第2話 ドキドキ初デート その2
俺と如月さんの目の前に現れたのは、俺たちと同じ年くらいの女の子だった。
奇抜な洋服を着ていて、これはゴスロリというやつだろうか気品と妖艶さを感じる。
ゴスロリ店員は俺を睨みつけ、今にも飛びかかってきそうだ。
手をつないでいただけなのにどうして怒っているのか、また不審者扱いされているのか謎であったが、まずは不審者という誤解をとかなければならない。
「店員さん、ちょっと待ってくれよ。不審者ってどういうことですか! 俺は違いますよ」
俺がそう言うと、ゴスロリ店員さんから思いもよらぬ言葉が返ってきた。
「うるさい! 黙れチ〇カス。犯罪者はみんなそう言うのよ」
チ〇カス!?
俺の聞き間違いだよな……
女の子がそんな下品な言葉発するわけないのだから。
「ちょっと。すいません。今俺のことなんて呼びました? 初対面の相手にチ〇カスって呼ぶわけないとおもいますが。ましてや俺は客だし」
「どうせあんた童貞で包〇でしょ? チ〇カスって呼んで何が悪いの」
ゴスロリ店員さんははっきりと、それは堂々と俺の事をチ〇カスと呼んでいる。
如月さんを見ると、耳を抑えて俯いている。
「童貞はともかく、どうして包〇って決めつけるんですか!」
「包〇じゃないなら、証明してみなさいよ。そしたらチ〇カスって呼ぶのをやめてあげるから」
「証明ってどうすれば……」
「私が確認してあげるから、その汚物をいますぐ出しなさいよ」
「はぁー! 何言ってるんですか。そんなことできるわけないじゃないですかっ」
如月さんにも見せたことがないのに、なんでこの人に見せないといけないんだよ。
「もぉーいいですよ。チ〇カスで! 一つ言いたいんですが、俺と彼女は付き合ってるんです。だから不審者じゃないですよ」
俺がそう言うと、ゴスロリ店員さんは、
「こんな美少女があんたみたいな、ぱっとしないやつと付き合うわけないでしょう。彼女の弱みを握って無理やり手をつないでいるに違いないわ」
「全くむちゃくちゃですね。顔だけが重要な要素じゃないですよね。性格とか趣味とかいろいろあるじゃないですか」
「それじゃあ、そこの彼女に聞いてみましょうか」
ゴスロリ店員さんは如月さんに耳から手を放すようジェスチャーする。
耳から手を放し如月さんは恐る恐る、
「な、何ですか?」
「この手を握っているチ〇カスはあなたの彼氏ですか?」
如月さんは顔を真っ赤にして、
「えっと……それは……」
如月さんの口下手が発動する。
彼氏、彼氏と言ってくれよっ。
「ほーらみなさい。彼女も困ってるでしょう」
それはあんたの質問にじゃなくて、チ〇カスにだよ!!!
「如月さんは店員さんがお下劣な言葉を言うから萎縮しちゃってるだけですよ。店員さんよくみてくださいよ。手をつないでるの彼女だって全然嫌がってないでしょ」
「あんたがそうやって仕付けたんでしょ。この鬼畜が! それに店員さん、店員さんって、私の名前は店員さんって名前じゃないわよ。
自ら名を名乗る店員がいるとは……
めんどくさいから、名前で呼ぶけどさっ。
「わかりました。店員さんって呼ぶのは止めますね。美玲さん。ちなみに苗字は何ですか?」
「
「椿美玲! 綺麗な名前」
如月さんが感嘆の声を上げる。
「たしかにすごい素敵な名前ですね」
「そうでしょうー」
どうだ良い名前だろう! と言わんばかりに胸をはって自慢してくる美玲さん。
たしかに椿美玲ってすごく素敵な名前である。名前は体を表すというが、この人めちゃくや綺麗だし、ファッションがわからない俺でもこの人の格好には神秘的で惹かれるものがある。しかしどう間違えてこんな性格になってしまったんだ? 黙ってれば相当いけてると思うのだが。と、そんなことを考えている場合ではなかった。自己紹介の流れにのって俺も名前で呼んでもらおう。
「あのー、それじゃあ俺のことは斎藤って呼んでもらっていいですか?」
「わかったわ。チ〇カス」
わかってねぇじゃねかぇよ。
名前で呼べって言ってるんだよ。
この人はまともに会話できないのか。
お店自体はすごく良い雰囲気だし、如月さんとの初デートなのだから、あまり美玲さんみたいな電波に関わらないように買い物を楽しみたい。
というわけで俺は、
「それじゃあ、美玲さん。俺たちは買い物があるので」
と美玲さんから離れようとすると、
「ちょっとまちなさいよ。話はまだ終わってないわよ」
「いや、そもそもはじまってないですから」
美玲さんは俺を指さし、
「そんな口聞いていいのかしら? 私はあなた達の先輩なのよ」
「どういうことですか!?」
「だーかーらっ、私はあなたたちと同じ高校に通う先輩ってこと」
「そうだったんですか!? それじゃあ。俺たちのことはじめから知ってて絡んできたってことですか? 本当にクズですね」
「チ〇カスは黙ってなさいよ。如月ちゃんの噂は知っていたわよ。銀髪碧眼のとんでもない美少女が入ってきたって。だけど男子達が群がってて近づけなかったのよ。ファッション好きな私としては、あんな服やこんな服を着せて楽しみたかったのに」
キラーンと目を輝かせて、如月さんをなめまわすように見つめる美玲さん。
「怖いよ、恭介君……」
「如月さん、大丈夫。決して如月さんにエッチな服を着させたりしない!」
「バカね。誰がエッチな服っていったのよ。そうやってすぐにエッチな方向に話をもっていくんだから。だから童貞は嫌いなのよ。それにしてもあんた達本当に付き合ってるの? 不釣り合いにも程がありすぎよ。例えていうならば美女とチ〇カスね」
「それはさぞ不釣り合いでしょうね。何度もいいますが俺はチ〇カスじゃないですけどっ」
如月さんは俺と美玲さんの間に割って入り、
「恭介君はとんでもなく変態だけど、私にとっては大事な人なの」
「フォローありがとう。変態は余計だったけどね」
「そうだったのね。わかったわ。チ〇カスを彼氏と認めるわ……」
えー!? よくわからんが美玲さんは納得している様子。
俺の言葉は聞かないが如月さんの言葉は聞くってことか。
「それじゃあ、美玲さん。話は済んだようなので、俺たちは買い物の続きを……」
「だからー待ちなさいって」
「えっ!? まだ何か?」
「誰が買い物していいって?」
「俺たち客ですよ。買い物するのにお店の許可が必要って聞いたことないですよ」
「このお店は私のパパのお店なのよ。パパのお店ということは私のお店といっても過言じゃないわ」
その理屈。おまえはジャイアンかよ。
「だからこのお店で買い物したかったら主である私の許可をとりなさいっ」
突如現れたジャイアンに俺たちは無事買い物できるのだろうか。
激しく不安である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます