第10話
熱い熱情を沸き立たせるか、下劣な情欲をそそり立てるか、威圧な美貌に素直な屈服させるか、価値外の存在として見慣れた町並みの景観を添える変哲ない一物と見なされるか、瑰麗な容姿の波及効果は幅と奥行きを備えている。この土地には自然の立法にのっとった脈動があるらしく、周期的にこういった人間を存在させるのだ。 類語法
風のそよぎ、小川の瀬音、雲の流れ、小鳥の鳴き声、暁光の赤焼け、 雅壊を持たせるものは幾らでもある。目を上げて少しでも見遣るのです。 列挙法
楽団の一人一人は自分の弦楽器を掻き合わせて、コーヒー香るギター、柔らかな日差しのマンドリン、乾いた情緒の三味線、心に響く澄んだ琴、香辛料の混沌としたシタール、女人の繊細なハープ、音程の揃った音色を一斉に掻き合わせると、ついつい襟元を掻き合わせた。すると、いつまでも掻き暗されていた生活に微かな妙音が共鳴した。 列挙法
敢えて口にすることでもないが、あの書割はマロニエと棕櫚を模っているわけではない。妙な冥加も考えて加えなくていい。 暗示的看過法
犬も怒れば棒に噛み付くなどと、訳のわからぬことを口にしなければまともに見られるのに、良い意味で幼稚なところがあの男の瑕瑾だよな。それだからこそ、不思議な冥護に守られて、結果的に進めてしまうのだろう。 引喩
上司との間に隔意があるせいか、地球に隠れる月として社内の衛星なりの営業しても、黒い点ばかり見えて一向に成果が出ない。思いついた提案が妙趣を持てばその分だけ距離を保ち、疎隔させていく。 隠喩
蓮は水面上に広く葉を広げて悠々と浮かんでいるのも、実際は水面下で確然とした根っこがあり、少年は大男の振る舞いに憧れるだけであって、築かれた堡塁の逞しさに見とれて一緒に積み上げられた脂の臭いに気づくことなく、殺された者の意識に向けることを忘れて獣の興に酔ってライフルを向ける。誰からか、それとも自分だけのか、打てば打つほど名聞は高まって幅は広がり、その意識が強く楽しげになればなるほど価値のある人生を手に入れていくように思えた。 隠喩連鎖法
子曰く、巧言令色、鮮なし仁、このような言葉をさらりと述べるには、どれだけのことを覚知すれば良いのだ。多くを欲し、好奇の赴くままに恥を捨てて手探りしていけば、名利はいずれ体に引っ付いて性質を和らげ、動けば自然と周りに香りを振りまくようになるものだろうか。 引用法
掛け構いのない女性方々を見ては、悶々と頭にあられもない姿を浮かべて下半身を元気にするのだから、どれだけ隠し事をして体裁を繕っているか知れたものではない。にやにやした表情が落ち着かない海面のようで、見る見ると飛沫を放って潜り込み、ひそひそと暗い岩礁で小話をして、聞くに耐えない汚物を勝手に投げつけてきゃっきゃっと跳ねていそうだ。 迂言法
表裏一体男の影身は凝結するも、素晴らしき、影身に励ます女性の尽力は何物をも復活させるのだ。 詠嘆法
ええ、わたしはくびれに実る桃を撫でて、プリンを震わしながら苔桃を味わうのが好きでしたが、そんな性情が災いして過誤をしでかしたのでしょう。 婉曲法
商売だからと言って、彼の人をひき立てて飽きないようにしつらえたのが、そもそも禍根となりまして、目方を計り間違えたのに気づかないのだから、金勘定のできない男と触れ回られても仕方ありません。 縁語
小癪な子爵が金を仮借して返せず、たった今柄杓に叩かれて仮借された。 音彩法
彼は広大な地上に生えた幽し草の種と自覚した。 掛詞
道を歩いて病院の前を通りかかり、久しぶりに病院へ行って彼に会った記憶が蘇り、以前の面影さえ残らずむしろ別の生き物の感が強く、肌の色は黄土色から紫蘇色に変わりゴキブリの羽の光沢を光らせており、乱れた髪の毛は細分した触覚と思しく、体臭は悪臭、眼光はなく黒ずんだ玉がはめ込まれてころころ回転するだけのもので、何かの糞を固めただけの代物にも見えて、「元気そうだな、ざまあみろ」などと皮肉にならない言葉を片息つきながら漏らし、悲惨な情景を見るに耐えない愚劣なものにさしていたのだから、わたしは今思い出しても即死を願わないではいられない。 活写法
友人の一人がそれを褒めており、そのまた友人の二人が実際に使用して効果を得て、別の上司がそれで妻との関係を修復したと述べ、ある女性は人生が変わったと喜んでいたと、その他様々な事例に仮託したのが、その男の独りよがりの間違いを示している。 括約法
どこに居ても落ち着かず、一人食事をしている時はおろか、仕事をしている時や誰かと話していてもわたしに話しかけてくる、ほら、早くこの世に悪意のある被害をばらまけ、いやいや善意を持って貧しい人に全財産をなげうつのだ、まさか、他人を助けて何になる、他人を助けてこそ自分が救われる、構わず日常をぶっ壊せ、遠慮なく不幸な日常に救いを与えるのだ、などと善悪かなんだか知らないが、自分を破滅させることを互替り説いてくるのだから、そろそろこの二人を打ち消そうかと考えている。 活喩
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