第6話 エッチな下着選び
静寂した部屋の中でカタカタとキーボードを打つ音だけが鳴り響く。
ここは俺の幼馴染のおじさんが経営するパソコン教室。
俺は週一で手伝い(アルバイト)をしているのだが、ついこの間あいつがパソコン教室に入会した。
それから俺の平穏だったアルバイトの時間が無常にも壊されたのである。
と、考えているとディスプレイに表示されている20番の座席番号が点滅した。
メッセージが届いた合図である。
『おにーさん♡、わからないことが出来ました。至急教えて下さい』
メッセージを見て、俺はため息をつく。
パソコン教室ではおにーさんはやめろと言ってるのに、何度言ったらわかってくれるんだ。
全てログとして記録されてるんだぞ。あとでログを消去しなくては、パソコン教室の講師の皆様に誤解されてややこしいことになる。
『はやくしてください』
あいつから早く来いと催促のメッセージが届いた。
俺は仕方ないと腰をあげ、あいつのところへ向かう。
席に到着すると、茶髪ロングの女の子が座っていた。
こいつが原因の源、特異点といってもいい存在”可愛ねね”である。
俺が来たことに気づき、ねねは俺の方へ振り向いた。
「もうっ、おにーさん。遅いですっ。待ちくたびれてしまいましたよ」
ねねはぷくっと頬を膨らませて、訴えかけてくる。
そんな時間かかってないと思うのだが、こいつどんだけ短気なんだよ。
「それで何が聞きたいんだ?」
すると、ねねはディスプレイを指さし、
「あ、えっとですね。おにーさんちょっとこれを見てもらえますか」
俺はディスプレイを見て思わず顔を赤くする。
「おまえ、なんてものを俺に見せるんだよ」
目に映ったのは、パンツ、ブラジャー姿、いわゆる下着姿の女の人達が映っているサイトだった。
「エッチなサイトなんか見せるんじゃないよ。ていうかパソコン教室でなんてもの見てるんだっ」
すると、ねねは顔を沸騰させて、
「ち、違いますよ。勘違いしないでください。エッチなサイトではないですから、ランジェリーサイトです」
「おまえアダルトサイトもランジェリーサイトも同じじゃねえかよ(下着という意味では)」
「もう、全然ちがいますから。それで、おにーさんどっちがいいと思いますか?」
「へ?」
「どっちがいいですか?」
ねねは首をかしげて俺を見つめる。
うぅ……ねねって顔が小さいし、整っていて可愛いから、そんなに見つめられると照れるじゃねえかよ。
それにしても、ランジェリーサイトを女の子と見るなんて恥ずかしすぎる。
どんな顔して見ればいいだよ。
今ディスプレイにはすごくスタイルがよくて、可愛い女の人が二人映っていて、一人は純白のパンツ、ブラジャーをつけていて、もう一人は黒の下着を身に着けている。
どっちかを選べと言われてもな。
俺が画面を凝視していると、ねねが顔を近づけてきて、
「そ・れ・で・どっちがよかったですか?」
「ち、近いって。それに選べないよ」
「どうしてですか?」
だって恥ずかしいもん。
俺の趣味をばらすようなものだからな。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。ねねに一つ聞きたいんだが……」
「なんですか? おにーさん」
「俺に選ばせてどーするつもりだよ」
「えっ」
ねねの顔がかぁーっと赤くなる。
「それを聞かせてもらえなきゃ俺も答えられねーな」
「うぅ……」
すごく恥ずかしそうにするねね。
このままねねが答えられなければ、俺も答えなくてすむ。
よし、このまま押し切るぞ。
「どうなんだよ」
「それはっ……」
どうだっ、答えられまい。
いつも俺の事を追いつめてくるからな。
お返しだ。
「無理に答えなくてもいいんだぞ。それじゃあ俺は席に戻るからな」
「わ、わかりましたよ。答えますよ」
「えっ」
いや、答えなくていいんだけど。
むしろ俺が追いつめられてしまうから。
「おにーさんが選んだ下着をあたしが着て見せてあげようとおもって」
「って、だ、誰にだよ」
「おにーさんに決まってるじゃないですかー」
「おまえ、そんなことして何が目的なんだよ。金か? 金なのか」
「違いますよ」
「じゃあ、一体なんでだよ」
「それは教えられません」
ねねは顔を赤くしそっぽをむく。
「おにーさんっ」
「はいっ」
「約束ですよ。あたし答えたんですから。おにーさんもちゃんと答えてくださいね。どっちがよかったですか? ほかにご希望があればなんなりと言ってくださいね」
「おいおい、他の色って……そもそもおまえはパソコン教室に何しに来てるんだよ! 下着選びにきたわけじゃないだろ?」
「えっとーおにーさんに会いにですけど?」
そんな言葉を真顔で言うんじゃないよ。
俺をからかっているのはわかっているけど、本気にしちゃうじゃないか。
しかし何というか、ねねって憎めない性格してるんだよな。
仕方ない。約束は約束だ。
「全く、しょうがないやつだな。し、白だよ。これでいいか?」
ねねはぱぁーと表情を明るくし、
「白ですね。わかりました。今度お披露目しますね」
「いや、お構いなく」
「うふふ。そんなこと言っても、おにーさんってあたしの下着姿に興味ありますよね。だから近い将来お披露目する機会できるとおもいますよ」
なんだよこの自信は、俺も男だからねねの下着姿に興味がないと言ったら嘘になるが。
年下だぞ、それも中学生。
下手したら捕まってしまう、だから俺は意思を強くもって、拒否しなければならないのだ。
しかしねねの言っていたことは現実となり、俺をまた追いつめるのであった。
彼女の秘密がとんでもなくて守れそうにない(短編) 黒狗 @kuroinu_
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