眼目を仮借すると、素直、優しい、強い、男らしい、それらが結婚生活を永続させる男性の眼目の性質だ。 括約法
土地の汚染を見過ごす役人への怒り、裏金をもらって黙認する代議士への失望、頭が働かず云われるまま流されるだけに過ぎない地元民への愛憎、賛同してくれる数人の仲間への期待と不安、それらが夾雑として縒られ、一本の荒紐として彼の素志を貫流している。 括約法
小作りな外見にそぐわず凛とした風貌を湛えている。だから小柄な卑小さを感じない。それは風情のあらわれでもあり、また繊細な張りでもあり、要するに気韻に帰一する床しい発露である。 接続語多用法
それは優秀な機会であるので、だから彼は必死に掴もうとなりふり構わずもがき、そうすることで片端に触れることもできると思えたものの、しかし遠く早く飛び去るものは難しく、よって彼にとっての奇貨は小癪に逃げていった。 接続語多用法
炎が降りかかってくるのを見て早く、彼は握っていた腕を放して走り出したのは、本能が咄嗟に反応して理性の置き所を忘れてしまい、握っていた腕の暖かみが伝わらなかった。叔父は遅れてついてこない。叔父の安否を確認する以上に火の手の迫るのを覚えて彼は振り返ると、火炎に包まれた叔父の黒い輪郭が火の粉を背景に覗け、気が差すことなく彼は再び前を向いて駆け続けているのは、単に冷静でいられなかったからだ。 漸層法
ほら見て、この茄子、不出来でしょ? けどね、この薬品があるじゃない、ほら、どうすると思う? これをね、こうやって茄子にふりかけるんですよ、わかりますか、すると見てください、膨らみますよね、形が変わってきましたよね、格好良くなりましたね、でも、見た目よりも中身が重要、食べてみてください、ほら美味しいでしょう? ってな具合に機宜を得たやり口には引き込まれてしまう。 漸層法
遠景に巍巍とそびえる山(高く大きいだけじゃない、身に纏う密林も厳かだ)になると誓う。 挿入法
女は行動の疑義を懸命に弁護するも、(たしかに彼女は悪くないのだが、曖昧な言動が良くなかった)耳を貸して同情する者は誰一人いなかった。 挿入法
危急の際に喜悦して、安泰の中で悲痛に沈む。 対照法
振る舞い奇矯な男は笑い、真率甚だしい大女は泣く。 対照法
先ほどまで外は晴れていたのに、気づいてみれば、そういえばここはどこだか知らない、相当に解脱したのかしら、外は曇天になり窓には雨粒がついているから、もう彼の情状を掬すことはできそうにない。 脱線法
食事の順番を待つ間にどれだけの推測が頭を過ぎるだろう、前回の順番はどうだったか、どういう順序に始まっていたか、家の缶詰は腐ることないが、冷蔵庫に入れっぱなしのパプリカは熟れたアボガドよりも柔らかく、もう食べることはできない、いや、自分に打ち勝つなどと誰にでもわかることを従順に言い聞かせても、不安と疑念はとどまることなく影を射し、どうにでもなれという気がするから、奇警な言葉でなくてもわたしを感傷にさせるだろう。 脱線法
もはや病院のやり口は詭計とも呼べるほどで、宿の用意をせずに自己で手配してくださいと、今までのサービスに振り向かずにはいられない手の返しようは、蛙が鳴く、牛が鳴く、同時に泣けばウシガエル、などとくだらないことを言いたくなるほどに、冷然と保障を取り払ってしまった。 脱線法
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