第11話
目の前に散らばる金品を鞄に詰め込むのでもなく、懐に忍ばせることもせず、黙々と壁下に片寄せるところが彼の人生に不幸を呼び込むそもそもの原因だ。 換語法
おいシェーンベルク、果断に球を打って行けよ。 換称
その家並と前庭の作りは、あどけない雅致ではない。 緩叙法
黄色い肌の男は客気に包まれたらしく、突然咆哮をあげて走りだし、道の窪みに見事躓いて膝の皿を割った。 換喩
恪勤として誉れ高い男から、君は働き蟻だ、と言われてわたしは惑うしかなかった。 換喩
女に活計を尋ねようとすると、紐に繋がる犬はおいおいと泣き、活計に肥え太り我はあばらが浮くほどに飢えている……、確かに嘆いているように見えた。 擬人法
声を嗄らして大蛙が喝破すると、森の梢は拍手を惜しまずさらさらして、蛇の説を退けて正義を喝破したと賞賛を惜しまない。 擬人法
トマトが欲しくて気が違いそうだった。燃える塊に渇欲するのは熱情を補おうとする惰弱な性向の表れだろう。 奇先法
神を殺そうとするものは救われる。そんなことがあるものか、殺そうにも実態は明瞭に見えない、どうせくだらない誰から始まった訛伝だろう。 奇先法
とある元プロ野球選手が高校球児のような過当な練習は合理的でないと論証するもの、合理的でないからこそ彼らの力は発揮されるのだ。 逆説法
角々しい石を手に持ち考える、あの人の気質は角々しいからこそ、大衆に受けいれられずに少数の人へひっかかっていつまでも記憶に残るのだ。本当に人に好かれたければ角々しくなければならない。 逆説法
いくら虚勢を張って自分の非を隠そうと弁じても、図々しい巨大な過失を覆い繕うには余りにも姑息であり、筋道立ててうまく丸め込むのには冷静を失い舌足らずに終わっている。どうにかしたいのなら、後先考えずに自分の立場をかなぐり捨てて素直に詫びるべきだろう。 強意結尾法
水を飲めば金気が強く、鍋に火を駆ければ水に金気が浮かぶ、店の中は金気の調理器具が揃えられている。金気を説明したくてこんな文章に仕上がったのだ。 強意結尾法
ツイッターはいわゆる金棒引きの性質を利用したもので、隣の親父の屁の臭いを嗅いで前の家人に漏らす、夫婦喧嘩している家の前を通りかかり、窓から聞いたやり取りを植木弄りしているばあさんに話す、不倫している同士がごまかそうとそれぞれの近所に噂を流す、これらの行為を電子上に行うのがツイッターと呼ばれます。 挙例法
がなる人もそれぞれいて、陽気な顔する人もいれば、両手をばたばたしている人、眉毛を上下に素早く動かす人、鼻の穴をひくひくさせる人なんかもいて、泣きながらがなり、笑いながらがなり、真上を向いて天にがなる人もいますが、皆に共通するのはがなること自体に酔っていることです。 挙例法
言論と実際の動きの兼ね合いを考えて、直ちに災害地へ足を運んで辛苦を共にするべきだが、安穏に尻尾を掴まれて動く気がしない。 暗示的看過法
予予から考えを廻らしていた姦計、包丁で男を脅して箪笥の引き出しから預金通帳と金作りの船舶模型を分捕ること、いよいよその機会が訪れたのだが、少年は急な不安に潰れて泣き出してしまった。 暗示的看過法
なにせ寡聞なもんで、久方の、光のどけさ、春の日に、おなかは空いて仕方がないと思ってしまいます。 引喩
その女の人に出会った瞬間に、今日の記憶の旗が落ちて、大きな川のようにずぶずぶと流れて感ける自分に気づかず、後の日々はどうやってかどわかそうかと工作するのに感けるばかりで、唐突な恋慕の情念は薄れて奇怪な悪心にとらわれていました。 引喩
目を覚ます地上に朝日が差し込み、雲は大勢流れて悠々とした中空を白染める中を、青い下地を見上げて探し、隙間へ飛び込んで下に落ちる泡沫を毛穴から垂らして、囂しい小鳥と虫らに激情の端切れを分かち合ってもらいたい。 隠喩
轟く崩壊音に身は吹き飛ばされるのをしかと感じて、後頭部の火傷を触り毛穴と炭屑の違いがわからないのは、皮膚が焼けたかそれとも脳か判別つかない鼓膜の均一音であり、音彩と色彩の入り混じった艶然な香りによる感覚障害を引き起こしていると思い込んで、過紋の炎に骨の髄まで焼かれていたのだ。 隠喩
男の話はどくだみの香りを放ち、女は鳳仙花の頭を垂らして耳に受け止め、隣の両性具有はナメクジの性欲に身を震わして二人を絡げると、離れの爺は一緒になってスカートの裾を絡げる。 隠喩連鎖法
狭い感受性は自己を満たす蛭の口に窄み、哺乳類の膨らみに吸い付き、淫猥に金脈を吸い上げて山を枯渇させるのを、たしかにその下等な軟体動物は知っている、我利を求める野郎は自らの悪性とふてぶてしさを自覚している。 隠喩連鎖法
右の頬をぶたれたら左の頬も差し出しなさい、正確な言葉は違うがだれか有名な人がこのような教えを説いたと聞くけど、寛大なる雅量を持たないわたしはぶたれたら股間を蹴り上げるのが常だ。なにせ頬を差し出していたら、夫はつけあがるばかりだから。 引用法
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