第4話 プロローグ 4月1日(木)その3

 あ~、しまった。あのジト目を姉さんがしている時は怒っている証拠だ。そして、そこまで言われて僕は思い出した。あそこには昨年の夏、兄さんが帰ってきた時に僕へのプレゼントだと言って残していった『お宝』が隠してあった事を。あれを姉さんに、いや、それ以上に美紀に見付かったらさすがにヤバイ。そう思うと冷や汗が出る。

「早く食べて片付けないと私がトレジャーハンティングするわよ」

と言って、さっさとマグカップと箸をうるかして台所から出て行った。

「・・・・・」

 それにしても・・・美紀とは、小学5年生の冬休みに会って以来だから、4年以上会ってない。あの頃は男勝りのガサツな性格だったけど、さすがに女子高生になるのだから、大人しくなっただろうな、と思った。

 まあ、姉さんに『お宝』が見付けられるとは思えない。あの場所は、僕と兄さんだけしか知らない『隠し部屋』なのだから・・・

 でも、万が一という事もあるし、いずれにせよ、女子高生が住む部屋に『お宝』を残したままにしておいたら、回収できなくなる。そう考えると、今朝までに『お宝』を回収しておかなければならなかったのだが、今さらそんな事を言っても仕方ない。

 あーあ、まいったなあ。

 そして、牛乳を自分のマグカップに入れたあと、先ほど作ったフレンチトーストを、面倒だから箸で食べ始めた。僕は急いで食べ終わると、フライパンとお皿、自分のマグカップ、ついでに、姉さんが使っていた箸とマグカップも一緒に洗い、さらについでに片付けてなかったカップ麺の空容器をゴミ箱へ捨て、テーブルを軽く濡らした布巾で拭いた後、着替えをする為に2階にある自分の部屋へ向かった。



そう、MIKIたちに振り回される日々は、この時から始まったのだ。



でも、この時は気付いていなかった。



あの言葉の本当の意味を・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る