第2話

ギルドにらしき建物に到着すると、俺は念のため看板を確認。もし建物を間違えて、ここが殺し屋の溜まり場だったりしたらたまらない。

文字は俺の知らないものだったけど、なぜか読めた。


『アレスタ ギルド』


アレスタというのはこの街の名前だろう。建物は間違えていないようだ。

扉を開けると、そこは役場と酒場を合わせたような作りになっていた。手前の大部分は酒場のテーブルが閉めているが、奥には受付がある。

俺は周りの人間と目を合わせないようにまっすぐ受付に向かう。

受付の手前で、不自然すぎる段差につまづき転倒、受付カウンターに額を強打。


あ、また死んだかな?


だけどなんともない。いや、痛いことには痛いのだが、思ったほどじゃない。

起き上がって額に触ると、怪我にすらなっていなかった。


「あ、あの、大丈夫ですか?」


獣人と思われる犬耳の受付嬢が心配して声をかけてくる。ついに獣耳に会えたというのに、カッコ悪。


「ちょっとキサキ、一人でどんどん行かないでよ」


「おいハピネ!お前幸運の女神なんだろ!いま俺おもいっきりこけたんだけど!」


「私一応(仮)だから!でも変ね?私がいれば半径100キロくらいの人は幸運になるはずなのに」


「あの、ご用はなんでしょうか?」


受付嬢が訊いてきて、やっと本来の目的を思い出した。


「あの、俺たち冒険者になりたいんですが」


「はい、冒険者登録ですね。では、こちらの水晶に両手を触れてください」


示された水晶に触れると、水晶が淡く輝く。

すると水晶と連結しているのか、受付嬢の手元の機械から、一枚のカードが出てきた。


「はい、もう離していただいて結構です。えっと、ササキ キサキさんですか。変わったお名前ですね。体力、魔力共に平均値ですが、防御力は、え⁉なんでこんなに高いんですか⁉冒険者としてレベル上げする前の防御力なんて、普通はほとんどないのに。あれ、逆に幸運値がすごく低いですね、幸運値は一生固定なので、何て言うか、ご愁傷様です」


「あ、はい」


自分の不運は分かっているが、人に言われるとやっぱりダメージが。


「えっと、そちらの方もどうぞ」


若干気まずそうな受付嬢に促され、ハピネも水晶に触れる。


「ふふん、私のステータスに驚きなさい、数値が大きすぎて、機械が壊れるかもね」


いや、多分それはないと思う。こういうこと言っているやつは大抵


「ハピネさん、体力と魔力が少し高い他は、平均値ですね」


「え?幸運は」


「幸運値も平均です。あと、なぜか最初からスキルが二つありますが、以前にも冒険者をされていたんですか?」


受付嬢の質問もハピネには聞こえていない。


「なんで?平均?女神なのに?...は、はは、はははは」


「何て言うか、ご愁傷様です」


こうして俺たちは、なんとも地味ステなスタートを切った。

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異世界人生は運ゲーだと誰が決めた? 秋野シモン @akinoshimon

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