第3話 プロローグ 4月1日(木)その2

 え?姉さんの言ってる意味がよく分からない・・・。

「汚れてもいい恰好って・・・何?」

「あのさあ!猛、先週、母さんに言われてたでしょ?あの部屋を片付けろって!今朝までに猛が全然片付けをしてないから、母さん怒ってたわよ。結局、私も手伝うハメになったんだからさあ、早く食べ終わって手伝ってよね!」

「ちょっと待ってよ。今日はお客さんがくるって話だろ?何で部屋の片付けるんだ?」

「あんた、まさかあの時、適当に『ウン』なんて答えてた?ハア・・・ゲームのやり過ぎー。少しは勉強したら?」

 たしかに、先週、母さんが何かを言ってたような気がする。お客さんがどうのこうのとか、片付けろとか、それと、あと、何か別の事も・・・。

「いい、今日は美紀ちゃんが来るの!!忘れたの?」

「美紀ちゃん、って、あの『みき』だよね・・・エイプリルフールではないですよね・・・」

「たしかに今日は4月1日だからエイプリルフールだけど・・・あっきれた!だから猛はいつまでたっても子供って言われるのよ!」

「・・・・・」

そう、今、思い出した。たしかに母さんはこう言った。『猛、4月1日に慶子伯母さんと美紀ちゃんが来るから、あの部屋の荷物をそれまでに全部片付けておいてね』と。あの部屋とは、兄さんが東京の大学に進学して以降空き部屋になっていたのを、僕や父さんが物置として、僕がゲーセン部屋として使っている部屋の事だ。

 でも、それでも疑問が残る。なぜ、荷物を全部片づけるのだろうか?あ、あの後、何か別の事も言っていたような、なかったような・・・

 そうこうしているうちにパンが焼けたから僕はお皿に取り出した。そして、シナモンと砂糖をまぶしながら、こう聞いた。

「姉さん、もう一つ聞いてもいい?」

「今度はなあに?これで最後にしてね。私も嘘の事は言わないから、1個だけなら質問を許します。」

「荷物を片付けるっていうのはどういう意味でしょうか・・・」

ハっと気づくと、姉さんの顔が真っ赤になっている。こりゃあ、何か怒らせたか?

「ちょっと、母さんが言ってた事を覚えてないの?」

「え?何を?」

「あきれた、やっぱりゲームに夢中になってて、生返事してたんでしょ?ハアア・・・あのね、美紀ちゃんも4月から高校生だってのは知ってるよね?」

「当然」

「でね、うちから札幌の高校に通うって母さんが言ってたわよ。」

「うん。え?ハア!!ちょっ、ちょっと、聞いてないぞ!そんな話・・・あ、でも、何か言ってたかも・・・」

「まあ、家の中で適当な所は猛も母さんも同じね。母さんは外では凄腕パート・剛腕主婦だけど、あんたは両方適当ね。それより、いいの?あれを移さなくても」

「だから、何を?」

「まあ、あそこにあんたの『お宝』が眠っている事くらいは私もリサーチ済みだからね。早くしなさいよ。」

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